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レーヴァティン

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第百九話 書の収集その八

 そこでだ、彼は公卿達に言った。
「俺は朝廷をお守りする」
「帝であられる神々を」
「そうされるのでおじゃるな」
「そうだ、ここを害することなぞだ」
 それこそというのだ。
「考えもしていない、俺は人だ」
「神ではない」
「そう言われるでおじゃるか」
「貴殿はそうお考えでおじゃるな」
「この世界の朝廷は神を奉る場所だ」
 帝はおられるが神であられこの世にはおられない、代替わりはされるが帝の御座には誰もおられないのだ。
「その場を何があってもお護りする」
「そうして頂ければでおじゃる」
「麿達も異存はないでおじゃる」
「貴殿はこの世界を救う御仁と聞いておじゃるし」
「その中で朝廷を護って頂けるのなら」
 ならばとだ、公卿達も述べるのだった。
「有り難いでおじゃる」
「ではおじゃるな」
「これからはこの都におられ」
「そのうえで政をされるでおじゃるな」
「いや、俺は大坂に戻る」
 都にはいないとだ、英雄は公卿達に答えた。
「ここにはよく来るがな」
「何と、都におられぬでおじゃるか」
「それは何故でおじゃろう」
「ここは都、この浮島の中心でおじゃるが」
「ここには入られぬでおじゃるか」
「生憎だがここは守りにくい」
 そうした土地だというのだ。
「だからだ、都は都だが」
「貴殿はでおじゃるか」
「ここには入られず」
「そしてでおじゃるか」
「引き続き大坂で政を執られる」
「そうされるでおじゃるか」
「都には然るべき者と役所を置き」
 そしてというのだ。
「兵も置くが」
「それでもおじゃるか」
「貴殿は大坂で政を執られるでおじゃるな」
「今言った通りな、都は祭りごとを行う場所だ」
 政ではなくというのだ。
「政は大坂で行う、貴殿達は祭りを行うな」
「それが麿達の務めでおじゃるよ」
 この世界の公卿達はそうであるのだ、政を行う者達ではなく朝廷即ち神であられる帝にお仕えしそうして祭事を行う者達なのだ。
「そのことは責任を持って行うでおじゃる」
「任せてもらうでおじゃる、これからも」
「麿達は政には疎いでおじゃるが」
「祭事は知っておるでおじゃる」
「だからそちらを頼む、そして俺はだ」
 英雄はさらに言った。
「大坂にいる、何かあれば大坂に来てくれ」
「わかったでおじゃる」
「ならこの浮島を頼むでおじゃる」
「これからも何かとあるでおじゃるが」
「それでもでおじゃるよ」
「そうさせてもらう」
 確かな声でだ、英雄は公卿達に答えた。そうしてだった。
 英雄は都の政のことを定めたうえである程度の兵を守りに置いて自身は軍勢の主力と仲間達を率いてだった。
 大坂に戻った、大坂に戻った彼の下に吉報が届いた。
「伊賀、丹後、但馬もか」
「その殆どがぜよ」
 当季が英雄に笑って話す。
「わし等に降ったぜよ」
「そうなったか」
「国人も寺社ものう」
「俺が都を手に入れてか」
「おまんならと思うモンがさらに増えてぜよ」
 そうしてというのだ。 
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