ある晴れた日に
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553部分:もう道化師じゃないその四
もう道化師じゃないその四
「お好み焼きはやっぱり」
「ここ神戸だけれど」
「じゃあ大阪風にしようかしら」
皆難しい顔になったので少し俯いてから述べた千佳だった。
「それともモダン焼きでも」
「あっ、いいじゃないそれ」
静華はモダン焼きという言葉に明るい顔で反応した。
「モダン焼きだったらかなりいいわよ」
「そうだよな。モダンだとな」
「量も多いしな」
「じゃあそれにするわ」
皆の言葉を受けて頷く千佳だった。
「モダン焼き。焼くから」
「っていうか千佳ってお好み焼き焼けたの」
明日夢はそのことに驚いていた。
「それも大阪と広島両方」
「ええ。実は好きだし」
このことも言う千佳だった。
「だからね」
「両方かよ」
「ちょっとないよな、それは」
「そうよね」
皆大阪のお好み焼きも広島のそれも焼けるということには明日夢と同じく驚いていた。
「普通どっちかだからな」
「そうそう」
「両方の血を引いてるからね」
楽しそうに笑って話す千佳だった。
「だからなのよ」
「だから両方焼ける」
「そういうことなの」
「ええ。それじゃあモダン焼きね」
それを確認するのであった。
「それでいいわよね」
「あれボリュームあるしいいんじゃないの?」
「もう焼きそばも中に入ってるしな」
「一枚でもう腹一杯になるよな」
こう話をしていくのだった。
「じゃあそれ頼むわ」
「モダン焼きね」
「わかったわ」
皆の言葉を受けてあらためて頷いた。
「じゃあそれでね」
「よし、これで明日もできた」
「手筈は万端」
「あいつも。倒れないわよね」
ここまで話してまた相変わらず自分の席に座ってギターを持っている正道を見るのだった。
「これだけ色々食べてたら」
「大丈夫だろ」
佐々が言った。
「流石にな。一時酒の飲み過ぎでどうなるかって思ったけれどな」
「あの時はやばい雰囲気だったな」
野本も今の佐々の言葉でその時のことを思い出して頷く。
「今はそれに比べたら随分ましだろ」
「だからね。余計にね」
咲は慎重な感じで言葉を出していく。
「あいつに気付かれないように注意して」
「だよな。それで力になって」
「そっとね」
皆そのことには細心の注意を払っていた。その日は田淵先生が復帰した。こうして未晴こそいないがとりあえず通常の学校生活に戻っていた。
しかしだった。その日の放課後正道はその届けられたピザや和菓子を見て。眉を顰めさせたのだった。
「今日もなのか」
「どうかしたの?」
「いや、これは」
未晴の横でギターを弾き続けている彼のところに差し入れを持って来た看護婦さんに対して言うのだった。
「一体何処から。三日も続けて」
「それはわからないけれど」
その辺りは隠した看護婦さんだった。これは当然の配慮であった。
「ただ。誰かが応援してくれているみたいよ」
「応援?」
そこであることを察した正道だった。
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