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ある晴れた日に

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442部分:辺りは沈黙に閉ざされその九


辺りは沈黙に閉ざされその九

「そんなにな」
「だよね。そう滅多にはね」
「いないものだ」
 確かにそうだった。だがそこに例外というものがあることにはまだ気付いていないのだった。
「それは」
「それはそうだけれど」
 また言う加山だった。
「どうなのかな。本当にさ」
「何か話をしているとな」
 今の話をしているうちにだった。正道の顔が微妙なものにもなってきたのだ。
「未晴は本当に風邪なのか」
「風邪かって?」
「何かおかしい気がしてきた」
 こう言うのである。
「何かな」
「じゃあやっぱりインフルエンザかな」
「インフルエンザは一週間も二週間もかかるのか」 
 今度はこの疑問を話に出した正道だった。
「そんなにかかるのか」
「そう言われたら」
 暗い顔にまたなった加山だった。
「どうだろう」
「ないな」
「それはね」
 結論はこの通りだった。これは加山もよく把握していることだった。
「普通は五日の隔離で済むから」
「一週間や二週間はないな」
「ないね、ちょっと考えられない」
 今度ははっきりと答えることができた加山だった。
「風邪にしても絶対面会謝絶って」
「どちらにしろ見舞いに行きたいな」 
 結論はこれだった。
「本当にな」
「わかったよ。じゃあ応援するよ」
 加山はその正道にこうも告げた。
「頑張ってよね。本当にね」
「わかった。じゃあやってみるな」
「けれどね」
 ここでアドバイスの形になった。
「先生達は絶対に教えてくれないよ」
「ああ」
 もうこれは言うまでもないことだった。
「それは何があってもだな」
「柳本さん達にさえ教えないんだから」
「俺にもだな」
「何があってもね」
 教えないというのである。加山はこのことをあらためて話すのだった。
「それは覚悟しておいて」
「あいつの親御さん達もだな」
「それも間違いないね」
 未晴の両親についても教えてくれることはないというのだった。
「もうそれはね」
「それもわかる。間違いなく教えてはくれない」
 正道はここでも断言した。
「こちらも無理か」
「けれど。言い換えれば」
「言い換えればか」
「その人達は知っているってことだよ」
 こう彼に話すのだった。
「先生達や親御さん達はね」
「知っているか」
「先生達は間違いなく知っているよ」
 加山はまだ教壇にいて今度は明るい話をしている先生達を見ながらそのうえで正道に対して話すのだった。観察するような目である。
「間違いなくね」
「そうだな。そうじゃないと隠さないな」
「そういうこと。知っているよ」
 また言う加山だった。
「あと親御さん達もね」
「わかった」
 彼の言葉にあらためて頷いた正道だった。
 
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