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戦国異伝供書

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第四十九話 小田原へその五

「こうなっては仕方ない」
「では、ですか」
「そのうえで確かな後詰を置き」
「そうして」
「下がる」
 そうするというのだ。
「よいな」
「わかり申した」
「こうなっては致し方ありませぬな」
「最早流れは決しました」
「それならば」
 北条家の者達も頷いた、そしてだった。
 彼等は兵をまとめてそのうえで沼田城から退いた、そうしてそのうえで彼等は下がり景虎も追いはしたが。
 適度なところで軍勢を止めて全軍に告げた。
「一旦沼田城に下がります」
「そうしますか」
「これ以上は追わず」
「そうしてですか」
「城まで下がりますか」
「今は深追いをする時ではありません」
 だからだというのだ。
「この度はです」
「下がってですか」
「そうしてですか」
「沼田城からですか」
「再び攻めますか」
「そうしましょう」 
 こう言ってだ、景虎は今はだった。
 軍勢をまとめて沼田城まで戻った。そしてその城を拠点としてそのうえで上野攻めを続けていったが。
 その中でだ、彼は言うのだった。
「思った以上にです」
「思った以上にとは」
「と、いいますと」
「はい、関東の軍勢が集まりません」
 自身の下にとだ、景虎は長尾家の諸将に話した。
「これでは上野を取り戻せますが」
「それでもですか」
「そこから先は、ですか」
「進めない」
「そうだと言われますか」
「難しいです、小田原に攻め入るのは」
 それはというのだ。
「力が及びません、ですから」
「この度は、ですか」
「上野を一刻を取り戻し」
「そうして上杉様にお渡しする」
「そこまでですか」
「そこから先は、ですか」
「出来ません、ですから無念ですが」
 こう思っていてもというのだ。
「仕方ありません、上野は上杉様にお渡しし」
「そしてですか」
「そのうえで、ですか」
「我等は越後に退きますか」
「そうされますか」
「そうしましょう、そして次は」
 次に関東に攻め入る時はというのだ。
「必ずです」
「小田原まで攻め入り」
「そうしてですか」
「北条家を降し」
「関東の公を取り戻しますか」
「そうします」 
 こう言ってだ、景虎はこの度は上野一国を取り戻した。そうしてそのうえで越後まで戻ってであった。
 憲政に上野のことを話した、すると憲政は喜び彼に言った。
「有り難きこと、ただ」
「ただとは」
「実はそれがしには子がおりませぬし」
 こう景虎に言うのだった。
「上杉家の跡取りもおりませぬ」
「だからですか」
「はい、この度の戦を見て決めました」 
 まさにそれをというのだ。 
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