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ドリトル先生と姫路城のお姫様

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第八幕その二

「愛人の人と東京の玉川上水で自殺したんだ」
「ヘビーね」
「心中なんて」
「それも愛人の人がいたとか」
「お顔がよくてお金持ちの家の人で人柄も悪くなかったそうだから」
 そうした要素があってというのです。
「結構もてたそうだからね」
「そういえば太宰治さんの写真って」
「この研究室にも太宰さんの本あってね」
「太宰さんの写真も載ってるけれど」
「確かに結構な美形よね」
「芥川龍之介さんもだけれど」
「二人共美形でも有名だね」
 実際にとです、先生も答えました。
「顔立ちのよさでも」
「そうだよね」
「二人共顔もよくてね」
「頭もいいしね」
「それならもてない筈ないね」
「それで太宰はなんだ」
 愛人の人と自殺したとです、動物の皆もお話しました。
「自殺して」
「そしてだね」
「その日が昭和二十四年六月十三日」
「この日なんだ」
「そうだよ、それでその日を桜桃忌というけれど」
 これがというのです。
「桜桃というのはさくらんぼのことだよ」
「だからなんだ」
「先生今さくらんぼって言ったんだ」
「成程ね」
「そういう理由だったんだ」
「そうだよ、これは作品の名前だよ」
 桜桃というのはというのです。
「太宰のね」
「へえ、そうなんだ」
「桜桃っていう作品も書いていたんだ」
「そうだったのね」
「それが命日の名前にもなって」
 そしてというのです。
「芥川もそうだよ」
「何か昨日王子とお話してたけれど」
「ここでも太宰と芥川って重なるね」
「不思議なことに」
「美形で自殺したことといいね」
「そうなんだよね、ちなみに芥川の命日は河童忌だよ」
 この名前だというのです。
「河童という作品も書いていてね」
「ううん、何かに合うかな」
「芥川さんが河童っていうと」
「太宰さんの桜桃忌もそうで」
「そこも同じだね」
「本当にこの二人って重なるね、そういえば芥川は」
 ふと思い出した先生でした。
「羅生門を書いていたけれど」
「あっ、羅生門っていったら」
「京都のあそこじゃない」
「僕達跡地に行ったけれど」
「あそこを舞台にした作品も書いていたんだ」
「そういえばそうだったよ」
 動物の皆も気付きました。
「いやあ、文学って近くにあるね」
「姫路城は泉鏡花さんで」
「さくらんぼは太宰治さん」
「羅生門は芥川龍之介さんね」
「文学は人の身近にあるものだよ」
 また言う先生でした。
「奈良に行ったら何処もかしこも和歌に詠われていたしね」
「そうだったね」
「あれは凄かったね」
 オシツオサレツもその時のことを思い出して言います。
「大和三山も平城京も」
「何処でもだったから」
「万葉集の世界だったわ」
 ダブダブもこう言います。
「奈良は」
「明日香村にいたら」
 しみじみとして言うトートーでした。 
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