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少年は魔人になるようです

作者:Hate・R
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第122話 翼は捥がれるようです


Side 愁磨

ガガァァン!!
「『やれ、"創造者"の戦いと言うのであれば、我を無視しないで貰えるかな?』」

「マジ助かったぁ……。」


俺達に対して回避無効と絶対必中と主神の優先度による"初撃"速度を付与された

"波"を、効果外・・・と言うか蚊帳の外になっていたツェラメルが土魔法で防御して

くれたお陰で、一度、事なきを得た。

安心して惚けそうになった頭を小突き、未だ再生しない俺とノワールの足を神鉄仕様の

オートメイルを創造して代用する。


「『如何に主神と言えど、他人が創造した世界を自由にするのは道理に反する。』」

【―――"創造者"止まり風情が邪魔立てするか―――】


憤懣遣る方無しとツェラメルを睨む(目はないが)主神だが、すぐに次の手を出さない。

ここで世界を創造した主を蔑ろにしてしまえば、それはそのまま自分にも適用され、

主神が創造した世界を俺が改変し、対抗手段を与え得る可能性が無きにしもあらず…

という程度には可能性が出来てしまう。

そしてそれが超のつく天文学的数字だろうが、示唆してしまえば、"主神に認められた"

今の俺ならば100%成し得る・・・と言うのが共通見解であれば嬉しい所なのだが。


【―――貴様に手を出しては後が面倒なのだが…仕方あるまい―――】


悩んでいたと思ったのも束の間、主神の手に光の玉の様な物が現れる。

俺と初めに手合わせたような即応の創造ではない、時間を掛けた、創造として形を持った

"創造物"。概念だ法則だと、そんな胡乱な物ではない。

もっと直接的な、奴にのみ許された物。


「っ、登録使用(コード)"神成"!!」


ショートカットのコードにより『禁箱』の中で最高の攻撃力である『終焉の笛(ラグナロク)』と

最速である『死、齎した者(メメント・モリ)』を複製した『禁箱』からそれぞれ五発ずつ射出する。

そこらのラスボス程度ならオーバーキルの十回も過ぎる火力だが、やはり奴本体には

届かず、霞を食うだけ。

それよりも、本命である"創造物"の破壊が同じ様に無効化されている。

アレがただのデコイなら、誘導されるのは一発だけで済む筈だ。それが全弾吸われている

って事は、あそこに居るのが本体ではあるって事だ。デコイ無効化を無効化なんて面倒は

していない。つまり―――俺の『創造』が届いていない。


「!にげ―――」


ツェラメルを強制転移させるより一瞬早く、光の玉が展開される。

文字の様に見えるそれは束縛するように、或は包み込むように絡みつき、ツェラメルと

世界を切り離した。


【―――"個体名ツェラメルの創造権限を剥奪、初期化する"――】
ブチブチブチブチブチブチブチィ!!
「『ぐ、がぁあああああああああああああああああああ!!』」


磔にした光がツェラメルの纏う闇を引き千切る。半分に割譲した世界の権限が凄まじい

速度で奪われて行く。止めようと闇雲に全ての創造物をぶつけるが、やはり効果無し。

瞬く間に権限と共に『創造』を奪われたツェラメルは少女の姿に戻ってしまった。


「そ、そんな……!」

【―――安心するが良い、この"魔人"を始末したら返すさ―――】

「ふざけないで!返しなさい、私の…私達の世界を!!」


力を奪われた事よりも、安住の地を奪われた事に怒ったツェラメルが魔力波を放つが、

創造者でなくなったその攻撃は、ただの感情の発露として終わる。


【―――やれ、唯人となったのだから大人し「ぼくの大切な人に何をしている、主神!!

永く終る石の神槍(ミストルティン)』!!」


怒りを露わにしたフェイトが武装魔法中最強の物理攻撃力を持つ石化の槍を振るい、

靄の体を四散させる。次の瞬間には何事も無かったように元の型に戻るが、フェイトを

見て首を傾げる。


【―――貴様、創造物ではないのか?……ふむ、確かに魂は創造者のようだが、なんだ

その有様は?元の魂と、そこの元"創造者"との半々?いや、7:3程か?それで認められる

のか?やはり因果が全て集約しているだけある、イレギュラーが多い。」


無意識か、途中から響く声ではなく普通の声になり、フェイトを――今のこの世界の設定

状況を淡々と確認する。興味の対象が代わり易い奴だ。

だが嬉しい誤算だ。曰く、"創造は魂に宿る力"らしい。態々確かめる必要が無くなった

事で、少しだけ手を隠せる。


「独り言にしては長いね!"ヴィシュ・タル リ・シュタル ヴァンゲイト!契約により

我に従え 奈落の王!!"」

「だ、ダメ!フェイト!」


好条件が出て喜ぶよりも早く、暴走列車になったフェイトが最高位地魔法を詠唱しながら

石化の槍を振り回し突撃していく。

ツェラメルの制止すら耳に届かないとは相当キてやがる。だがその列車に乗った方が

二人だけで攻撃するよりは糸口を掴む可能性が高い。

と、同じ考えのノワールと同時に、フェイトを正面にした兇叉の形を取る。


「『引き裂く大地(テッラ・フィンデーンス) 固定』!我が槍に宿れ、『憎しみ喰む者(ニーズヘッグ)』!」

「なっ!」


フェイトが『闇の魔法』を、ネギの技で言う所の"術式融合"を使ったのに驚く。が、何故

俺の作った術式を俺の陣営の、同じ拳法+魔法使いが使って驚くのか。

先駆者のエヴァもいるのに。あんま使ってないけど。使ってくれないけど。


「それはさておきィ!合わせろよ、ノワール、フェイト!!」

「何をさておいたんだか!"樹を枯らせ!世界を食らい尽す!『滅びの―――」


今まで隠して来たのであろう、初めて聞くオリジナル術式の名を聞いた瞬間、俺達二人の

目がギュピーンと光る。

主神に武器を突き刺し、フェイトの発動タイミングに合わせて、解放する。


「滅びの!」

「えっ!?」

「滅びの!!」

「くっ!」

「「「"トリプル・バーストストリーーーーム"!!!」」」
キュドムッ!!!

勝手に合体技にされて不服そうな顔のフェイトだが、諦めて合わせて来る。

槍から解き放たれた溶岩が内部から奴を消し飛ばし、戻るそばから焼き尽くす。・・・が

やはり効いた様子はない。急造であれば、さっきのノワールの攻撃の様に防御手段を抜け

るかと思い、それを三人がかりの創造にしたんだが・・・駄目か。


「いくら創力を纏ったっつっても、ただの物理攻撃が徹って、合体即創攻撃が無効って

どうなってんだよ?」

「ずっとひとりぼっちだったから、妬んで複数からの攻撃は無効とかにしてるんじゃな

いかしらぁ?いやねぇ全く。」

【―――煽る為でなく、本当にそう思っている所が忌々しい。貴様らの強者としての在り

方か、将又素か……ああ、成程―――】


独り言のように呟くと、常に空間を圧迫していた感情がプツリと掻き消える。

そして手が掲げられ―――


「―――これが気に食わないと言う感情か―――!」
ズァッ―――――――――――――――――――― ! ! !
「ぐっ……!?」


奴から嘗てない力が放出される。

その余波か、或は力を解放する条件か――いや、奴に限ってデメリットだ制限だと言う

話しは有り得ない、だから、あらゆる"力"が力負けしただけだ。


「素晴らしい……我に人間の様な感情を抱かせるとは。ある意味ではこれも創造と言える

やも知れぬな。」


力を解放しただけで、今まで苦労していた奴を覆う"鎧"が弾け飛び、俺が数十、数百と

張っていた防御やら補助の能力も全てかき消された。

絶好のチャンスだってのに、あの野郎・・・!


「我に新たな"創造"を見せた礼として、これで終わらせよう―――」


つい一瞬前まで棒立ちだったのに、今は俺の総創力の数十倍の力で攻撃しようとしている。

神はキレやすいと、どこぞのラグナロク開催しているワルキューレが言ってたが、こいつ

の場合は情緒不安定じゃないのかね!?と突っ込むより早く、最強の防御手段である『|神

山《アースガルズ》』を、全員を守るように『禁箱』からあるだけ全て展開する。

神々の住まう世界とそれに連なる9つの世界を切り裂いた空間に捻じ込む事により、通常の

防御手段に加え、空間装甲的な役割も持つ、"広すぎる"武装―――


「『破創』―――」
カッ!

Side out


Side ―――

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――――――――
―――

「か…………っ!」


主神の攻撃に焼かれたダメージと、閃光弾を食らった様な耳鳴りと失明から回復した

愁磨が目にしたのは、破壊の限りを尽くされたような墓守人の宮殿の広間だった。


「な、ん……?」

「やはり"無条件破壊"は軽減されるか―――」


敵の声を認識し、咄嗟に攻撃に備えつつも、危うく消し飛びかけた直前の記憶を起こし、

思考する。

確かに自分は、最強の防御手段を、それも惜しみなく複数展開した筈だった。それがなん

の守りにもならず、かつ宮殿までがダメージを負っている。

だと言うのに、自分達は重症程度だ。"ネギ達と同じ様に"。


「……被造物を無条件で破壊とか、とんだチートだ……!エラッタしやがれってんだ。」

「そうでもない。現に世界を九つ……をいくつか消しただけで、貴様が無事な程度まで

効果が緩和されてしまっている。貴様の嫁に想像力が足りないと言われても仕方ない。」

「あら、意外と気にしてたのかしらぁ?器の小さい、神様ねぇ……。」


まだ回復途中のノワールが槍を半ば杖の様に使い、隣りに立つ。

先程の解放で奴の妨害は無くなったはずなのだが、俺もノワールも回復が遅い。

幸いなのは上機嫌か或はやる気が無いかで、次の攻撃を撃ってこない事だけか。


「しかし、やはり貴様等だけか。他の嫁らもと勘繰って撃ったのだが、やはりそうか。

どうやら我の『創造』、魂を共有し合う者へは軽減されるらしい。

発見だ、嬉しいぞ。たかが一人の創造者と相対しただけで、二度も道が広がった。」

「こっちは嬉しく無いねぇ…!」


嬉しくないと言うのは半分本当で半分嘘だ。

奴の可能性が増えててしまうのは勘弁だが、仮定していた対抗手段をまた一つ肯定された

のは非常に喜ばしい。だからこそ、覚悟を・・・いや、諦めなくてはいけない。


「しかしこれ以上は蛇足だろう―――」

「『罅ぜよ』―――!」


奴の手に光の玉が現れた瞬間、咄嗟に攻撃を仕掛ける。

だが今度は霞の鎧の様に目前で掻き消されるのではなく、弾けて防御されてしまう。

攻撃は防御無効一撃必殺全体攻撃の上、防御も絶対的で変幻自在。

現状の俺達では突破も防御も打つ手無しだ。


「"個体名 愁磨・P・S・織原及びノワール・P・E・織原の能力を剥奪、初期化する"――!」
ブチブチブチブチブチブチブチィ!!
「ぐうぅあああああああああああああああああああああああ!!」

「きゃああああああああああああああああああああああああ!!」


一際眩く光の玉が弾けると、体中が内側から引き摺り出されるような――ではなく、

実際に、内側から何かが無理矢理引き摺り出されて行く。

それは単に魔力や能力と言うものだけじゃない。培った経験、肉体の鍛えた分、今までの

痛み(耐性)までもが、根こそぎ毟り取られる。この、ただの"人"になる感覚―――

成程、力を行使していた俺達だからこそ余計に、絶望感がある・・・!


「さぁ、まずは貴様からとしよう。」


次の瞬間、目にも止まらなくなった速さでノワールの目の前で槍の様な物を構える主神。

たった2、3mの距離を詰める所か、鈍くなった反射では反応する事も出来ず―――


―――どしゅっ


と、ノワールと・・・いつの間にか、俺の背にも槍が突き立てられていた。


Side out


 
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