ドリトル先生と姫路城のお姫様
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第二幕その七
「とかく極端な潔癖症だったから」
「それでなんだ」
「豆府と書いたんだ」
「成程ね」
「それとジップ達はどうしてかって言ってたけれど」
その皆も見つつさらにお話するのでした。
「狂犬病があるね」
「あっ、それだね」
「僕達にはないけれど」
「昔は日本にも狂犬病があったんだ」
「言われてみれば」
「そうだったわ」
「それを恐れてね」
その為にというのです。
「泉鏡花は犬嫌いだったんだ」
「そうだったんだ」
「言われてわかったわ」
「イスラム教と同じ理由ね」
「狂犬病を怖がっていたの」
「昔の日本にはまだあったからね」
狂犬病という恐ろしい病気がです。
「イスラム教で何故犬の唾液が不浄か」
「狂犬病になるからね」
王子が言ってきました。
「だからだね」
「うん、それでコーランでも定められているんだ」
犬の唾液が不浄とです。
「豚肉はあたりやすいしね」
「だからだね」
「あとね」
「あと?」
「湯豆腐だけでなくとにかくね」
「熱したものを食べていたんだ」
「鍋ものでも完全に火を通して」
そうして食べててというのです。
「お酒も沸騰させるまで火を通してね」
「そこまでした熱燗を飲んでいたんだ」
「そうだったんだ」
「そのお酒を泉燗と呼んでいた位だよ」
「そこまで有名だったんだ」
「文壇ではね」
その様にというのです。
「そうも言われていた位なんだ」
「そのお話面白いね」
「あと潔癖症のあまり蛇や蛙みたいな変わった外見の生きものは嫌っていたし」
「蛙とか?」
「海老もね、食べることもしなかったよ」
「海老凄く美味しいのに」
王子はそう聞いて残念に思いました。
「あと蛙も」
「僕もそう思うけれどね」
「泉鏡花は食べなかったんだ」
「そうだったんだよ」
「そこまでいくと凄いね」
「そして畳に手をつけてお辞儀しなかったしね」
日本ではそれが礼儀でもです。
「手の甲をつけてだったんだ」
「それも潔癖症だからかな」
「畳が汚いと思ってね」
「そこまでいくと極端だね」
「手に持って食べるものも持った部分は食べなかったしね」
「お寿司とかお握りとかも」
王子はこのことには流石に驚きました。
「じゃあお箸で食べるとか」
「そうだったかもね」
「ううん、そこまでいくと奇行かな」
「だから変わった人だともね」
「言われていたんだ」
「そうだよ、当時からね」
生前からというのです。
「そのことでも有名だったんだ」
「やっぱりそうなんだね」
「そして師事する人に凄い崇拝の念を抱いていたんだ」
「確かあの人のお師匠さんは」
「尾崎紅葉だよ」
先生はもう一人有名な人をお話に出しました。
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