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戦国異伝供書

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第四十三話 関東のことその六

「策を用いてな」
「そのうえで、ですな」
「攻めるとしよう」
 砥石城にはというのだ。
「外での戦の後でな」
「そうされますな」
「うむ、ではまずはじゃ」
 さらにとだ、晴信は話した。
「千曲川をじゃ」
「渡ることをですな」
「目指そう」
「川を挟んで戦うことは」
 穴山が晴信に問うた。
「それは」
「そして川向うの敵を破ってか」
「そうして入るか」
「逆にじゃな」
「敵にあえて川を渡らせ」
 そうしてとだ、穴山は晴信にさらに話した。
「そこからです」
「川を背にした敵をな」
「叩くということは」
「それもあるがな」
「それよりもですか」
「わしとしてはじゃ」
 晴信は自分の考えを述べた。
「ここはじゃ」
「まずはですか」
「川を渡ってじゃ」
「背水の陣ですな」
「あえてそれを行ってな」
「村上家と戦いますか」
「数はこちらの方が多いが」
 しかしと言うのだった。
「敵は強い」
「だからですな」
「ここは川を渡り最初に難儀を通ってじゃ」
 そのうえでというのだ。
「軍勢をあえて死地に送ってな」
「そのうえで死ぬ気で戦い」
「村上家を破る、そしてじゃ」
「勝ったその勢いで」
「葛尾の城もじゃ」
 村上家の本城であるこの城もというのだ。
「攻め落とすのじゃ」
「そしてその後で」
「いや、この度はこれでよい」
 晴信はさらに攻めるかという穴山の問いに落ち着いた声で返した。
「おそらく外の戦と城攻めでじゃ」
「兵は疲れているからですか」
「そこでよい、求めるものは得ても」
「欲を張るとですか」
「かえって駄目じゃ、だからな」
「砥石の城を攻めるにしても」
「次じゃ」
 次に兵を動かす時だというのだ。
「兵達を休めてな」
「それからですか」
「また攻めてな」
 そのうえでというのだ。
「砥石の城を攻め落とし」
「そのうえで」
「信濃の北を手に入れる」
「ですがお館様」 
 重臣の一人多田三八郎が言ってきた。
「ここは一気にか」
「へい、兵をその都度出すより」
「この度の出陣でじゃな」
「終わらせた方がいいのでは」
「それも一理ある」
 晴信は多田の考えをまずはよしとした。 
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