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ある晴れた日に

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397部分:目を閉じてその二十四


目を閉じてその二十四

「いいわ」
「いいんだな」
「ええ。それで御願い」
 そしてここでも願うのだった。
「名前で呼んで。これからは」
「ああ。じゃあ未晴」
「ええ。正道君」
 顔を見合わせ微笑み合ってそれぞれの名前を呼ぶ。
「家までな。送らせてもらうな」
「御願いね」
 微笑み合ったうえでの言葉が続けられる。
「それでね」
「ああ、こちらこそな」
 こうして正道は未晴を彼女の家まで送ることになった。駅に着くと未晴の案内で降りてその駅を出る。また暗い夜道を二人で歩くことになった。
 今度の夜道はスタープラチナのある商店街とは違っていた。街灯はあるがその左右は静かな家ばかりの。至って静かな夜の住宅地であった。二人はその夜道を歩いていた。
 夜道を歩きながら未晴は。正道に対して言ってきたのだった。
「この辺りはね」
「ずっとここで暮らしてきたんだよな、おたくが」
「そうよ」
 暗い夜道の中でも未晴の顔が微笑んでいるのがわかった。
「ここでね。ずっとね」
「あの五人と一緒にか」
「すぐ近くに幼稚園があるわ」
 ふとこんなことも言う未晴だった。
「それに私達が通っていた小学校もね」
「本当にこの辺りで暮らしていたんだな」
「そうなの。ずっとね」
 懐かしさも感じられる今の未晴の言葉だった。
「暮らしてたわ。この道の辺りも六人で遊んだことがあったし」
「あれか。道路にチョークで落書きしたり」
「ええ」
「そういうことしてたんだな」
「他にも色々なことして遊んだけれど」
 未晴の目が懐かしむものになっていた。
「ゴム跳びやりりあんもしたし」
「女の子の遊びもだな」
「そうよ。色々したわ」
 目に浮かんでいる郷愁がさらに深いものになっていた。
「いつも六人でね。遊んだのよ」
「本当におたくにとっては思い出の場所なんだな」
 そのことが正道にもわかった。わかったうえでさらに未晴への興味を抱いたのだ。興味を抱くとそれがさらに深いものになるのが自分でもわかる彼だった。
「この道は」
「この道だけじゃなくて街全体がね」
 そうだというのだ。
「本当にね。いい場所よ」
「思い出の場所だからか」
「そうなの。子供の頃からずっといて」
 郷愁がここでも出て来ていた。
「今もいて。これからもかしら」
「これからもか」
「これからのことはわからないけれど」
 未晴は自然に上を見上げていた。酔っていて顔は赤いがそれでもだった。その身上げる目は遠くてそれでいて近いものを見ている目だった。
「それでもね」
「それでも?」
「六人で見ていきたいし」
 また咲達のことを言うのだった。彼女達の絆がどれだけ深くて強いものなのか、正道はこのことも知るのだった。
 しかしそれだけではなかった。未晴はさらに言ってきた。
「それに」
「それに?」
「もう一人と一緒に」
「そのもう一人は」
「正道君よ」
 正道に顔を向けてにこりと笑ってみせてきた。
「正道君とね。一緒にね」
「俺とか」
「咲達はお友達よ」
 彼女達についてはそうなのだった。
 
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