レーヴァティン
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第百七話 善政が招くものその二
「それではこれからも確か政を行ってだ」
「そしてたいな」
「降る者は大事にする」
このことも忘れないというのだ。
「特に民はな」
「何よりもたいな」
「大事にする、ではな」
こうしたことを話してだ、そしてだった。
英雄は今は政に専念し自分達から降って来る国人達は拒むことなく受け入れていっていた、そうしつつ。
馳走も楽しんだ、英雄は今は仲間達と共に牡蠣を食べていた、生牡蠣だけでなく焼いたものや鍋もある。
その牡蠣を食べつつだ、彼は言った。
「牡蠣を幾らでも食べられることはな」
「いいことじゃな」
「そうだ、あたると怖いが」
それでもとだ、英雄は当季に応えて話した。
「それでもな」
「美味いしのう」
「身体にもいい」
「栄耀の塊ぜよ」
当季も食べている、生牡蠣にぽん酢をかけてそれを箸で食べそうして酒も飲んでそのうえで楽しんでいる。
「だからぜよ」
「食うべきだな」
「そうぜよ、ただ」
「あたることはな」
「その危険はあるぜよ」
牡蠣にはだ。
「だから生だとぜよ」
「新鮮なものでな」
「火を通すならぜよ」
そうして食べるならというのだ。
「じっくりとぜよ」
「火を通してな」
「食べるべきぜよ」
「その通りだな」
「だからね」
奈央は鍋の牡蠣を食べつつ言った。
「火を通す場合はもう」
「徹底的にだ」
「火を通してから食べる」
「そうしないと駄目だ」
「そうなると」
奈央は英雄の話を聞いて述べた。
「泉鏡花さんみたいに」
「文豪のか」
「ええ、あの人みたいにね」
「徹底的に火を通すか」
「そうして食べるべきね」
「確かあの作家は」
その泉鏡花についてだ、英雄は飲みつつ述べた。
「口にするものは全て熱消毒していたな」
「お水もね」
「酒もな」
英雄は自分の杯の中にあるその酒も見た、奇麗な清酒で一目では水と見間違うばかりである。ただし香りが違う。
「熱燗だったな」
「沸騰するまで火を通したね」
「そんなことをしたら」
そこまで火を通したならとだ、今度は桜子が言った。
「味が落ちないかい?」
「アルコールは飛ぶな」
「沸騰するまで沸かしたらね」
「それもぐらぐらするまでだ」
沸騰してその為にというのだ。
「火を通してだ」
「飲んでたのかい」
「熱消毒の為にな」
「それはまた徹底してるね」
「だがそれによってだ」
口にするものを徹底的に熱消毒してだ。
「泉鏡花は確かにだ」
「安全に食べられていたんだね」
「そうだった、ただな」
「ただ?」
「変わった食い方、飲み方だったことはだ」
それはと言うのだった、英雄にしても。
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