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頂上にあるものを

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第一章

               頂上にあるものを
 佐野志郎はこの時自転車で坂道をひたすら上っていた、そうしつつ共に上っている友人の城戸周大にこう言った。
「この坂道を越えたら楽になるから」
「それでだよな」
「うん、ここはね」
 必死に自転車を漕ぎながら周大に言う、額から汗が流れているがその汗を拭きもせずひたすら先に進んでいる。
 そうしつつだ、周大に言うのだった。
「進もう」
「この坂道をな」
「ほら、見えるよね」
 前つまり坂道の先に見えるものを見てだ、志郎は周大にまた言った。
「お日様が」
「ああ、確かにな」
「あれを目指して、それこそ」
 白く輝く太陽を見つつだ、志郎は言った。
「お日様まで辿り着く」
「そのつもりでか」
「進んでいこう」
「おい、お前が天然なのはわかっているけれどな」
 それでもとだ、周大は明るく言う志郎に返した。
「それでもな」
「何かな」
「太陽までか」
「その勢いで進んでいこうよ」
「そこまでする必要はないだろ」
 周大は志郎に冷静な声で言った、志郎とは対称的な口調だった。
「どう考えても」
「そうかな」
「ただ遊びに行く途中の道でそう言う必要あるか」
 周大の口調はあくまで冷静なままだった。 
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