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ある晴れた日に

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386部分:目を閉じてその十三


目を閉じてその十三

 だが女組はその彼の歌を聴かずに。浴衣の話に熱中しているのであった。
「パパが買ってくれたのあるわよ」
「あんたまたパパなのね」
 明日夢は咲のにこにことした言葉に思わず突っ込みを入れてしまった。
「何かいつもじゃないの?パパに買ってもらうのって」
「だっていつも買ってくれるから」
「だからなの」
「そうよ。パパもお兄ちゃんも咲には凄く優しいのよ」
「っていうか甘やかされてるでしょ」
 茜は結構冷めた目で咲の言葉を聞いていた。
「あんたおとうさんとお兄さんに」
「ああ、やっぱりそう思うわよね」
「それはね」
 凛と静華が今の茜の言葉に同時に突っ込みを入れた。
「まあ実際子供の頃から滅茶苦茶甘く育てられてるのよ」
「おかげでこんなふうになっちゃって」
「こんなふうにはないじゃない」
 咲は今の二人の言葉にはむっとした顔で返した。
「パパとお兄ちゃんが優しいのは事実でしょ」
「まあねえ」
「優し過ぎるけれど」
 二人の言葉は実に冷めたものであった。この辺りは茜と同じようになっている。そうしてその目で咲を見ながら自分達のことも言うのだった。
「私達も浴衣あるから」
「それ着ていくわ」
「それでどんな浴衣なの?」
 明日夢は浴衣自体について尋ねた。
「やっぱり虎とか?」
「あんたと違うから」
「それはないから」
 明日夢の趣味についても言う二人であった。
「あんたどうせあれでしょ?星柄でしょ」
「違うの?」
「それの何処が悪いのよ」
 やはりそうなのであった。
「星柄最高じゃない」
「やれやれ。やっぱりね」
「何処にそんな浴衣あるのよ」
 二人もそれを聞いて呆れる限りであった。呆れたその顔で首を左右に振ったりしているのが何処となくユーモラスな様子になっている。
「まあ少年らしいけれどね」
「それもね」
「それでいいならそれでいいじゃない。それでよ」
「それで?」
「未晴も持ってるわよね」
 明日夢はここで未晴に対しても声をかけるのだった。
「未晴も。やっぱり浴衣持ってるわよね」
「ええ、持ってるわよ」
 未晴も明日夢の問いにはっきりと答えるのだった。
「ちゃんとね」
「そう。だったらお祭の時御願いね」
 明日夢はにこりと笑ってまた彼女に言ってきた。
「浴衣でね」
「わかったわ。じゃあ白でいいわよね」
「あれっ、白い浴衣なの」
 明日夢は白い浴衣と聞いて目を少ししばたかせた。
「白い浴衣ってちょっとまずくない?」
「まずいって?」
「ええと。まあね」
 明日夢はここからさらに言う前に部屋を見回した。そのうえで男組を見るのだった。どうやら彼等に対して警戒しているようである。
「あれなのよ。まあこっそり言いたいけれど」
「どうしたの?それで」
「白だと透けて見えない?」
 戸惑ってはいたがそれでも質問はダイレクトなものだった。
「ほら、何かと」
「あっ、それは大丈夫よ」
 しかし未晴はこのことには穏やかに微笑んで答えるのだった。
 
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