マイ「艦これ」「みほ3ん」
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EX回:第76話<孤独な戦場>
前書き
司令や艦娘たちは落ち込んでしまい食事どころではない気持ちになった。しかし全く意に介さない艦娘も居た。
「分かってンだ……そこはキチンと理解してやれ」
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マイ「艦これ」「みほちん」(第3部)
EX回:第76話(改1.3)<孤独な戦場>
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さっき五月雨に『食事の換えは要らない』と言ったが実際、私は、すっかり食欲をなくしてしまった。
周りに居る美保の艦娘たちも私と同様で、かなり衝撃を受けたようだ。特に金剛姉妹や日向、龍田さんや赤城さん等の演習参加組は心配だ。
(これで3人目の試作型艦娘の『機能停止』を目の当たりにしたわけだからな)
……ところが、どういうわけか夕立だけは意外に平然としていた。だから彼女だけが今の時間、呉や美保から来た潜水艦娘たちとニコニコして話をしていた。
(夕立に潜水艦たち……あいつらは鈍感なのか? 何なのか)
果たして彼女が実際どの程度の衝撃を受けたのか? いまいち分からないな。
(だが、どうせならまったく衝撃を受けていないほうが、いくらか助かる)
これは乱暴な言い方だが駆逐艦は精神的な余裕が少ない印象だから、むしろ下手に反応されると厄介だと思うからだ。
そんな夕立よりも青葉さんとか夕張さんの方が今回のダメージが大きそうだ。
(どちらも割と客観的な立場にいることが多いけどね)
考えたら青葉さんは報道関係の記者だ。つまり、さまざまな事件に遭遇して、それを客観的に報道するから精神的な強さが必要だ。
(それでも現場に居ながら『最近はいろいろ心に感じてしまう』……のだと砂浜で自分の気持ちを吐露してたよな)
そんな彼女の心に、また一筋の傷を付けたのではないか? ちょっと心配なのだ。
夕張さんは技術的な内容には詳しいから、また別の観点からも試作型の艦娘について感じる世界が深いだろう。
(普段から、あまり多く話さないから彼女も、ちょっと心配だ)
艦娘たちは少しずつ食堂から退出して行く。重い空気が通夜の席みたいで、やりきれない。
ところが私の悶々とした心情とは裏腹に目の前のブルネイ司令はガツガツと夕食を食べていた。逆に羨ましさすら覚える。
「良いよなぁ、その食べっぷり」
私の呆れたような表情に彼は言った。
「『あんなことがあって、よく食べられるな』 ……って思ってンだろ?」
「図星だ。スマン」
恐縮する私とは裏腹に少し笑顔になったブルネイ司令。
「別に良いさ。俺だって……」
彼は窓の外に視線を移して続けた。
「こんな冷静っていうか。割り切れる自分が怖い」
「ああ……」
お前の気持ち、今はよく分かる。
再び視線を私に向けたブルネイ司令。
「そう、お前も分かるだろう? 軍隊の指揮官……司令という立場だと人(艦娘)の生死ぐらいでは、いちいち感情を動かしてられない」
「……」
「毎回、感傷的になってたら、こっちが倒れるからな。『心の防護壁』……って。そんな自分も、どんどん国家の『戦闘機械』になりつつあるんだよ」
彼はふと悲しい表情を見せた。私は静かに頷く。
「そうだな」
それは否定しない。私も彼も同じ気持ちなのだ。
「正直怖いけどな……」
視線を落としたブルネイ司令は再び押し込むように食べ始める。
「戦場の狂気か」
指揮官になると誰もが直面する気持ちだ。江田島の任務過程でも、そういう授業があった気がした。
(私だって軍隊に居る以上、そして生き延びて居れば……いずれは、そうなっていくに違いない)
鳥肌が立つ想いだ。
そのとき向こうから『キャッキャ』と笑いながら食事をしているの潜水艦娘たちの姿が目に入った。さきの夕立も一緒に笑っている。
それを見ながら私は呟いた。
「でも艦娘たちに特攻だけは、させたくない」
手を止めたブルネイ司令は言う。
「あのイ401たちも、そうだ。決して今日の事件に対して鈍感なわけじゃない」
「え?」
驚いた私に彼は遠い目をして続ける。
「俺も潜水艦……実物も艦娘も扱ったことあるけどな。アレってのは独特なんだ」
「……」
「潜ってしまえば艦の外は真っ暗で高気圧で脱出も出来ん。その密閉された空間で『いつ何処から突然攻撃されるかも知れない』……っていう不安と孤独。それを耐え抜いて来るんだぞ」
彼は一息ついて諭すように言った。
「ましてや艦娘の潜水艦だとな、それを直接肌で感じンだよ。分かるか?」
私は少し硬直した。
「スマン……潜水艦は経験ないし。美保には潜水艦娘も少なくて」
ちょっと釈明をした。彼は気に留めずに続けた。
「ああ、そうらしいな。だったら、この際、覚えとけよ」
ブルネイ司令は噛み締めるように、そして一気に言った。
「潜水艦は単独行動が多い。そして特殊な隠密行動も少なくない。それでいて通信は届きにくい。現場の状況が目まぐるしく変化する中で自分で判断することを迫られるんだ。だから軍隊でも結果的に扱いにくくなる連中が多いが。でも彼女たちなりに必死に全力を尽くてんだゾ。あいつらだって決して他人事とか無視とか好きで反抗してるわけじゃない。分かってンだよ……だから、そこんトコはキチンと理解してやれ」
「あ、ああ……」
その気迫に圧倒されたが彼自身も自分に言い聞かせている感じだ。、
私は再び向こうの席を見た。その癖のある潜水艦娘たちと、すんなり打ち解けられる夕立か。そんな彼女たちを見ていて私は気付いた。
(あいつ(夕立)って実は全部分かって敢えて知らないフリ、傷ついてないフリをしているのか?)
そういえば彼女は私の実家の墓参もしてくれた『仲』だったな。
そう思った瞬間、夕立がこっちを向いた。
「ぽい?」
(相変わらず感度は高いな、この娘は)
頭のリボンも揺れてるし……ま、お前はやっぱ『夕立』だ。そんな彼女を見た私は思わず軽く敬礼をした。
一瞬不思議そうな顔をした夕立だったが、
「ぽい!」
直ぐに敬礼を返してきた。とても真面目な顔……あ、でも少しだけ微笑んでるか。
(やっぱり夕立は、すべて悟っているのだろうか?)
そんな彼女に気付いた他の潜水艦娘たちも揃って敬礼をしてくれた。お互い真面目な顔で座ったままの敬礼……妙な光景だな。
それからは何事も無かったように敬礼を直って互いの机に向かう。妙ではあったが重苦しい食堂内が少し和んだ雰囲気に変わった。
「不思議だよな、彼女たちって」
「そうだな」
(ああ、やっぱり彼女たちは、どんな事があっても変わらない『何か』を持っているんだ)
そういう『土台』となる不動の艦娘たちが居ること。それが艦娘を擁する鎮守府として重要なことだろう。
(少しだけ……ホンのチョッとだけでも彼女たちと通じ合えたのだろうか?)
素直に、そんな想いが湧く。
軍隊は普段の生活の中から少しずつ互いの心の距離を縮め信頼感を増していく……それは艦娘であっても同じことなのだ。
そんな私たちをブルネイ司令は微笑みながら見守っていた。
以下魔除け
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後書き
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※これは「艦これ」の二次創作です。
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PS:「みほ3ん」とは
「美保鎮守府:第三部」の略称です。
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