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ある晴れた日に

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461部分:夕星の歌その一


夕星の歌その一

                   夕星の歌
 正道が未晴のことを知って数日経った。その間彼は毎日佐々の家の店で夕方飲みそのうえで帰って潰れるという日々だった。皆もそのこと自体は知り怪訝な顔になっていた。
「どう思うよ、最近の音無よ」
「ああ、ちょっとな」
「やばいよな」
「だよな」
 春華の問いに野本と坂上、それに坪本が答える。今彼等は咲の机の周りに立って集まっていた。そのうえで自分の席に座ったまま暗い顔をしている正道を後ろから見ていた。
「何で最近そんなに飲んでるんだ?」
「昨日ウイスキー三本空けたのよね」
「ああ、そうだ」
 野茂は首を捻り佐々は茜の怪訝な顔での問いに応えていた。
「御前等が来る前にな。そこまで空けてすぐに帰った」
「ウイスキー三本ね」
「それもあっという間にって」
「何があったのよ」
 今の彼の言葉を聞いて明日夢と咲、それに静華が首を捻った。
「普通そんな飲み方しないわよね」
「尋常な飲み方じゃないのは確かよね」
「しかもあいつ前はそんな強いお酒ばかり飲まなかったのに」 
 三人はこうも言うのだった。恵美も怪訝な顔でその彼を見て言うのであった。
「間違い無く何かあったわね。その何かまではわからないけれどね」
「コンテストにでも落ちたんじゃね?」
 春華は気楽にこう考えていた。
「それで荒れてんだろ」
「あの自信家でもそういうことあるの」
 茜はそれを聞いて少し意外といった顔になった。
「コンテストに落ちるのって普通だと思うけれど」
「あれじゃない?どうしても通りたかったコンテストで」
 凛が少し考えてから述べた。
「それに落ちたんで」
「今一つピンと来ないけれど、それって」
 しかし静華は二人の考えにこう反論するのだった。
「あいつそんなんでそこまで荒れるタマでもないでしょ」
「言われてみれば」
「そうかも」 
 春華も凛も今の静華の言葉に応えて自分の考えを訂正させた。
「あいつがそんなことでああまでならねえか」
「また別のコンテストすぐ受けそうね」
「でしょ?だから多分コンテストとかそういう音楽のことじゃないわよ」
「音楽だったら誰にどれだけけなされてもへこたれないしね」
 咲もこのことはわかるのだった。
「咲達も結構言ったりしたじゃない。新曲駄目出ししたり」
「あいつ結構波あるんだよ」
 彼等の中で一番音楽に強い野本が言った。
「いい曲だなって思ったらその次の曲がはぁ!?ってなる曲だったりするんだよな」
「ああ、確かにどんなジャンルでも波あるよな」
 野本の指摘に春華も頷く。
「あいつの曲よ。波あって悪い曲だとうちも駄目出ししてきてるぜ」
「それでもあいつそれで落ち込むことはねえからな」
 野本はまた言った。
「だからそれはねえな」
「じゃあ何なのかな」
 竹山はここであらためて彼が今酒浸りと言ってもいい状況に陥っていることについて考えるのだった。
「そこまで強いのに今どうしてあそこまでなってるのかな」
「本人に聞くわけにもいかないし」
 千佳はそれはすぐに止めた。考えたそばから。
「どうしたらいいのかしら」
「今は様子見でいいと思うよ」
 竹山はその俯く千佳に対して告げた。
「それはね」
「それでいいの」
「何でもタイミングが大事だよ」
 それが今だというのである。
「何でもね」
「何でもなの」
「うん、だから暫く様子を見よう」 
 これは千佳だけでなく今ここにいる全員に言っていた。
「今はね」
「何かまだるっこしいがな」
「それしかないってわけか」
 坂上と野茂はそのことに今一つ賛成しかねていたがそれでも賛成するのだった。考えてそれが一番だと思ったからである。
 
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