ある晴れた日に
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420部分:夏のそよ風吹く上をその三
夏のそよ風吹く上をその三
「あまり成績よかねえだろ」
「そうだろ」
「一応赤点はないわよ」
「そうよ」
「しっかりとやってるわよ」
五人と二人は釈明するように述べた。
「落第はしないから」
「絶対にね」
「それも安橋か竹林に教えてもらったんじゃねえのかよ」
「そもそもいつも遊んでるじゃねえか」
「だよな。酒にカラオケに海水浴に祭ってな」
確かに遊んでばかりである。しかも未成年だというのに酒ばかり飲んでいるのである。これで勉強しているとはとても思えないのも当然だった。
「遊んでばっかなのによ」
「何時勉強してるんだ?」
「とりあえず時間見つけて」
「一応最低限はやってるわよ」
こう答えはする彼女達だった。
「授業だって寝ないようにしてるし」
「ちゃんと聞いてるわよ」
「大体おめえ等だってそうじゃねえかよ」
春華は口を尖らせて男組に抗議してきた。
「勉強してんのかよ。今だって宿題とかよ」
「一応やってるぜ」
「俺なんかもう全部終わらせたぜ」
「俺もな」
男組はこの辺りはしっかりしているようである。
「ちゃんと終わらせたからよ」
「そっちとは違うんだよ」
「俺はもうこいつのを全部写したぜ」
野本は誇らしげな顔で竹山の肩に手をやって言うのだった。
「だからもう何の心配もいらないぜ」
「いや、それ駄目でしょ」
「それはねえだろ」
しかし今の彼の発言には皆が一斉に突っ込みを入れたのだった。
「写すのは幾ら何でもよ」
「インチキだろ」
「わからねえから仕方ないだろ」
彼は皆のその一斉の突っ込みに対して腕を組んで居直るのだった。
「一問もよ」
「御前そんなんで進級できるのかよ」
「留年しないの?本当に」
「一応追試受けまくってるしな」
一学期の時点でそうなのだった。
「補習だって何か俺だけ特別メニューだしよ」
「やれやれ、こりゃ大変だわ」
「先生達が」
野本は全く同情されないのだった。彼等が同情するのはその特別メニューの補習を組んで彼の相手をする先生達に対してなのだった。
「そういえば江夏先生と田淵先生どうしてるかな」
「さあ」
「元気でやってるんじゃないの?」
久し振りに思い出したといった感じの彼等だった。
「とりあえずは」
「ああ、時々白鯨に来てるわよ」
「この店にも来るぜ」
ここで明日夢と佐々が皆に言ってきた。
「大体五日に一回位でね」
「いつも飲む放題で二人で相当飲んでるな」
「げっ、この店にも来るのかよ」
「そりゃまずいわね」
皆先生達もこの猛虎堂に来ると聞いて困った顔になった。
「酒はまあ誤魔化せるし大目に見てもらえるけれどよ」
「やっぱり遅くまで騒いでいるとね」
「まずいからな」
「だから帰る時間は気をつけろよ」
佐々もそこを釘刺すのだった。
「こっちも遅くまで店に出てたら言われたりするからな」
「私も言われるしね」
この辺りの事情は明日夢も同じなのだった。
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