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アリーの殿軍

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第三章

「貸し借り、特に金のことはしっかりしないとな」
「いやいや、それどころじゃないだろ」
「どう考えてもな」
「幾らあんたは今襲われないって言ってもな」
「後ろにあれだけいるんだぞ」
「何されるかわからないぞ」
「怖くないのか、あんたは」
 商人達は尚も言うがアリーは悠然としたままだった、彼だけが落ち着いて貸し借りの話をしていった。
 そしてだ、貸し借りの話を全部して金も払って受け取るとだった。彼は悠然としたまま商人達に話をした。
「また会おう」
「あ、ああ」
「あんたメッカに戻って来るんだな」
「そうするんだな」
「必ずな」
 そうするとだ、アリーは彼等に約束してだった。
 金を持って刀を手にしてだった、そのうえで驢馬に乗って堂々とメッカを後にした。だがその時にもだ。
 ムハンマドの敵達は彼を見ていた、彼等はどうしてもアリーに近付くことが出来なかった。それで言うのだった。
「駄目だ、どうしてもだ」
「あの気迫には勝てない」
「近寄ることすら出来ない」
「出来れば殺したかったが」
「どうしても無理だった」
「何という猛者だ」
「しかも我等が常に見ているのにだ」
 遠巻きであってもだ。
「平然としていたな」
「まるで何もないという風に」
「恐ろしい度胸だ」
「ムハンマドは恐ろしい男を傍に置いている」
「あの者、恐ろしい者になる」
「我等はあの者を殺せなかったが」
 それがというのだ。
「後々厄介なことになるか」
「そうかも知れないな」
「ムハンマドもアリーも殺したかったが」
「それが出来なかったことは災いとなるか」
 彼等は今から自分達の先について思った、だがそれでもだった。 
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