魔法が使える世界の刑務所で脱獄とか、防げる訳ないじゃん。
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第72話 過去語 五
「ただいま……?」
「あ……琴葉さぁん‼︎‼︎」
あ、此処に居るということは私、“死んだ”。
「遅いじゃないですかぁああああ‼︎ 夜には帰ってきてっていったのにぃぃいいいい‼︎」
「ちょっと、職質されてた」
「え⁉︎ 大丈夫なんですか、それ⁉︎」
「塾に帰りって誤魔化してきたから平気。それよりご飯。お腹空いた」
「分かってますよ‼︎ 帰ってきてくれるって信じてたので、作ってありますよ!」
「じゃあ早くそれ、食べる」
さてと。
昼間、萬屋を出る前に、自分の権限に因り死んだ時のみ、此の場所で、全ての記憶を元通りにした状態で蘇生させると言う魔法を仕掛けた。なので、ベランダから紐無しバンジーをして、記憶を抹消してから絶刃の能力に因って死亡した私は、現在萬屋の奥へ入っている。
「明日も、絶対喧嘩ナシですよー」
「喧嘩をふっかけてくるのは向こうであって、私じゃない。だから、約束はしない」
「喧嘩なんて無視してください! ヤクザとか、ヤンキーじゃないんですから……」
「元マフィアだけど」
「それでもです‼︎ 今はマフィアじゃないじゃないですか‼︎」
「……もう好きにして」
◇ ◇ ◇
琴葉「と言うことがありました」
真希「ただの平和な過去語。オチは?」
君月「これでおしまいだよ? これを何日も何日も繰り返してた訳!」
「———平和な奴等ですね」
琴葉「え」
ガラッと扉を開けて入ってきたのは、スーツを着た長身の男。
そういえば、あの時の白髪ヤクザは真希さんだったのか。今話をして初めて思い出した。
で、こっちは———
琴葉「あぁぁぁあああ、偽ポリ公‼︎‼︎」
彼方「久し振りですね、琴葉さん」
琴葉「なぁぁあんでこんなに敵が一杯居るんだぁぁあ‼︎ 嗚呼……全員捕まえてどっかに打ち込めばいいんですか? え?」
「「「……は?」」」
琴葉「へっへっへえ〜! ただ遊びに行くわけだと思わないで下さいよ! 色々付与済みの特製手錠は常に持ってますからっ」
真希「外せや此の手錠ッ‼︎」
彼方「公務執行妨害でしょっぴくぞクソガキ」
君月「なんで俺までぇええええ⁉︎」
琴葉「だって、貴方達全員マギアの幹部じゃないですか」
「「「え?」」」
琴葉「先日、マギアの拠点に潜入させて頂いたので、間違えありませんっ!」
「「「は?」」」
昔魔法でやった、白髪プラス灰色の目と言う真希さんカラーに髪の色と目の色を変える。
琴葉「これで潜入させてもらいましたっ! 沢山魔法を教わってきました」
真希「てめ……なんてことを……」
琴葉「いや、貴方だって今第一魔法刑務所に潜入してるじゃないですか」
彼方「マキ……貴方、珍しく勉強してるんですね」
君月「そんなことしてたんだな……と言うか俺がマギアなのバレたぁぁああ……演技、完璧だったのにぃぃ」
琴葉「真希さんはマギアは“違法組織じゃない”と言っていましたよね? なら、別に潜入しても問題無いのでは? “本当に違法組織では無いのなら”」
真希さん達三人は、同時に目を見開き、そして溜息を吐いた。なんでシンクロして……
「……一回でそんだけ分かるっつーのは、流石としか言いようがねぇ」
「ですが、貴方は“知り過ぎた”」
「……幾らウチのお客さんだっつっても、容赦出来ねえ」
「やっぱり、マギアもまだ魔法犯罪を続けていましたか。世の中は、魔法と言う強大な力が生まれてから、それを争う事にしか使おうとしない、愚か者共の塊でしか無いですね。いいでしょう、三人まとめて相手します。おいで、絶刃」
マギアの情報はまた後で、此奴等三人を拷問して手に入れればいい。
今は取り敢えず、目の前のバケモノ達を無力化させなければ。
「本気でかかってこないと、後で後悔する羽目になりますよ」
「……その挑発、乗ってやらぁ‼︎」
「図に乗るなよ、クソガキ」
「ごめんな、マフィアさん」
そして、三人も椅子から立ち上がって、戦闘態勢に———
「「「 んぐっっ⁉︎⁉︎⁉︎」」」
なったところで、この前仕入れた“世界一強い酒”と言う名で売られていた酒を、三人の口に突っ込む。勿論、原液のまま。
三人はそのまま昏倒。流石に、酒には勝てない様だ。
あ、でも死んだかも。
「……まぁ、死んでたら死んでたでいいやっ!」
そして、私は萬屋を後にした———
ページ上へ戻る