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ある晴れた日に

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555部分:もう道化師じゃないその六


もう道化師じゃないその六

「今日はうちと坪屋がMVPだよな」
「俺は坪屋かよ」
 すかさず坪本が突っ込みを入れる。
「また変な仇名にしてくれるな」
「いい仇名だろ」
 しかし春華の方は平然としたものである。
「言い易いしな」
「呼ばれる方は微妙なんだがな」
 坪本は実際にその顔を顰めさせていた。
「俺の家坪なんて売ってないしな」
「そういえば御前の家って普通のサラリーマンだよな」
「ああ、お袋は看護婦でな」
 佐々に応え両親のことを話すのだった。
「それで俺はこんなのだよ」
「何か微妙ね」
 凛はそのこんなのを見て述べた。
「いいのか悪いのか」
「いつも悪いって言われてるぜ」
 笑って言ってみせた彼であった。
「まあいいのか悪いのかは置いておいてな」
「ええ」
「それで?」
 皆は彼の話をさらに聞く。
「とりあえず親父とお袋はまともさ。別に坪屋がどうとかじゃないけれどな」
「っていうかよ」
 ふと気付いた咲が言う。
「この場合坪じゃなくて壺でしょ」
「そうなんだけれどな」
 その通りだと述べるその春華だった。
「まあこいつの名前がそれだからな」
「よく言うぜ。御前この前俺の名前壺本って書いてたじゃねえか」
 自分の名前に関することは人は中々忘れない。それはこの坪本も同じだった。
「何で難しい方の字を書くんだよ」
「何となくな」
 それは何となくだというのだ。
「間違えたんだよ。気にするな」
「気にするよ。けれど今日は上手くいったな」
「そうだよな」
 笑顔でこう話す彼等だった。
「おかげでな」
「やっぱりバイクは便利だよ」
「そうか、そういうことか」
 楽しく飲み食いしながら話す彼等に対してだ。不意に声がしてきたのだった。
「道理でいつも何かが来ると思っていたらな」
「んっ!?」
「誰だ?」
 皆その声を聞いてまずは顔を見合わせ合った。
「今何か言った?」
「誰だよ、今言ったの」
「っておい」
 ここで佐々が店の入り口を見てだ。顔を思いきり顰めさせたのだった。
「何で御前がここにいるんだよ。っていうか来たんだよ」
「まさかと思ってた」
 だからだというのだ。背中にそのギターを背負った正道が店の中に来ていた。皆それぞれハンバーグを食べるフォークとナイフやビールの入ったジョッキを持つ手をそのままにしてその顔も身体も凍り付かせてしまった。一瞬夢かと思ってしまった程である。
「な、何でここに」
「御前が来るんだよ」
「だからまさかと思ってだ」
 また言う正道だった。
「話は聞いた」
「い、いや今のはな」
「ちょっとね」
 皆慌てふためきながら言い繕うとする。しかしそれはもう無理な状況だった。
「あれだよ。漫画の話だよ」
「ほら、今の新作のアニメ」
「それの話なんだよ」
 何とか演技を合わせて言い合う。しかしそれも破綻していてどうにもならない状況だ。しかしそれでも彼等は言っていくのであった。
「だから気にするな」
「そうそう。何でもないから」
「まあ飲もう、なっ」
「飲むのはいい」
 まずはそれはいいとした正道だった。
 
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