銀河転生伝説
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第10話 その要塞砲の名は
<アドルフ>
「あんた、触ったでしょ!」
「は?」
「この人痴漢です!」
「ちょっと君、こっちに来なさい!」
突然だが、痴漢に間違われて逮捕された(泣)
俺はそんなに怪しい顔なのかと、ちょっと凹む。
だって、イケメンだったら絶対犯人扱いされないだろ?
……現実なんてこんなもんだよね。
まあ、臨検されたときに、鞄の中にエロゲや同人誌が入ってたのを見つかったのも疑いが強まった原因の一つだろうけど。
前世の日本でなら、ここでいくら俺が容疑を否定した所で、俺を犯人と決めつけて行われる取り調べや中々終わらない裁判地獄が待っていることだろう。
そして、仮に勝訴になっても時間的・金銭的損失は計り知れない。
当時の日本は事実上、女尊男卑だったからな。
男女平等とか大声で叫んでいるやつらも、そこらへん何故かスルーだし。
だが、ここは貴族社会の銀河帝国。
しかも俺は門閥貴族の筆頭であるハプスブルク公爵な上、ここは俺の領地であるハプスブルク領。
故に、俺に敗北は無かった。
・・・・・
警察も訴えた18歳ぐらいの少女も俺がハプスブルク公爵だと知ると、めっちゃビビってた。
女性の方は半泣きだし。
俺は領民から親しまれている領主だと自負しているが、必要があれば苛烈なことも辞さない。
勝手な権利ばかり主張するカスや自由と無秩序の区別もつかんバカ、テロリストなどを容赦なく友愛という名の粛清をしてるからな。
まあ、今回は少女と警察の双方に厳重注意だけで許してやるか。
少女の方はカワイイしな(※注 ブスだったら許さなかった可能性が高い……というか間違いなく許さなかった)。
さて、早く家に帰って同志から貰った同人誌『実録、触手は見た! 秘密の花園の奥の奥v』『〜あんっ、それ以上はお許しを〜公爵様と私の秘密のGO☆GO♪』を見なければ。
* * *
現在、ハプスブルク領ではイゼルローン要塞やガイエスブルグ要塞に匹敵する大要塞――ハプスブルク要塞を建設中だ。
それほどの要塞なのだから、当然主砲も強力なものを搭載する。
が、ここで問題になったのは主砲名だ。
イゼルローン要塞の主砲はトールハンマー、ガイエスブルグ要塞の主砲はガイエスハーケンと、どちらもカッコいい主砲名が付いている。
ならばこちらもそれ相応の名を付けなければ……ということで行われたハプスブルク要塞の主砲名を決める領民投票。
結果は、50億票を獲得した『スターライトブレイカー』と命名されることが決定。
50億票って……ハプスブルク領の人口の半分じゃねぇか!
うちの領どんだけ染まってんだよw
もはや色々と手遅れだな、オイwww
まあいいか。
スターライトブレイカー……いいじゃん。
敵艦隊を一撃で粉砕するイメージが沸いてくるぜ。
いっそのこと、要塞名を『高町な〇は』にでも改名するか?
「公爵閣下」
「ん、どうした?」
「リーシャ様が無事に女の子をご出産されたとのことです」
「おお、これは目出度い! さっそく見に行かねば。ああ、分かっていると思うがこのことはくれぐれも内密にな」
「はっ、承知しております」
「よし、善は急げだ。速く車を持ってこい!」
遂に俺に子供が出来たか。
都合上、認知することは出来ないが、嬉しいことに変わりはない。
なにしろ前世では童貞のままだったからな。
つまり、これが初めての子供だ。
名前は何にしようか……。
リーシャには迷惑をかけることになるから、リーシャに決めさせるのも良いかもしれん。
とにかく、早く帰らねば!
* * *
帝国暦487年に入り、ラインハルトは正式にローエングラム伯爵家を相続した。
2月、ラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将は分艦隊司令官にメルカッツ大将、シュターデン中将、フォーゲル中将、ファーレンハイト少将、エルラッハ少将の五人を据えた約20000隻の艦隊でアスターテへと繰り出す。
一方の同盟軍は、パエッタ中将の第二艦隊、パストーレ中将の第四艦隊、ムーア中将の第六艦隊と3個艦隊40000隻。
同盟軍は敵に倍する数と地の利を以って帝国軍を包囲殲滅せんとしたが、逆に各個撃破の好機と見たラインハルトは艦隊を前進させ、ファーレンハイト艦隊を先鋒にして正面のパストーレ艦隊12000隻へ先制攻撃を仕掛けた。
第二艦隊の次席幕僚を務めていたヤン・ウェンリー准将は、第六艦隊と合流して戦力の集中を図るべきと第二艦隊司令官パエッタ中将に進言したが、第四艦隊を見殺しにするという前提で作戦が成り立っているためパエッタは進言を却下し、第四艦隊の救援に向う。
第四艦隊を壊滅させたラインハルト艦隊は時計方向に進撃し、第六艦隊を斜め後方より攻撃を開始した。
第六艦隊司令官のムーア中将は、この場合最もやってはいけないといわれる反転迎撃で応戦しようと全艦をその場で回頭させる。
その結果、全艦が無防備な側面をさらけ出した状態で砲撃を受けて第六艦隊は壊滅。
旗艦ペルガモンも撃沈され、ムーア中将は参謀のジャン・ロベール・ラップ少佐と共に戦死した。
そして、ラインハルト艦隊は残った第二艦隊へと向かう。
「全艦隊、近接戦闘準備」
帝国軍の艦艇よりワルキューレが吐き出され、第二艦隊目掛けて突っ込んでいく。
同時に、ラインハルト艦隊は砲撃を開始し第二艦隊の艦艇が火を吹きながら撃沈する。
「全艦隊応戦、砲門開け!」
第二艦隊も応戦するが時既に遅く、味方艦が次々と撃沈される。
直後、第二艦隊旗艦パトロクロスの艦橋が被弾。
司令官のパエッタ中将が重傷を負い、次席幕僚のヤン・ウェンリー准将が指揮権を引き継いでどうにか態勢を立て直す。
予想以上に抵抗する第二艦隊に業を煮やしたラインハルトは紡錘陣形をとって中央突破を図り、戦いを一気に決めようとした。
だが、予め中央突破を読んでいたヤン准将はこれを逆手にとって艦隊を左右二手に分け、ラインハルト艦隊の後ろに回る。
これに対し、ラインハルトは前進しつつ艦隊を時計回りに第二艦隊のさらに後ろを突かせる。
この時、OVAでは命令を無視して反転迎撃を行ったエルラッハ少将が戦死するのだが、再教育が行われた結果、エルラッハは(フォーゲルも)まともな軍人になっていたので、そのような事は起きなかった。
数時間後、両軍合わせた陣形はリング状になっていた。
消耗戦となったことで、これ以上の戦闘が無意味と判断したラインハルトは撤退を開始し、ヤンの方もそれに呼吸を合わせて撤退した。
アスターテ会戦の戦闘に動員された将兵は、帝国軍245万、同盟軍406万。
しかし戦死者数は帝国軍の15万に対し、同盟軍は実に10倍に及ぶ150万を数えた。
宇宙暦796年/帝国暦487年―――アスターテ会戦は終了した。
そして、本来なら死んだ筈のエルラッハが生き残った。
これが後にどういう影響を及ぼすか……この時点ではまだ誰にも分からない。
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