暴走する正義
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第四章
「暴走した正義は最早正義ではない」
「そのことがおわかりになられましたか」
「はい、正義は理性と共にあるもので」
それでというのだ。
「暴走した正義はそれは邪悪です」
「暴走したその時点で、ですか」
「正義ではない」
「そう思われましたか」
「はい、それを自覚出来ない人は」
祖国そして今日本で会った連中はというのだ。
「彼等が忌み嫌う対象と同じです」
「差別主義者とですか」
「異論を認めず悪意と暴力で以て対するのですから」
そうした輩だからというのだ。
「もうそれではです」
「差別主義者と同じですか」
「はい、正義でも何でもなく」
顔を曇らせて言うのだった。
「邪悪な差別主義者です、しかも愚劣な」
「愚劣ですか」
「自分のことがわからないのですから」
「そうなりますか」
「はい、そしてそうした愚か者は何処にでもいる」
モンドルは苦い顔でこうも言った。
「そのことを痛感しました」
「日本において」
「そうなりました」
「そうですか、悪いものを観られましたか」
「いえ、いい経験でした」
確かに気分は悪くした、だがそれでもというのだ。
「世の中そうした輩もいる」
「そのことを知ることが出来て」
「いい経験でした」
「そうですか、ではこれからです」
日本人の学者は自分に答えてくれたモンドルにあらためて話した。
「楽しいいい経験をされませんか」
「といいますと」
「お蕎麦を召し上がられたことはありますか」
「日本のヌードルですね」
「はい、蕎麦粉から作る」
「それをですか」
「これから食べに行きますか、丁度夕刻ですし」
夕食にというのだ。
「如何でしょうか」
「一度食べてみたいと思っていました」
モンドルは彼に微笑んで答えた。
「それでは」
「はい、いい機会ですから」
「お蕎麦を紹介して下さい」
「美味しいお店がありますので」
「そこに入ってですね」
「食べて楽しみましょう」
こう話してだ、二人で蕎麦屋に行った。そしてそこで楽しいという意味でいい経験が出来たのだった。
暴走する正義 完
2018・10・16
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