【完結】Fate/stay night -錬鉄の絆-
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第003話 2日目・2月01日『召喚』
前書き
更新します。
私とキャスターは一旦、話は終了して私の部屋の近くの部屋に案内した。
どうも部屋一つをキャスターのスキルの一つ『陣地形成』で改造した後、私の家の結界を更に強化するのだそうだ。
その際、キャスターが倒れていたときに持っていた短剣の事を聞いてみた。
結果はやはりあれがキャスターの宝具だったらしい。
ちなみに投影はしなかったが、なぜか頭に工程の順序が浮かんだことを話したらすごい目で見られた。
…やはり私の投影は異常なのだと再確認させられた。
その証拠に小声で解剖とかぶつぶつと呟いているのがとても怖かった。
そしてキャスターの真名は神代の裏切りの魔女・メディアだと知り、私は思わず泣き出してしまった。
その際にキャスターも情が移ったのか自分も涙を流しながら私のことを抱きしめてくれた。
そして食事時にキャスターに私が作った料理を一緒になって食べていたらキャスターはとても美味しそうに食べてくれた。
私としては喜んでもらえて嬉しい限りなんだけど「昔は?」と、聞いたら「聞かないで…」と返された。
どうやら触れてはいけない話題だったらしい。
それと食事をとっても魔力が回復することがわかりもう血はいらないといってくれた。
やっぱり嫌だったみたい。
それは当然なんだけど。
そして食事を済ませた後、キャスターに部屋の改造はどう?と聞いたら、後半日くらいはかかるといっていた。
話的にはここを拠点に町に索敵魔術を張り巡らすとの事。
後、外界に対して弱い私のために優先して対魔力の礼装を作るといっていた。
私は思わず笑顔で「ありがとう!」といったらキャスターは目をトロンとさせて、「キャーーーー! 志郎様可愛い!!」と抱きつかれた。
それ以降も色々あったがようやく私の魔力がピークに達する24時近くになったのでキャスターを連れて、表向きはただの土蔵。
そして裏向きは私の魔術師としての工房に向かった。
「志郎様の工房はあまり物が置かれていないのですね?」
「うん、これといって私の魔術は場所をとらないからほとんどは道場で投影した武器での実戦経験とお父さんが残してくれた魔術書の解読くらいなの」
「志郎様は剣を嗜んでいるのですか? 私はてっきり弓での遠距離戦が得意かと思ったのですが…」
「うん。お父さんが傭兵家業だったから様々な武器の使い方も教えてもらったの。だから私はこれといって体術・武器の形に決まりはないの」
「そうなのですか…」
「うん」
キャスターと話をしながらもサーヴァント召喚の準備をした。
そして時間が後1、2分くらいになり私の左の手の甲にじわじわと痛みが走り出したのと同時に土蔵に仕込まれている魔法陣が次々と光の線を発しながら描かれていた。
「ほう……自動的に魔法陣が浮かび上がる仕組みになっているのですね。ですが触媒はどうするのですか? 投影のひとつでもしておいたほうが…」
「大丈夫。今から触媒となるのは私の体自身だから」
「え!? それは一体…!」
「えっとね、詳しく言うと私の体に埋め込まれているといった方が正しいね」
「埋め込まれて…それは一体?」
キャスターがなおも私のことを心配してきたがもう時間と話を終わらせて私は召喚陣の前に立ち、
「閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する」
キャスターに見守られながら失敗は許されない詠唱を始めて、私は事前に切っておいた指から一滴の血を垂らした。
「―――――同調開始」
同時に魔術回路を開いて私の体を魔力が暴走するように全身に行き渡る。
もとの神経が魔術回路なだけにいつも以上に体が魔力に対して敏感になる感じがする。
そして詠唱をそのまま続ける。
「――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば応えよ」
そして詠唱中にもかかわらず魔法陣からエーテルの嵐が巻き起こり土蔵内を満たす。
少し気押されながらもさらに続ける。
「誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
大気のマナも取り込みながらさらに私の体に魔力が流れ込み限界近くまで来ていたが最後まで詠唱を完了させた。
そしてついに私達の前の魔法陣から光が溢れ、それはもはや一つの強力な旋風となり召喚陣の中心から少しずつ人らしき人物が姿を現した。
その姿は私と同じくらいの身長ながらも青白いドレスの上に銀の甲冑、そして金色の髪がとても似合っていた高貴そうな一人の女性がその場に立っていた。
エーテルの嵐が止み女性の姿がはっきりとして私は思わず息を呑んだ。
そして思わず「綺麗……」と呟いていた。キャスターも同様なのか目を光らせていた。
……後に違う思想もあったと知ることになるが。
ゆっくりと女性は目を見開いた。その開かれた瞳はエメラルドグリーンの瞳で金色の髪とあまりにもマッチしていたので心の中でまたしても綺麗と呟いた。
「―――問おう。貴女が私のマスターか?」
凛とした声で女性は私に向かって問いただしてきて私は同意するように今まで見せないようにしていた令呪を見せた。
「はい。私が貴女のマスターです」
「令呪と貴女とのラインの繫がりを感知しました。これより我が剣は貴女と共にあり、貴女の命運は私と共にある……―――ここに、契約は完了しました。
私のクラスはセイバー。これから短い期間ですがよろしくお願いします、マスター」
「はい…」
言葉に応じた私は魔力枯渇で思わず倒れそうになるが、そこでキャスターに抱きかかえられた。
だから私は感謝しようと口を開こうとしたが、
「貴女はサーヴァント!? 私のマスターになにをするか!」
「「え…?」」
私とキャスターの声が重なる。
それと同じくセイバーはなにやら構えをして今にも飛び掛ってこようと足に魔力を溜めようとしている。
これはマズイ!?
脊髄反射で脳に情報が伝達されるよりも早く私の体はキャスターの前で仁王立ちをしていた。
「待って! キャスターは私達の敵じゃない!」
「マ、マスター…?」
「志郎様…?」
そこでしばし時が止まる。
前方には召喚されたばかりの見えない剣を構えたセイバー。
後方に何も出来ずに止まっているキャスター。
中心には仁王立ちの私。
「…………」
「…………」
「…………」
しばらく沈黙が続くがセイバーはやがてその口を開いた。
「…キャスターのサーヴァント、聞きます。本当に貴女はマスターの敵ではないのですか…?」
「…ええ、それは私の真名を以って誓うわ。志郎様は私を助けてくださった大切な存在。だから敵にまわることは決してないわよ」
「…………」
二人の間でなにやら水面下での火花が散っているが私はまだ口を挟める状態ではなかった。
そしてまた沈黙が続いたがやがてセイバーは腕を下げて、
「すみませんでしたマスター。それにキャスターのサーヴァント。私の思い違いだったようです」
「いいわ。本来ならそれが普通の反応なんだから」
「キャスター、あなたの慈悲に感謝を…」
そこでやっと二人から放出されていた殺気が解かれた。
と、感じた途端に膝の力が抜けて私の視界はブラックアウトした。
セイバーとキャスターの叫びが聞こえるが今はもう、ダメ…。
──Interlude
志郎が気絶してしまい再び沈黙が訪れた。
だが今度は敵対といったものではなく気まずい空間になっていた。
だがもう屋敷の構造はすべて把握しているキャスターはセイバーに向かって、
「…とりあえず志郎様を横にさせます。セイバー…あなたも着いてきなさい」
「はい、わかりました…」
セイバーは召喚されたばかりでマスターの前でいきなりこのような失態をしてしまい、居た堪れない気持ちになっていた。
Interlude out──
翌日になりまだ朝焼けも指す時間帯に志郎はゆっくりと目を覚ました。
まだ重たい目蓋をゆっくりと開いて昨晩になにをしたか思いに馳せようとしたが、私の頭上では心配そうに私を見下ろしている二人の綺麗な女性が眼に入った瞬間、なにがあったのか思い出した。
「あ! セイバーにキャスター!?」
「あ! よかった…マスターが目覚めてくれて」
「そうね…」
二人の安堵の声が聞こえたが私はしばしなんで自分の部屋で寝ているのかと思ったが、
「すみません、マスター。昨晩は勘違いとはいえ貴女にも殺気を当ててしまいました…」
「あ……そっか。私はそのまま緊張が解けて…」
「そうです志郎様。とりあえずお水をお持ちしてありますのでお飲みください」
「あ、ありがとうキャスター…」
「いえ、対したことはしていませんわ。それで起きてもらった早々で悪いと思っているのですが…」
「うん。わかっているわ。令呪も現れたことだし再契約の相談でしょキャスター?」
「はい。まだ現界していられますが、今、敵のサーヴァントに攻められたら私は何も出来ずに座に帰ってしまうでしょう」
「わかってる。あ、でも…二人も一緒に契約しちゃうと能力が下がってしまうんじゃないの?」
「それはキャスターと私ですでに相談が済んでいます。まずは前衛である私がマスターの魔力を10のうち7割から8割は受け取り…」
「そしてキャスターである私は2割くらいの計算で魔力を受け取る手はずです」
「え? でも、それで大丈夫なの、キャスター…?」
私が心配そうに聞いてみたがキャスターは「大丈夫です」といって、
「セイバーがいてくれるのですから私は後方で身体強化などの援護を回らせていただきます。
それなら下がったセイバーの力も±で0にもでき、志郎様のお力添えによっては1にも2にもなります」
「確かに…それなら力強いね。それじゃさっそく済ませちゃおうか。キャスターを横取りされてもし悪用されたら嫌だから…」
「志郎様…私のことを思ってくださってありがとうございます」
「うん。それじゃ…、
―――告げる!
汝の身は我の下に、我が命運は汝の杖に!
聖杯のよる辺に従い、この意、この理に従うのなら―――我に従え! ならばこの命運、汝が杖に預けよう……!」
「キャスターの名に懸け誓いを受けます……! 貴女を我がマスターとして認めますわ、志郎様!」
そしてラインが繋がったことを確認すると同時に、セイバーの令呪がある左手とは反対側の右手にキャスターの令呪が宿り、そして私は本調子ではないためにまた体を布団に預けていた。
「……やっぱり、起きたばかりでの再契約は効いたみたい。今は僅かにだけど二人に魔力を送るのが精一杯…」
「大丈夫ですマスター。今ならまだ召喚時に渦巻いていた魔力が私の体を駆け巡っていますから十分迎撃が可能です」
「うん。頼りにしているね、セイバー。
それとね、そのマスターっていうのは止めてもらっていいかな?
今から私達は短い間だけど家族なんだから名前で呼び合いたいの。
あ、当然真名はばらしちゃいけないからクラス名で私は呼ばせてもらうね」
「…キャスターの言うとおりでしたね」
「え?」
「そうでしょセイバー? 志郎様は私達を道具としてじゃなくて一個の人として扱ってくれるのよ。昨日だけだけどそれは十分身に染みて私は嬉しかったわ」
二人は事前になにか話し合っていたようだけど私はまだ完全に頭が回っていなかったからあたふたしていた。
きっと今私の顔はとても赤いんだろうな?
それで恥ずかしいので顔を半分布団で隠していたら二人の様子が一変した。なんていうか、捕食者?のような目つき。
私の頭で変な警報が鳴り響いているが今は動けない。
セイバーはゆっくりと頬を赤く染めながら、
「それではシロと…確かにこの響きはあなたにとても似合っています」
「それでは志郎様…私、もう我慢ができそうにありません。
昨夜からずっと志郎様の寝顔を見ていましたが全然飽きませんでした」
「奇遇ですね、キャスター。私も昔飼っていた小ライオンのような愛らしさをシロから感じました」
「え? え? な、なにをするつもりなの? 二人とも?」
私の言葉の返答は返ってこなかった。
変わりに突如二人の熱い抱擁に見舞われた。
そこで私の思考回路はショートした。
なぜかって…?
こんな美人二人に抱きつかれたら女の私でもとても恥ずかしくなってしまうから。
「うふふ、志郎様は抱き心地もたまりませんね」
「同感です、キャスター。それにシロを抱きしめているととても懐かしい気分になるのです」
「あ、えっと…それは多分正解だよ、セイバー」
しばらく二人に抱きしめられていた私は四散している思考回路を掻き集めてなんとかセイバーに言葉を発した。
「え? それはどういうことですかシロ?」
「そういえば志郎様、セイバーを召喚するときに私自身を触媒にするといっていたけれど、今なら話してもらえるんですか?」
「…うん。今から少し大事な話をするから二人とも聞いてくれたら嬉しいな」
私の真剣な言葉に反応したのか二人は姿勢を正して話を聞く体勢になった。
「まず、どこから話したらいいかな?…そうだね、最初は確認から取らせて貰うね? ね、セイバー。貴女は十年前の第四次聖杯戦争の記憶は持っているのよね?」
「!? シロ、どうしてあなたがそのことを…!」
「うん。合っていたみたいだね、それじゃ貴女はやっぱりブリテンの英雄であるアーサー王で間違いはないよね?」
セイバーはそこで再度目を見開いた。
後書き
セイバー召喚しました。
パラメーター的にはマスター補正では凛よりは劣りますが士郎が召喚した時より断然上です。
次回本題に入ります。
それではご感想をお待ちしています。
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