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戦国異伝供書

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第四十六話 砥石攻めその三

「矢沢殿と共にですな」
「夜になると動き」
「城の中に火を点け」
「そして城の前にいるお館様に合図もしますな」
「そうしますな」
「そうじゃ、よいな」
 幸村は十勇士達にも答えた。
「城の門も開けるぞ」
「如何に堅固な城でもですな」
「攻めにくい城であっても」
「中から乱せば外に動けぬ」
「それがよいですな」
「そうじゃ、それを行ってじゃ」
 それでというのだ。
「砥石城を攻め落とそうぞ」
「ですな、しかし流石は大殿ですな」
「この様なことをお考えとは」
「お見事です」
「どの様な城も中から乱せば攻め落とせる」
「それをお考えとは」
「それをやってじゃ」
 そしてというのだ。
「この城を攻め落とせばな」
「そこからですな」
「信濃の北ですな」
「この地全てを手に入れられる」
「そうますな」
「そうじゃ、だから必ずことを果たすぞ」
 自分達のやるべきことをというのだ。
「よいな」
「承知しております」 
 十勇士以外の忍達も幸村に答えた。
「この度の我等の働きに全てがかかっております」
「武田家が信濃の北を手に入れられるかどうか」
「そのことがです」
「だからこそです」
「我等も必ず」
「そうじゃ、無論わしもじゃ」
 幸村自身もというのだ。
「ことを果たすぞ」
「ご自身が刀を手にされ」
「忍術も使われ」
「そしてですな」
「自ら働かれるのですな」
「この度も」
「わしは自ら戦う者じゃ」
 そうした将だというのだ。
「だからな」
「この度もですな」
「戦われて」
「そうしてですな」
「ことを果たされるのですな」
「そうじゃ、本来は将は自らじゃ」
 そこはというのだ。
「刀を持たぬな」
「お館様もそう言っておられますな」
「将は采配を執れと」
「自ら槍や刀を手にするものではない」
「それは軍勢がまことに危うい時のみにせよと」
「お館様が言われるのは道理じゃ」
 幸村もわかっていることである。
「しかしわしはどうしてもな」
「ご自身が、ですな」
「自ら槍や刀を手にされて」
「そうして戦われますな」
「将としてどうかとなるが」
 それでもというのだ。
「わしはそうしなければな」
「戦えませぬな」
「それが殿ですな」
「そうなのですな」
「これはどうにもならぬ」
 戦の場では自らも武器を手にして戦わずにはいられないのだ、采配も振るいながらそうするのが彼なのだ。 
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