狼であることを忘れて
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第四章
「尚且つボクシングの猛者である」
「この三つやな」
「まず種族で目立ち」
そしてというのだ。
「職業はもうその癖や考えが身体にも心にも滲み付いてしまうので」
「どんな状況でもな」
「流れた先ではです」
「その職業に就こうとするな」
「はい、そしてボクシングの猛者となれば」
この手掛かりもあればというのだ。
「かなり限られます」
「それでやな」
「この三つのことから探していきましょう」
「そうしていくんやな」
「そうすれば」
まさにというのだ。
「簡単に見付かります」
「簡単にか」
「まあこれは確実ではないですが」
こう前置きしてだ、カマンダはサプール独特のステップで歩きつつそのうえでゴーディマーに対して話した。
「彼が突然失踪した原因も察しがついています」
「それは何や」
「それは彼が私達によって見付け出され感動の再会の後で」
「そこでも気取るか」
「サプールですさかい」
カマンダはリザードマンの顔をにこりと笑らせてゴーディマーに答えた、そうしてから二人でだった。
キンシャサの街で三つの手掛かりを全て備えた青年を探すとだった、お世辞にも豊かでない層が集まる地域に流れついた青年がいるという情報を仕事を受けてから五日目で聞いた。その青年はふとその地域に来て今は自転車屋で住み込みで働いているという。
その青年の話をさらに聞くとだった。
「やはりですか」
「これまでの記憶がないらしいな」
「私の予想通りですね」
その地域に歩いて向かいつつだ、カマンダは隣にいるゴーディマーに応えた。
「このことも」
「名前も思い出せんらしいな」
「そうですね、ですが仕事のことは身に着いていて」
「それでやな」
「働いているとか、では」
カマンダはさらに言った。
「今からな」
「その自転車屋に行ってな」
「彼をお医者さんのところに連れて行きましょう」
「お医者さんかいな」
「はい、この度は」
こう言ってだ、そしてだった。
二人はその地域に入って自転車屋の住み込みの青年と会った、青年と話すと自分がワーウルフで証人ということはわかっていた。今は昼なので普通の黒人の長身で引き締まった身体をしている青年である。
だがそれでもだ、それ以外のことは。
「わからなくて気付いたら」
「ここにですね」
「来ていまして。とりあえずお金も何もなかったので」
それでというのだ。
「家もなくて」
「働けるところを探して」
「今はここにいます」
「そうですね、ですが私は貴方を助けられます」
「どうやってですか?」
「お金は私が出しますので」
それでとだ、カマンダは青年に笑顔で申し出た。
「病院に行きましょう」
「病院にですか」
「それもキンシャサの中央病院に」
この街で最も大きくかつ優れた医療技術を備えている病院だ、キンシャサ市民の医療のことだけでなくコンゴ全体の医療のことも考慮して置かれている。
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