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レーヴァティン

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第百七話 善政が招くものその六

「世襲制の国があるな」
「民主主義でも人民でもないな」
「あの国はな」
「その世襲制の元首だけが太ってな」
「民はあの通りだ」
 ここでも皆わかった。
「餓えて痩せ細ってだ」
「どんどん飢え死にしていっているな」
「そんな状況だ」
「そしてそんな状況にする様な政ならな」
「国を救えるか」
「問題外だ」
「そしてこの浮島この世界なら」
 このことをこの世界にあてはめると、というのだ。
「軍隊に何を持たせようともな」
「世界を救える筈がない」
「そういうことだ」
「この世界に来てよくわかったでござる」
 智は牡蠣を焼いたものを食べつつ述べた。
「真の意味で強い軍勢を持つなら」
「それならだな」
「まず国を豊かにする」
「それからだ」
「確かな兵糧や武具を揃えて」
「そしてだ」
 しっかりと戦る様にしてというのだ。
「そのうえでだ」
「ようやく確かな戦が出来るでござる」
「そして多くの兵もな」
「豊かな国でないとでござる」
「揃えられない」
「そうでござる」
「誰もが餓えていては戦えない」
 英雄も言い切った。
「絶対にな」
「そのことがよくわかったごでざる」
「俺もだ、ではな」
「これからもでござるな」
「まず民を食わす」
 確かな政を行ってというのだ。
「それも常にふんだんにな」
「そうしてでござるな」
「真の意味で強くなりな」
 そのうえでというのだ。
「この浮島を統一してな」
「そして海の魔神をでござるな」
「倒す」
 英雄は自分の究極の目的についても述べた。
「そうする」
「ならな」
「それならでござる」
「まず国をだな」
「豊かにするでござる」
 それがいいというのだ。
「必ず」
「そうだな、では」
「この国を治めるでござる」
「豊かにしよう」
 英雄も言ってだ、そしてだった。
 英雄は仲間達と共に牡蠣と酒を楽しんだ、食事が終わった時には英雄はかなり飲んでいたがそれでもだった。
 仲間達にだ、今度はこんなことを言った。
「さて、少し休んでだ」
「今日もっちゃな」
「政もしないしな」
 愛実に即座に答えた。
「ならな」
「夜っちゃか」
「そうだ」
「やれやれっちゃな」
 呆れた苦笑いになってだ、愛実は英雄の返事に応えた。
「そっちもお盛んっちゃな」
「悪いか」
「人のそうしたことに口出しする趣味はないっちゃ」
 愛実は英雄に酔った顔で答えた。
「うちもこっちの世界では旦那が出来たっちゃしな」
「何っ!?」
 英雄は愛実の今の言葉に思わず目を向けた、いつもの冷徹とさえ思える感情を出していない調子が今は違っていた。 
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