『賢者の孫』の二次創作 カート=フォン=リッツバーグの新たなる歩み
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シュヴァルツモルゲン魔導研究所
前書き
各所にて話題沸騰中の人気アニメ『賢者の孫』の二次創作です。
ぶっ飛ばせ常識を~♪
アールスハイド高等魔法学院の入学試験が近づくなか、カート=フォン=リッツバーグは懊悩していた。
試験に対してプレッシャーを感じているわけではない。
「貴族たるもの力無き民を守らなくてはならない」
「力無き正義は無力であり、正義なき力は暴力だ」
「大いなる力には大いなる責任がともなう」
リッツバーグ伯爵家の嫡男として幼い頃からそのような薫陶を父親から受けて勉学に励んできたカートだ。いかなる難問も解いて入学できる自信があった。
煩悶の原因はひとりの少女。
シシリー=フォン=クロード。ターコイズブルーの瞳と髪をした清楚で可憐な乙女。
彼とおなじく王国貴族。クロード子爵家の三女の存在がカートの心を掻き乱していた。
「なぜだ! なぜ彼女は俺を拒む! ……女のくせに、女のくせにこの俺に逆らうだと? 女なぞは男の側で愛想を振り撒いていればいいんだ。俺の側に侍らせてやろうと言うのに、無下にしやがって……」
自分の思い通りにならないことに対する怒り。
自分の想いに応えない相手に対する憎悪。
負の感情が煮えたぎる毒のマグマとなり、カートの心中を蝕んでいた。
「なにやらふさぎ込んでいるようだね」
「シュトローム先生!」
遮光眼鏡のような眼帯をかけた紳士が優しく声をかける。魅惑的なバリトンボイスは聞く者を陶酔させる、男性的な魅力にあふれていた。
オリバー=シュトローム。魔法学院の講師で、カートの家庭教師でもある人物だ。
「君には素晴らしい魔法の才能がある。そんな君が暗い表情を浮かべるなんて悲しいな」
「先生……」
(強大な力があれば、それを慕って人が集まる。金も集まる。手に入らぬものはなにもない。そう、世界すらも!)
「え?」
「よかったら気分転換にでも私が懇意にしている研究所に見学に来ないかい? 君のお父上をはじめ、多くの貴族たちが出資している施設で、君のような優秀な学徒なら得るものがあるだろう」
(力が弱ければ人も金も集わず裏切られる。強大な力が必要だ!)
脳裏をよぎる奇妙な声。
ここ最近、そのような幻聴が聞こえるようになっていた。
特に、シュトローム先生と一緒にいる時は顕著に聞こえる。
「そうだ……、力が足りないからシシリーは俺になびかない。力があればあんな女なんて……」
「ん? どうしたんだい? カート君」
「あ、はいっ。ぜひ見学させてください!」
だが今のカートにとって、そんな声など些末なことであった。
彼はふたつ返事でシュトロームの誘いに応じた。
シュヴァルツモルゲン魔導研究所。
転移魔法を応用した召喚魔法や魔獣に関する研究をしている。
シュトロームはカートのために〝専用〟の部屋を用意し、自由に使えるよう手配してくれた。
「俺は特別なんだ、他の生徒とは違うんだ!」
選民思想をくすぐられ、気分を良くしたカートはそれから連日のように研究所に通った。
一三号実験室。魔力が外に漏れないように結界の施された魔方陣の前に操作盤が置かれ、様々な試みができるようになっている。
生物を濃密な魔力に曝して、観察する行為に没頭していた。
人為的に魔物を作る禁断の業。
「KISYAAAAッ!」
「は、ハハハ! 凄いぞ! これが魔物か!」
ただの鼠が犬ほどの大きさになり、毒のしたたる牙を剥き出して威嚇する姿に興奮を隠せないカート。その瞳はうっすらと朱がかかり、赤く染まりつつあった――。
「虫や小動物を魔物化させるのにも飽きてきたな。もう少し大きい動物でも調達してみるか……ん?」
もはや日課となった研究所通い。今日はどんなことをしようかと操作盤をいじっていたカートは魔方陣の異常を示す警告文に気づいた。
『エラーコード●●●―XXX。指定以外の場所にアクセスしようとしています。この表示が出た場合は操作をただちに中断し――』
どうやら設定にない異界と召喚門が繋がりつつあるようだ。
「そういえば、召喚魔法についてはいじってなかったな。いったいどこと繋がりそうなんだ、精霊界か? 魔界か? ふふん、サラマンダーでも呼び出して魔物と戦わせてみるか」
警告文を無視して勝手に操作を続けるカート。
「どうすれば見えるようになるんだ……。こうか? こう? ああもう分かりづらいなぁ、もう!」
やがて〝向こう〟側の世界が魔方陣の上に浮かび上がった。
「なんだ、これは……」
後書き
未知の世界へ行こう~♪
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