| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

魔法少⼥リリカルなのは UnlimitedStrikers

作者:kyonsi
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第4話 疑念

――side響――

 あれから数分。屋上から室内に戻って食堂前に差し掛かる。まぁ、その途中もエリオはー、キャロはーってずっと話が絶えなかった。
 そんだけ好きなんだなぁと改めて思うし、あの二人がすごくいい子なんだろうなぁとも思うし。ただ、フェイトさんが過保護すぎる気がすると思ったのは内緒だけど……子を心配する人ってこういう物だと思いたい。

「そうだ、これから俺は飯を食べに行くんですけど、フェイト隊長はどうしますか?」

「……行きたいけれど、私はこれから外回りなんだ。明日は出張だから、今のうちにやれることはやっておこうと思ってね」

「はぁ、そうですか……それでは、先に失礼して食堂に行きますね」

「うん、それじゃあ」

 頭を下げてとりあえず見送る。うん、俺は執務官になりたくないからあんまり知らないけど、執務官ってかなり大変で、かなり努力しないと慣れない役職だというのは知ってる。実際、昔目指してたやつ知ってたし。
 とりあえず中にはいって、奏達を……え?

「……何このパスタの山は?」

「え、あぁ、おかえり響?」

「あぁ、今戻ったよーってか、なんだこれ?」

 目の前にどこの山だよって思うぐらいに山盛りにされたパスタ――の山がある……俺も結構食うほうかなって少し前まで思ってたけど、訂正する。うん、こんだけ食うやつってどんな奴だよ。

「……それエリオと、スバル用だって」

「……へー……え?」

 山の反対側に歩いて誰が食べてるのか確認しに行く。そこにいたのは勿論。

「あ、響おかえり」

「あー、どったの響?」

「おー、ただいま」

 普通に飯を食べてるエリオとスバル。そこに普通に溶け込んでる震離の姿が。お前、これ見て何も驚かんのかよ? 

「ん、どったの響? 私の顔になんか付いてる?」

「……うん、食べかすが付いてんぞ」

「え、嘘!?」

 そう言って顔を拭いてケチャップを拭きとる震離。正直今のはついでなんだけどな、まぁ。こんだけ食べるのは多分、多分成長期だからだ、きっとそうだよ! 俺がエリオやスバルの年の頃に比べて、数倍食べてるけど気にしちゃ負けなんだよきっと。

「現実逃避は行けないよ、響? それよか食べないの?」

「……うん、なんか見てるだけで腹が膨れた気がしたからいいや」

「……うん、だろうね」
 
 気がついたら、隣に奏が座ってた。食べ物が乗っていた取り皿をくれたからそれを食べる。なんか、食いかけだった気がするのは気のせいか?

「……震離がなんか食べてたからだよ」

「そうか、あと人の考え読むなよ、なんか気恥ずい」

「照れない照れない」

 隣で笑う奏を見て恥ずかしくなる。正直あまり勝てないから困る。まぁ、奏に勝てないって事は分かってる事だし、とりあえずさっさと飯を食い終わろう。そして、部屋に行って今度こそ部屋の整理をしよう!
 あ、だけどその前に挨拶を済ませとくか。くるりと食堂を見渡して……居た。

「なのはさんとはやてさん?」

「ん、何かな?」

「どないした?」

 一つ離れたテーブル一緒に食べてるなのはさんとはやてさんに声をかける。まぁ、確認のために聞きたいことが一つあるだけなんだけどね。

「失礼ですが、ライトニングとスターズの副隊長二人はどこにいらっしゃるんでしょうか? 挨拶だけでも済ましておきたいのですが」

「あぁ、シグナムとヴィータは外回り中やったと思うよ、だから多分夕方くらいに戻ってくると思うから……その頃に医務室に行ってな?」

「はぁ、了解です」

 と確認し終えてとりあえず分かったからいいんだけど……。

「奏?」

「ん、はいはい、流と震離には私が伝えとくよ、早く部屋に行って整理したら?」

「あぁありがと。それじゃ夕方にな?」

「はいはい」

 手を軽くひらひらと振ってる奏に、手を振って返事をしながらもう一回食堂を後にする。本当に、言わなくてもある程度伝わるから本当に助かるなぁ。本当。さて。

「部屋に行って片すかね、今晩絶対あの二人が来るだろうし」

 絶対来るな、麻雀とかいろいろ持って! その為には部屋を少しでも片付けないと、人なんて呼べん。まぁ、ルームメイトが居ない事で話進めてるけど、いたらどうしようかな。

「……付いてから考えるか」

 とりあえず、さっさと寮に向かって……ん、あれ?なんか引っかかる……なんか大事なことを放置してるような……してないような……。まぁ。

「……忘れるくらい微妙なことだし、まぁいいか」

 とりあえず今は部屋の掃除だ。さて、忙しくなるぞーーー!


――――――

 で、部屋の前に[ヒビキ・ヒオウ]ってミッド語で書かれた紙がはられてる部屋の前についた。うん、紙をめくっても他に名前が無いのを確認してとりあえず部屋に入る。で一言。

「……一人暮らしとしては申し分ないくらい広いな」

 実際その通りだ。ベットは上と下の二つずつあって、机も二つある。小さいシャワールームとか、簡単なキッチンもあるし……うん。俺の荷物が入ったダンボールも複数ある。何となく不安になって、もう一度外に出て、俺以外に人が居ないかを確認する。うん、やっぱりなにも書いてない。

「……やっぱ不安だなぁ」

 そう思って、とりあえず二段ベットの上側を覗くけど、今まで使われた形跡なんて全くない。それどころか新品そのものだ。まぁ、上は使わないで、下しか使わないからあまり関係ないけどな。ふむ、俺でこうだとすると……

「……落ち着いたら、流の所にも足を運んでみるかね」

 多分あっちも二人部屋を一人で使ってんだろう。後で様子見に行ってみるかね。さて、とにかく。

「……どれに何を入れたのか覚えてねぇな」

 ポツリ呟きながらとりあえず適当に段ボールを開けてそこから適当に片付けをする。うん、すっごくだるい。

――――――


「悪い、遅れた」

「おっそいよー!」

 既に医務室前に集まってた三人に声をかける。うん、俺が集まろうとか言ってて遅れたから俺が悪いのは当然だが、震離よ、だからといって。

「……副隊長達の前では大人しくな」

「うわ、すごく静かに注意された」

「……医務室前で、副隊長陣が集まってるんだ。粗相のないようにしないと」

「え、でもなのはさん達見てるとそんな感じはないような」

「上がいい人だからって、その副隊長陣もいい人とは限らないだろうが」

 実際その可能性もあるからなぁ、たまに隊長よりも自分のほうが凄いはずって、部隊の中でふんぞり返ってる馬鹿がいるからな。まぁ、この部隊じゃ無いと思いたい。まだ出来てからそんなに経ってないから無いとは思うし、はやてさんの騎士たちだから多分平気だろうが。

「うん、それでも私達の上司にあたる人達だからちゃんとしてね?」

「はーい」

「……初めからそうしてくれよ」

 くそぅ、何で俺が言うと反発して、奏が言うと素直に聞くんだよお前は? それより、一つ気になったことがあるんだった。

「そうだ、流?」

「はい、なんでしょうか?」

「流んとこの部屋は誰か人いたか?」

「……いえ、二人部屋ですが、自分の所には居ませんでした」

 なるほど、流のところにも同居人は居ないのか。まぁ部屋の場所はそのうち聞くとして。何でそこは驚いてるんだよ?

「流一人なの?」

「はい、そうですが」

「……あれ、私達相部屋だったよね?」

「うん、そうだけど男子とは違うんじゃない、この部隊男の人あんまり見なかったし」

「……だからかな?」

 首を傾げながら話す震離の疑問に俺が答えるよりも先に奏が答えてくれた。多分、俺が言ったらまた反発するだろうし、それどころか文句言って来そうだし。……だけど、流でさえも一人なのか、そうするとエリオもやっぱり一人なんだろうか?

「まぁ、後で聞いてみるかね」

「ん、何を?」

「ん? あぁ、何でもない、さ、行こう」

「え、ちょっと!?」

 後ろで抗議する震離をほっといて、医務室の扉を軽く3回叩き、返事を待つ。その間に震離も落ち着きを取り戻したのか、少し緊張した面持ちでそこで立ってる。……何時もそうだったら、普通にかっこいいと思うんだけどなー。なんて考えていると。中からどうぞー、と声が聞こえた。軽く深呼吸して、よし。

「失礼します」

 声を聞いた印象は、落ち着いた感じの声だな。なんて、思いながら扉を開けて。医務室へと足を踏み出す。それに続いて、後ろにいる三人も続く。相変わらず奏と流は落ち着いてるのに対して、震離は少し緊張してるみたいだ。
で、医務室の中には、声の主かもしれない落ち着いた感じの白衣を着た湖の騎士シャマルさん、前の部隊で変に有名だった小さな上司、もとい鉄槌の騎士ヴィータさんと、ヴォルケンリッターの将。烈火の将の二つ名を持つ騎士シグナムさん。
 
「何か御用ですか?」

「いえ、こちらにライトニング、スターズ両分隊の副隊長がいらっしゃると聞いて、挨拶に来たのですが。今お時間宜しいでしょうか?」

 一応確認を取っておく、もしかするとがあると困るし。

「あぁ、それならば私とヴィータが両分隊の副隊長だ、私の名はシグナム、ライトニングの副隊長。階級は二等空尉だ」

「あたしがスターズ分隊の副隊長のヴィータだ、階級は三等空尉だ」

「そして私が医務を中心に担当してるシャマルと言います。何か怪我などしたら私に所へ来てくださいね?」

「よろしくお願いします!」

 こっちから挨拶しようと思っていたが、先に挨拶されたから、とにかく敬礼しながら挨拶を返す。まぁ、立ち位置的には俺からだな。

「本日付けで、こちらに」

「あぁ、大丈夫よもうはやてちゃんから聞いてるから、右から順に響君に奏さん、流君に震離ちゃんでしょう?」

「え、あぁ、はい、そうです」

 挨拶しようとしたのに途中で遮られた。というか既に連絡入ってるって、一応は挨拶くらいさせてくれても良かったんじゃないか? まぁ、いいか。

「えと、自分達がどの分隊に所属かは?」

「あぁ、それはわかんねーな」

「わかりました、自分と奏がライトニング。コールサインが自分が5で、奏が6です。そして、震離と流がスターズに所属でコールサインが流が5で、震離が6です、これからよろしくお願いします」

 そこまで伝えてからもう一度敬礼をする。というか、さっきから俺しか喋ってねぇ。隣に居る奏に視線を移すと、目があって。

……ごめんね?

……気にすんな。

 と1秒もしない内に互いの考えが分かった。まぁいいけどね、慣れてるし。まぁ、それよりも……。

「あのシグナム副隊長? 自分の体に何か付いてますでしょうか?」

 さっきからジロジロと人の体を見てるシグナム副隊長に声をかける。
 警戒されてるかと考え、冷や汗が凄い。でも不思議そうな様子は変わらないから、多分平気だろうが……

「お前は……いや、緋凰は何かやっていたのか?」

「……はい?」

 ……懸念してたことは起きそうにないが、下手な回答は間違いだ。少し気をつけて回答しないと。

「さっきからあまり重心があまりぶれないのでな」

「……あぁ、なるほど。小さい頃から一応剣術学んでたんで。それでかと」

「ほぅ?」

 ……あれ? なんかシグナム副隊長の目が輝きはじめましたよ? 何でシャマル先生とヴィータ副隊長はそんな憐れそうな目をしてるんですか? これから売られていく牛でも見るような目で俺を見てるんですか?
 副隊長殿? 昔見たときもう少し……なんかこう、大人しいと言うか好戦的な目はしてなかったと思いますが?

「え、響さー、一応は私よりも剣術はともかくとして、接近戦は私よりも遙かに強いじゃん」

 え、何言ってんの震離よ? 何時も最前線で突っ込んでいくお前よりかは弱いよ? そして、シグナム副隊長? 何でそんなに嬉しそうに笑ってるんですか?そして、何でヴィータ副隊長達は離れていってるんですか?

「……そんなことないよ」

「えー、この前だって普通に一人でガジェットを刀で斬ってたじゃん」

「ほう?」

 ……いかん、目の輝きのランクが上がって、鋭い眼光でこちらを見ている。

「……や、お前も接近戦出来るじゃん」

「あたし杖だもん、それで剣……というか、刀持って純粋な接近戦してるの響だけじゃん」

 もうやめて!? シグナム副隊長がすごくいい笑顔になってきてんだけど!? 絶対この人普段はこんなに笑顔になること無いタイプだよな!?

 だがしかし。

「なるほど、だったら―――」

「しかし、明日には出張ですので。お互いにまたいずれ、というのはどうでしょう?」

 この提案でシグナム副隊長が止まった。

「かの有名な烈火の将と剣を交えられるというのは、自分たちの世代……剣を学んだ人にとって非常に光栄な事です。
 ですが、明日は故郷の世界に行く関係上、模擬戦には適さないと考えます。
 どうせでしたら、何もない時に全力を持って挑ませて下さい」

 一瞬医務室が静かになる。
 後ろに居たヴィータ副隊長とシャマル先生は目を丸くしてるし。

 俺の後方からはなんとも言えない視線を感じるし……。

 まぁ、これで勝負の流れになったら文句言いながらでもやるよもう。
 シグナム副隊長も目を丸くして……

「あぁそうだ。そうだったな。明日は久しぶりの帰郷だ。緋凰達も地球……日本なのだろう?」

「えぇ。流石に地元へ行きたいとは言いません。ですが、久しぶりの故郷の空気を吸えますね」

 フッと笑って視線も柔らかくなったのがわかる。

「私の興味で明日に支障をきたすのは確かに不味い。わかった、近い内にまた時間を作る。
 その時は……」

「えぇ。全力で挑ませて頂きます」

 いつかのリベンジを、あの日よりも強くなったことを見せるために。
 
 ……やっぱり話したら分かってくれたわ。

「さて、挨拶早々で申し訳ないんですが。まだ挨拶するところがございますので、失礼します」

「……へ、ひび……あ、失礼しました!」

 ピッと敬礼をしてから、医務室を後に。後ろで奏達が慌ててるのがわかるけど。
 申し訳ないがすぐに離れる。

 ……考えたくないが、この人選はわざとか? あちらは覚えてないのか、知っててあえて泳がせてるのか……。
 やっぱり将と謳われるだけあって、腹になにか抱えてそうで怖いな。

 どちらにせよ……あまり接点作りたくないが、時間の問題か。


――sideシグナム――

「さて、挨拶して早々で申し訳ないんですが。まだ挨拶するところがございますので、失礼します」

 敬礼をしてから退室していく緋凰を見送りながら、ふと何かがチラつく。
 いや、正確には……動いてる様を見て何かがずっとチラついていた。
 これは……

「しっかしあのバトルマニアが素直に引き下がるとか、明日雨降るんじゃねーか?」

「ヴィータちゃん!」

 ……隣で失礼なことを言われてるが、それは一旦置いて置こう。

「……二人は、今回入った4人に見覚えは有るか? 特に緋凰に」

「「……え?」」

 ……何だその意外そうな顔は。

「コホン、私の方は無いと思う。多分はやてちゃんも見覚えがあったらなにか言ってる筈だし、リインちゃんも無い筈」

 咳払いして小さく手を挙げるシャマルに対して、ニヤーっと笑うヴィ-タは。

「あたしもねぇな。おっぱい魔人はついに人すら思い出せなくなったか」

「……ほー?」

 バチバチと視線がぶつかって火花が散る。ふふふ。久しぶりに手合わせするのも悪くはないだろうが……。

「こらヴィータちゃん!」

「冗談だよ……でもよ。あたしの方も覚えはないし、シグナムん所、あいつら武装隊から来てんだろ。その時、どっかで会ったことあるんじゃねーの?」

「……いや、最近じゃない。駄目だ霞がかってわからん」
 
 フーっと、ため息が漏れる。 
 あの三人とは文字通りの初対面だが、緋凰に似た人物とどこかで……なにかした筈だが……駄目だ分からぬ。

「ま、取っ替え引っ替えされるのが管理局だ。あっちの階級低いし、どっかで見たんじゃねーの?」

「……おそらくな」

 まぁいい。また話を聞けばいいだけだ。

 それよりも、だ。

「……あのオッドアイの……流って言ってたか。はやてが一番に気にしてたの」

「えぇ。地上出身の異動者。あの年で魔道士ランクはAAA。しかも総合で」

「模擬戦の映像も見たけど、アレは解りやすく不安要素だよなぁ。だから目の届く、なのはとあたしン所に置いたんだろうし」

 そのとおりだ。何もない異動ならば、比較的年の近いエリオとキャロ……ライトニングの方に置いていたが、事情が事情ゆえ、六課に大体居るなのはやヴィータの元に置くことになった。
 
「……武装隊からの三人は、まだ微妙なライン。六課が始まってから居る事務の四人も含めれば、あまりにも出来すぎているのよね」

「……あぁ。疑いすぎというのも有るだろうが、こうも続くとなると、な」

 寂しそうに告げるシャマルの言葉に同意する。
 偶然と言うには、同郷の者が揃いすぎている。我が主の願いの為とはいえ、睨むものが多いのもまた事実。
 
「ま、とにかくだ。それよりもあたしらは明日の海鳴に行くための、変身魔法の調整どうにかしねーと」

「そうねー。シグナムもたまにはイメージを変えてみるのはどうかしら?」

「……ぐ、だからそれは遠慮すると言っているだろう」

 なんとか……なんとか無難な服装にせねば。主からも初夏だから薄くてもいいんじゃないかと声を頂いてるが。
 なんとか躱さねば……!


――side響――

「……なんかあったの? なんか急ぐように離れたけど?」

 ジィっと奏からの視線がビシバシと背中に刺さる。震離からもなんか無言の圧力が凄い。
 今日はもう挨拶しないって分かったら流も片付けがありますのでって戻ってったし……。

「……いや、特に。ちょっとまぁ……苦手なんだよ。騎士っていう人達が」

「……ふぅん」

 やべぇ、圧が強くなった怖いわー。
 皆に言った覚えもないし、見てもなんの反応も示してないから知らないんと捉えても良いみたいだが。

 説明してよって視線で訴えてるから怖いわー。

「……ま。そのうち話すからさ、待ってくれよ。悪いことじゃないんだから」

「……わかった」

 はーっと深い溜息が漏れる奏に対して、ギリギリ奏の視界に入ってない震離はジトリと視線をコチラへ向けてから。ゆっくり両手を開いたのが見えた。
 その意味が分かってしまい。冷や汗が流て、俺の顔色が変わったのだろう。それを見た震離はニヤリと意味深な笑みを浮かべて、指を倒し。

「なるほど。あれかぁ」

「……? どうしたの?」

「いや。なるほどってね。響は頑張ってシグナム副隊長と渡り合えるよう頑張らないとねぇ」

「……うん?」

 うわぁ。完全に震離が察しやがった……。別にそれを元になにかするつもりは今の所無いしなー。
 忘れてるならそれで良いんだ。俺もマイナスには捉えてないし。問題があちらがそれに気づいた時、どう捉えるかが怖いんだよなぁ。別件とは言え、疑われてても仕方ないし。

「あ、居た」

 ふいに聞こえた声に、俺たちの視線がそこへ向かい。自然と笑みがこぼれた。

「よぉ。久しぶり」

「こうして会うのは2年ぶり位か。変わりがないようで何より」

 見知った顔がそこには居た。通信で顔こそ見てはいたけど、直接会うのは久しぶりだから……だから。

「あぁ。元気そうで、何よりだ」

 4人が元気そうなのは本当に嬉しいんだ。



――sideはやて――

「ゴメンな、二人ともこんな夜遅くに呼び出して?」

「ううん、大丈夫だよ」

「それよりもどうしたのはやて?」

 目の前に私の親友であるなのはちゃんとフェイトちゃんの二人を呼び出す。
 本当はもう仕事ももう終わって、二人とも疲れてるはずなのにそれでも来てくれたことに感謝すら覚える。

「うん、実はな二人に紹介しておきたい人がいるんよ、ただその人は機動六課の設立に手を貸してくれた人で、その人のお陰でこの六課の隊舎を手に入れることができたんや」

「すごい人なんだね」

「うん、そうなんよ、私もいろいろお世話になってる人やし、ただ、その人がなのはちゃんとフェイトちゃんに挨拶したいって言ってたから今日は呼び出したんよ」

「あ、はやてちゃん、挨拶する前にその人の名前はなんて言うの?」

 なのはちゃんの言葉に思わず名前を言ってなかったこと思い出す。危ない危ない、失礼なことになる前で良かった。

「あ、そやったね、その人の名前は「アヤ・アースライト・クランベル」三等空佐って言う方や」

「あぁ、その人の事は知ってるよ、本局でも有名な方で、一度あったことがあるよ」

「うん、私もあるよ」

 何や二人ともあったことあるんやね……それなら、内緒にしておけば良かったと心のなかで思う。
 けどまぁ、六課に取っては恩人の一人なんやし、失礼な事はあんまりしたくはない。

「それじゃあ、アヤ三佐に繋げるけど、用意はええか?」

「うん」

「大丈夫だよ」

「それじゃあ……ちょっと……あ、繋がった」

 モニタを操作して本局と繋がったのを二人に見せる。
 そして、そこに写ったのは、肩まで伸ばした黒い髪に、ややつり気味の青い眼に、丸いメガネを付けてる人物が現れた。

『お久しぶりです、高町なのはさん、フェイト・T・ハラオウンさん、アヤ・アースライト・クランベルです』

 モニタの向こうで深々と挨拶するアヤ三佐。うん、相変わらず大きな胸や。フェイトちゃんとシグナムとも引けを取らんほど人や。

「いえ、こちらこそお久しぶりです」

 二人の声が重なる、うん、やっぱり会ったことあるから、それほど緊張してないみたいや。
 まぁ、それよりもや。

「それにしてもアヤ三佐? 今日は、どのような用ですか?」

「え、はやてちゃん知らないの?」

「……うん」

 だってなぁ、なのはちゃんとフェイトちゃんに挨拶したいって言っただけで、他はなんにも言ってなかったもん。分からなかった。

『あぁ、そうね、えっと、今日そちらに三人ほど異動してきた子がいるでしょう?』

「え、えぇ、四人居ますよ」

『……四人?』

 あれ、なんか四人来たって伝えたら眉を潜めたで? え、私なんか失礼な事を!?

(落ち着いてはやてちゃん!)

(あ、うん、大丈夫やで、なのはちゃん!)

 心のなかでありがとうと本気で思う。
 うん、あの子ら何をしでかしたんやろうか?

『あぁ、多分私の情報が遅かっただけです、はやてさん、なのはさん、フェイトさん、「緋凰響」と同じ部隊の2人には気をつけなさい』

「……え?」

正直考えてもなかったことを言われたから凄く驚いてる。だって、今日異動してきた三人に気をつけなさいって、どういう事や?

『まだ、私も確証を得たわけではないけど、その三人、あなた達の……いえ、機動六課の不祥事をどこかに報告しようとしているみたいなの』

「えぇ!?」

『ただ、報告先は本局ということを考慮したら、地上のレジアス中将ではないと思う。でもまだ安心は出来ないの』

「……それは本当ですか?」

 なのはちゃんの声が少し震えている。私やってそうや、まだ会って一日も経ってないけど機動六課の仲間をスパイだと見なしたくない。
 それはフェイトちゃんも同じようで、少し肩が震えてる。

『現にその子達……正確には、「緋凰響」「天雅奏」の二人がよく動いてるみたいね。ただ、これ以上は向こうに悟られるから調べられなかったけど……』

「……」

 正直思っても居なかった、私達の予想は地上から来た流が監視者かと思ってた、まだその可能性は捨てきれない。だけど、あの三人が……いや、響と奏が監視者だったなんて……正直凄く驚いてる。

『ごめんなさい、ただ、警戒はしておいてって言う事を伝えたかっただけなの』

「いえ、わざわざ教えてくださって」

『いえ、私こそこんなことでしか貴方達の力になれなくて……でも』

『アヤ三佐、時間です』

 アヤ三佐の秘書らしき人の声が入った。そうか……アヤ三佐忙しいのにわざわざ連絡を……

『ごめんなさい、はやてさん、なのはさん、フェイトさん、今回はこれで』

「あ、いえ、こちらこそ」

 モニタの向こうで深々と頭をさげるアヤ三佐に釣られてこっちも頭をさげる。
 頭を上げたと同時に、モニタが閉じた。同時に、この場を支配する沈黙が痛々しくて、明日から彼らとどうやって顔を合わせればいいのか分からなくなった。

 だけど、今日はそのまま解散したけど、あの三人に対する疑念が生まれた瞬間でもあった。
 でも、言われてみれば確かにそうだ。響達三人と、事務のあの四人も響達と知り合いだといっていた。
 彼ら四人も、新部隊設立のときの志願者だったし、新人揃いのこの部隊の先輩になれると思って採用したけれど、疑念の生まれた今となっては少し後悔しとる。

「とにかく、近いうちにカリムやクロノ君と相談やね」

 そう言ってこの場は解散した。
 
 

 
後書き
長いだけの文かもしれませんが、楽しんで頂けたのなら幸いです。ここまでお付き合いいただき、感謝いたします。  
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧