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レーヴァティン

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第百八話 善行がもたらした果報その八

「楽しむことだ」
「時にはそれも必要だな」
「常に弓にかけている弦はすぐに切れる」
 常に引っ張られた状態にあってだ。
「それと同じだ」
「人もな」
「だからだな」
「時にはな」
「こうして飲んだりしてだな」
「楽しむことだ」
 まさにと言うのだった。
「今はな」
「それがいいな」
「そしてだ」
 それにと言うのだった。
「心ゆくまで飲もう」
「食ってな」
「この宴の後でな」
「全て終わるとな」
「後はだ」
「大坂に戻るか」
「そうするか」
 二人で話してだ、そのうえでだった。
 一行は和歌山城では酒に馳走を心ゆくまで楽しんだ、しかし城の者達の前では全員姿勢も態度も崩さなかった。
 このことについてだ、当季は城を出て大坂に戻る中で笑って話した。
「いや、辛かったぜよ」
「そやな」
 その当季に耕平が笑って応えた、六万の軍勢は今粛々と大坂に向かっていた。
「幾ら飲んでもな」
「人前では羽目を外せんのはのう」
「辛いわ」
「やっぱり飲むとぜよ」
 当季は笑って話した。
「どうしてもぜよ」
「心が解放的になってな」
 それでというのだ。
「姿勢も崩れるわ」
「そうなるぜよ」
「それがや」
「人前ではのう」
「それが出来ん」
 どうにもと言うのだった。
「立場があるからな」
「今のわし等はのう」
「一つの勢力の領袖や」
「そうなってきたからのう」
「それだね、あたしもね」
 桜子も言ってきた、皆今はそれぞれの馬に乗っている。馬を進ませつつそのうえで会話をしているのだ。
「どうもね」
「飲んでてやな」
「地が出そうでね」
 それでというのだ。
「いつも気をつけてたよ」
「紀伊の国人達と飲んでる時はな」
「そうだったよ」
「特にわし等みたいな連中はな」
「辛かったね」
「表で飲む時はな」
 その時はとだ、また言っ耕平だった。
「その辺り気をつけんとな」
「今のあたし達には立場はある」
「そのことをわかってないとな」
「だから飲んでもね」
「礼儀とか考えてな」
「砕けない様にしてるよ」
 国人達つまり仲間以外の者達と飲んでる時はというのだ。
「本当にね」
「それがぜよ」
 今度は苦笑いでだった、当季は言った。
「わし等みたいなもんには辛い」
「どうにもね」
「けれどな」
 それでもとだ、当季は桜子に話した。 
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