駄目親父としっかり娘の珍道中
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第90話 会話は噛み合ってても腹の底はグダグダだったりする
「う・・・あ、あれ?」
「おぅ、やっと起きたか」
目を開くと、視界いっぱいに銀時の顔が映り、思わず声をあげそうになってしまった。
そんな新八の心境などつゆ知らずが如く起きたのを確認するやさっさとその場から離れてしまった。
「おら、いつまでも寝てねぇでてめぇも手伝え。仕事終わんねぇだろうが」
「終わらないって・・・な、なんじゃこりゃぁ!!」
新八の目に飛び込んできたのは人の形に出来た穴だった。
その穴を修理しようと銀時のみならず神楽やなのは(シュテル)までもが急ピッチで修復作業を行っている所だった。
「銀ちゃん、まだ終わらないアルかぁ?」
「まだ全然終わんねぇよ、見てわかんねえのか? 口動かしてねぇで手ぇ動かせ! てめぇもだからな!」
そう銀時が睨んだ先には見慣れない人が混ざって作業をしていた。
ピンク色の髪に見慣れない服装をした綺麗な女性だった。
そんな彼女が何故か金槌片手に屋根の修理を手伝っていた。
「えっと・・・銀さん、この人、誰ですか?」
「あぁ? あれだよ。シ○タだよ。ラ○○タの」
いい加減な返しをした銀時に少女が物凄い勢いで首を横に振ってそれを否定した。
「いや、違いますから! 私シ○タじゃないから! 飛行石も持ってないし古代文字も読めないし滅びの呪文とかも知らないから!!」
「バ○ス!!」
「ぐわぁぁぁ。目があぁぁ。目があぁぁぁ(棒」
必死に否定する横で滅びの呪文を唱えた神楽と目を押さえてム○カの台詞を超棒読みで熱演するなのは(シュテル)の姿があった。
突然そんなことをしだした二人にギョッとした顔をする彼女を見て新八もまたギョッとした顔をしそうになってしまった。
「えぇっと・・・気にしなくて良いから。この人達悪ふざけが好きなだけだから」
「え!? あ・・・そ、そう・・・なんだ・・・」
明らかに銀時達のノリについて行けてない彼女にフォローする新八。
だが、そんなイケメン的行いをすれば当然の如く絡まれるのわ世の常でありーーー
「んだよぱっつぁんよぉ。可愛い娘を前にして点数稼ぎですかぁ? イケメン気取りですかぁ?」
「マジダサいアル。二次元の萌えキャラにときめくおっさん並みにダサいアル」
「そんなんじゃないから! ただ、この娘どう見ても僕ら側の人じゃないでしょ? 僕らの常識についてこれてないかと思ってフォローしてあげてるだけですよ」
「それでいい関係になった暁にはその人と〇〇〇な事や〇〇〇な事を実践しようというのですね? 分かりますよ」
「ちっとも分かってないよねなのはちゃん! 何、何でそんな発想になっちゃうの? 僕らの原作だってそんなシチュ一度もなかったじゃん! 銀さんだって未経験のまま一児の父親やってんじゃん!」
「んだよぉ! 其処で俺を引き出しますかぁ? そりゃぁよぉ。他所んとこ行ったら銀さん結婚とかしてんだろ? よそ様のヒロインと色々ヤンチャしちゃってんだろ? べ、別に羨ましいとか思ってないからね? 勘違いしないでよね」
「気持ち悪ぃんだよおっさんのツンデレなんてよぉ」
とまぁ、こんな感じで良いように弄り倒される宿命にあるのは仕方ない。だってこれは銀魂ワールドでの話なのだから。
ふと、気が付くと例の少女が完全にドン引きしたような顔をして新八達から一歩か二歩位下がった位置にまで下がっていた。
俗に言う【関わりあいたくない】と言う仕草だった。
「ほらぁ、銀さんや神楽ちゃんやなのはちゃんがふざけまくるからあの子完全にひいちゃってますよ。僕たちの事危ない連中だと誤解されちゃってますよぉ!」
「良いじゃん別に。どうせアレだろ? 最近劇場版でチョロッと出させて貰ったのを良い事に【あ、このキャラ設定がブレッブレだから良い様に改ざん出来んじゃね?】的なノリでポロって出て来たキャラだろ。最近なのはの映画が好評だからって調子乗ってんじゃねぇぞてめぇら」
「ちょっとぉぉぉ! 何危ない発言してんですかあんたは! それ爆弾発言どころじゃないから! 確実に起爆する発言だから! 僕たちリリカルファンに袋叩きにされちゃうから!」
「大丈夫ですよ新八さん。その時はリリカルファンと銀魂ファンによる全面戦争が起こるだけです。勿論その時は私も助力しますのでご心配なく」
「いや、君はどっちかって言うとリリカル側だよね。魔法少女の側だよね」
「そうアル。変身シーンで一々まっぱになって世のオタクどもの〇〇〇を興奮させる連中アルよ」
「止めてぇぇぇ! 何であんたら一々リリカルファンとかなのはファンをディする発言ばっかするんですか?」
ギャーギャー! ワーワー!
気が付けば件の彼女そっちのけで何時ものように万事屋メンバーが何時ものようにバカ騒ぎが如く喚き散らす光景が展開してしまっていた。
何時もの事と言えば何時もの事なのだが、本当に良く飽きないなぁとこれを書いている当時の作者はそう思っていたりする。
「ちょ、ちょっとちょっと! ひとまず落ち着いてちょうだい! いつまでもそんなくだらない論争してる場合じゃないんだから」
「「「あぁん!?」」」
見るに見かねて止めに入った彼女ではあったが、今度は矛先が新八から彼女に向いただけであった。
「何アルかぁ? この娘一丁前にリリカルキャラなのを良い事に良い子気取りアルかぁ? ヒロイン気取りアルかぁ?」
「気にしちゃダメですよ神楽さん。どうせリリカルキャラなんて私たち銀魂キャラみたいに下品なボケとか体を張ったギャグ演出とか絶対出来ませんから。他所の作品みたいに適当な感じでボケ演出をスルーされるにきまってますよ」
「まぁまぁそう言ってやんなよお前ら。因みになのは、お前はリリカル側だからな。一応お前も銀魂的ギャグや体張ったボケとかもやってるけど勘違いしてんなよ。っつぅかまた新キャラかよ。いい加減増やすなよ。唯でさえリリカルキャラは生真面目連中が多くて共演してっと肩が凝って仕方ねぇんだよなぁ」
「え? も、もしかして・・・今度は私がターゲット?」
「ま、とにかくアレだ。お前が例え映画でメイン張ってたキャラだろうがリリカルで人気キャラだろうがこの小説に出た以上特別扱いはさせねぇ。まぁアレだな。いきなり頭バーコードとかはやりすぎだからとりあえず鼻の穴からマヨネーズ啜る所からやって貰うか」
「ちょっ、何よそれ! 大体マヨネーズってのはサラダとかに掛けるドレッシング的な奴でしょ? 何でそれを直にしかも鼻から吸わなきゃいけないの!? 絶対無理だから!」
「おやおや、やる前から出来ない発言アルかぁ? これだから最近のゆとりキャラはダメアルよ」
「何で駄目だし? それじゃあんた達は出来るっていうの? 鼻からマヨネーズ啜れるって言うの?」
「見くびんじゃねぇよ。俺らはなぁ、体張ったボケに命掛けてんだ。鼻からマヨネーズだろうがタバスコだろうが見事に啜ってやらぁ」
「それじゃ啜って下さい」
そう言うなりなのは(シュテル)が取り出したのは一本のタバスコだった。
それを差し出された時点で回りの空気が突如静まり返ってしまった。
「えっと・・・なのは・・・今のは言葉のアレって奴でさぁ、何も本気でやる訳じゃないんだよ。確かにギャグ的演出だったらやった方が良いんだろうけどだからって今すぐやる訳じゃーーー」
「それでしたらまずトップバッターは私からいかせて貰います。そぉい!」
「ちょっ! バカ止めーーー」
止めようとしたが既に手遅れだった。
なのは(シュテル)が自分で持ってきたタバスコの瓶を自分の鼻の穴に入れてそのまま背中を剃り返してタバスコの中身が重力の流れに従って瓶の中から鼻の中に零れ落ちてーーー
「ぬぐううぉぉぉぉぉおおおおおーーー!!!」
「ちょっ! 何この子!? 本当にやっちゃったけどぉ! え? これが普通なの? これがこの世界では普通の事なの?! 訳が分からないんだけどぉぉ!」
「は、鼻の穴に入ったタバスコがぁぁぁ! 鼻の中の膜に直接触れて刺激的な味や匂いが諸にくるぅぅぅ! 何この新感覚! これが若さって事なんですかぁぁぁ!」
「違うからねぇ! それ若さとか関係ないからねぇ!」
「ちょっと銀さん! 何やらかしてんですかぁ! あんたが変な無茶ぶりするからなのはちゃんやっちゃいけない事やっちゃったじゃないですかぁ!? リリカルキャラがまずやらない暴挙をやっちゃいましたよこの子ぉ!」
鼻にタバスコを入れてその痛みにもだえ苦しむなのは(シュテル)を前にして謎の女性と新八が大慌てで駆け寄りフォローしようとするが女性の方は銀魂ギャグが初体験なのかどう対応したら良いのか分からず、新八は新八でリリカルキャラとの接触自体そんなにないのでどう対応すれば良いのか対応に困ってしまっていた。
「なのはぁぁぁ! お前だけに苦しい思いはさせないネ! こうなったら私もぉぉぉぉぉ!」
「おいぃぃぃぃ! 今度はお前かよぉぉ! ってか、何でお前は両方の穴にタバスコォ!?」
「ぐぎゃぁぁぁぁ! 鼻が! 鼻が燃えるように痛いアルゥゥゥ!! でも負けない! あたいは負けないよコーチ!」
「コーチって誰だよ!? 誰もお前にテニスやバレーなんて教えてねぇしガン〇スターに乗せようとしてねぇよ!」
なのは(シュテル)に続き神楽までもが体を張ったギャグを熱演する始末に流石の銀時も焦りだしていた。
どうやら本人はそれをやる気はさらさらなかったのだろうが、相変わらず空気を全く読まないなのは(シュテル)の暴挙により完全にそれをやる空気になってしまったようだ。
「えっとぉ・・・とりあえずこの馬鹿二人みたいな阿保な真似は絶対にするなって言う教訓ってぇ事で、今回のお話はこれにておしまいっつぅ事でーーー」
「何勝手に閉めようとしてんですか?」
「そうよね。貴方だけ素面って訳にはいかないんじゃないの?」
「・・・ゑ?」
ガツッと肩を掴まれた銀時が振り返ると、其処にはタバスコを片手に持つ新八と謎の女性の姿があった。
「あんたは銀魂の主人公だろうが。だったら体張ったボケもお手の物でしょうが」
「言い出しっぺは貴方だからね。責任を取って実践しなさい」
「ちょ、ちょっと待ちなよ二人とも。何マジになっちゃってんの? ほらあれだよ。銀さんいつもの悪ふざけって奴だよ。そうだ! それよりもさぁ其処のお嬢さんの名前とかまだ聞いてないんだしまずは其処から入るべきじゃぁ」
「「てめぇも鼻からタバスコ食らいやがれぇぇぇ!!!」」
ズボォッ!!
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああーーーー!!!」
最後の締めとして銀時の鼻の穴にタバスコをねじ込まれた銀時は鼻の穴から伝わってくる激痛と刺激臭に脳内が激しく刺激され、彼の意識が遠い世界の彼方までぶっ飛んでしまうのに然程時間は掛からなかったそうでーーー
「はぁ・・・はぁ・・・」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・何なのこのノリ・・・こんなノリ・・・エルトリアじゃなかったわよ・・・」
「えと・・・何か、すみませんでした・・・まさか初登場の人にこんな事させるなんて・・・ほんと、これ書いてる作者はリリカルなのはが嫌いなのかな?」
「そうね。明らかにこれを書いてる人から悪意に似た何かを感じたわ。それも物凄くドス黒い程のねーーー」
作者のドス黒い悪意の標的にされてしまった事に激しい不安を感じる謎の女性は、身震いしつつ青ざめた顔をしていた。
「そ、そう言えば・・・まだお互い名乗ってなかったですよね・・・こんな時にあれなんですけど・・・」
「御免なさい。今は悠長に自己紹介してる場合じゃないの。縁があったらまたその時にでもするね」
そう言って彼女はその場を後にしようと一歩踏み出した。
丁度自分が落下した箇所を踏み抜いた途端、屋根が音を立てて崩壊し、その際に出来た巨大な穴に彼女は吸い込まれるように下へと落下していきーーー
「え!?」
「あ!!」
咄嗟に新八が彼女の手を掴むが、そのせいで今度は自分までもが重力の流れに従い二人揃って仲良く下の階におっこちてしまった。
「え! あ!! ひゃあああぁぁぁ!」
「うわあぁぁぁ! ぼ、僕まで落ちるぅぅぅぅ!!」
激しい振動と共に床下へと落下した二人。幸い地面じゃなくて畳の上だったのでちょっぴり痛い程度で済んだのは幸いだった。
ちょっぴり痛かったけどねーーー
「いたたっ・・・参ったなぁ、修理を依頼されてたのに返って壊しちゃったよ。これじゃ依頼料なんて貰えやしないなぁ」
「し、新ちゃん!!」
「え?」
突如、自身を呼ぶ声に気づき、声のした方へと視線が動いた。
其処に居たのは、新八の姉お妙と、そのお妙に抱き着いている隻眼の美青年の姿だった。
***
(やばい・・・かなりやばいぞ。どれくらいやばいかって言うとマジでやばい)
近藤は今心底混迷極まっていた。何せ、味方だと思っていたエンゼル勲がよりにもよって完全に敵側になってしまっていたからだ。
(最早エンゼル勲もデビル勲も当てにはならねぇ。どうする。どうやってこの縁談を切り抜けりゃ良いんだ)
「あの、勲さん」
「え!? あ、はい!!」
突如、この気まずい空気を破ったのはアリアの方だった。
「前に、クロノ君から聞いていたんですよ。近藤勲さんは真の侍であり、同時に部下思いの良い上司だって褒めてましたよ」
「えぇ!? あ、あぁそうだったんですか? いやぁ照れますなぁ。いやねぇ! クロノ君とは前に一緒に仕事をしただけなんですけどね。しかし彼にそんな風に思って貰えていただなんて・・・いやぁでもねぇ。クロノ君も立派でしたよ。執務に実直であの若さでありながら将来は有望でしょうなぁ! アッハッハッ!!」
正に渡りに船もとい、渡りに執務官だった。どうやら彼女はあのクロノと知り合いだったらしい。
そのクロノと言えば過去のPT事件の際に共に行動していた事もあり面識もある。
そんなクロノから此処まで太鼓判を押されていたのには正直近藤も驚いていたがこれのお陰で会話の糸口をつかむ事が出来た。
後で飯でも奢ってやろうかな。などと思いながらもこれ幸いにと近藤は其処から会話に入って行った。
「いやぁ、クロノ君が居なかったら俺達なんて異世界で野垂れ死んでたかも知れないですからねぇ。彼には感謝してもし切れませんよ」
「そうなんですか。そう言って貰えるとこちらも鼻が高いと言えますね」
「鼻が高い? あのぉ、アリアさんはクロノ君とはどう言ったご関係なんで?」
「何もそんなに深い関係って訳じゃありませんよ。ただ、あの子が幼い頃にちょっとした手ほどきをして差し上げただけの事です」
「成程。道理であの若さであれだけの動きが出来る訳だ。俺達は魔法とかに関してはとんと疎いんだが戦いのセンスに関しては理解出来ます。出来ればこちらに欲しい位の逸材ですよ」
双方べた褒め状態だった。流石に行きすぎかな? って思いもしたがそれ以外で会話の糸口が掴めない以上そうする他になかった。
(よし、何とか会話をする事が出来た。後はこの流れを維持したままどうにかこの縁談を無事に乗り切らねば。しかし流石にこれ以上クロノ君を誉め続けるのも限界だな。余り行きすぎると返って不快な思いをさせかねん。となれば次に何を話せば良いんだ? あれ、何を話そう。ほんと何を話そう・・・やばい! 全然思いつかない)
近藤の頭の中で彼女と会話をする上でのネタはクロノ以外にはなかったようだ。
必死に頭の中のメモリーを漁りまくって会話のきっかけになる物を探すのだが、生憎お妙絡みのしか見つからなかった。
しかも、悪い事は重なるもので、突然近藤の腹部に異常な痛みが走りだした。
(やばい! 慣れない会話なんてするもんだから緊張してう〇こしたくなってきた。どうする? 流石にこの空気の中で中座なんて芸当出来んぞ。だがこのままではいずれ俺の肛門が決壊する。どうする・・・どうする!!)
必死に便意を抑えつつ悩む近藤。そんな近藤の表情は自身の意思とは関係なく非情に険しい表情となっていた。
そんな険しい表情をした近藤を見てアリアもまた焦り始める。
(あれ? 何であんなに怖い顔してるの勲さん。ひょっとしてクロノの事掘り返し過ぎたとか? クロノの事ばっかり褒めてたせいで自分の事を見てないと思って怒っちゃったとか? 不味い不味い不味い。そんなつもりじゃなかったのに。ただ、クロノが前に近藤勲さんの事について話していたのを聞いてて、それだったら会話の切欠になるかなぁ? 的なノリで話しただけなのに、それが返って裏目に出ちゃったの? どうしよう。このままじゃ勲さん怒って帰っちゃう。そんな事になったら折角縁談を組んでくれたお父さんの顔に泥を塗る羽目になっちゃう。それだけは絶対に避けないと)
再び部屋の中に充満する気まずい空気。
片やう〇こがしたいのだがどうやって席を中座したら良いか迷う近藤。
片やどうやって相手の機嫌を取ろうか必死に策を練っているリーゼアリア(猫)。
双方の噛みあってるようで全く噛み合ってない脳内論争が無音の部屋の中を支配していた。
「あ、あの!!」
「はい!」
その空気を破るべく近藤が立ち上がる。そして彼女の顔をじっと見つめて来た。
真っすぐな目だった。鋭く真っすぐに一直線しか見ていない目。これこそが侍の目だと言われれば思わずそう頷いてしまいそうなほどに強く真っすぐな目に、思わずアリアは見入ってしまった。
ほのかに頬が赤く染まっていく。
(やばい・・・思わず声を掛けたは良かったんだが、その後の言葉が全く見つからん。ってか、何でアリアさんは頬を染めてるんだ? まさか! 彼女もまたう〇こを我慢してたってのか!? それで、どうやって中座したら良いのか分からず、思わず頬を染めちまったって奴か。成程、どうやらお互い腹ん中にやばい物を抱えちまった訳か)
(どうしよう。あんな真っすぐな目なんて今まで見た事ない。そんな目で見られたら・・・何も考えられなくなりそう。どうしよう、この後何て言葉を掛ければ良いんだろう)
(どうしよう・・・どう言って席を中座すれば良いか。【一緒にう〇こ行きませんか】なんて口が裂けても言えねぇ。かと言って【すんんません。ちょっと厠に行ってきます】なんてのも言い辛い空気だ。やべぇよ・・・もうカウントダウン入っちゃってるよこれ。もう後数分しない内に出ちゃうよ俺の腹の中にある爆弾がーーー)
(勲さんどうしたんだろう。立ち上がったまま黙り込んじゃってるけど。そうか! 折角だから外を一緒に回ろうってお誘いしているのかも? でも、どう切り出したら良いのか分からず戸惑ってるんだとしたら・・・よし!)
意を決し、アリアもまた静かに立ち上がった。そして、近藤の元へと歩み寄りその手にそっと触れる。
「あ・・・アリア・・・さん?」
「勲さん・・・折角良い天気なんですし、外を一緒に歩きませんか?」
(つ、通じたあああああああ! 俺の思いが通じたんだよこれぇ! よっしゃぁぁ! これで席を立てる。後はタイミングを見て厠に突っ込めば万事オッケィだぁ!)
(よし、掴みはOK! 勲さんも嬉しそうな顔してるし、後はタイミングを見てまた会話を始めればきっと良いムードになる筈!)
とまぁ、なんやかんやで良い流れにまで持ってこれた近藤とアリア。その後二人は仲良く縁側を連れ歩く形となった。
「い、いやぁ・・・良い天気ですねぇ・・・雲一つない晴天日和とはこの事ですなぁ」
「そ、そうですね! こんな天気滅多にないですよね」
それだけだった。
その後は二人揃ってだんまりしながらただただ縁側を歩くだけだった。
(やべぇ・・・全くタイミングが掴めねぇ。これじゃ一行に厠に行けねぇよ)
(やばい・・・全くタイミングが掴めない。これじゃ全然会話が弾まないじゃない)
((どうしよう・・・))
歩きながら悩む二人。すると、そんな二人の前に別のカップルが歩み寄ってくるのが見えた。
それだけであればさして気にする事もないのだが、そのカップルと言うのが、何を隠そう巨大なゴリラのカップルだったのだ。
【ウホウホ(良い天気ですね、王女)】
【ウホウホ(本当ね。まるで私たちの門出を祝福しているみたいだわ)】
しかもゴリラの方が割と饒舌に会話をしている始末だった。
まぁ、この程度であれば銀魂キャラであれば「あ、ゴリラだ」だけで終わる筈だろう。
だが、リリカルキャラのアリアにはその光景に思わず絶句してしまうのも無理はなかったりする。
「え、ええええええ!!? ゴリラ? 何でゴリラが此処に? って言うか、何でゴリラが普通に着物と紋付姿?」
「あ、アリアさん!? ちょっと落ち着いて! 此処では割とあれが普通だから。普通にゴリラとかその辺歩いているものだから」
「えぇ!? ゴリラが普通に歩いている物なんですか? そんなの危険すぎるじゃないですか! 動物園とかに連絡して引き取ってもらえないんですか?」
「いやいやいや! 彼らはそう言う類じゃないんで! 一応、あれもこちらの秩序とかルールとか守ってる側なんでーーー」
突然現れたゴリラにパニック状態になるアリアを必死に落ち着かせようとする近藤。そんな二人の騒ぎに気付いたのかゴリラカップルがこちらを凝視し始めて来た。
(や、やばい・・・今此処でこいつらとひと悶着なんて起こそうものならアリアさんが確実にパニックになる。此処は俺が適当にウホとか言って追っ払うしかないか。まぁウホとか適当に言っておきゃ通じるだろう)
このままゴリラカップルと長い時間一緒にいるなど御免被る。
そう思い、近藤は一歩前に出てゴリラカップルの視線を一身に浴びた。
「い、勲さん!?」
「任せて下さいアリアさん。俺達真選組は彼らみたいな天人の扱いも仕事に含まれてますんで。こう言った面倒毎なんてのもお手の物なんですよ」
心配そうに見つめるアリアを背に、近藤はゴリラカップルに向かい一言言葉を放った。
「ウホ(よぉ姉ちゃん良いケツしてんなぁ。俺様の〇〇〇ぶっこんでやるからその服脱いでケツこっち向けろよ!)」
ウホと言う言葉に意味などなかった。
だが、そのウホと言う言葉を聞いたゴリラカップルは突如として激怒し、暴れ始めた。
【ウホウホォォォ!!(何だ貴様! 私の花嫁に向かってそんな破廉恥な発言、それでも侍かぁぁ!!)】
【ウホウホホォォォ!!(いやぁぁぁ! 痴漢!変態!ド変態!大変態よぉぉぉぉ!!)】
「えええええええええええええええええええ! 何で暴れるのぉぉぉぉぉぉ!」
場の空気を鎮めようと放った一言が返って場の空気を乱す羽目になった。
目の前で暴れ回るゴリラカップルに対しテンパる近藤。更にはテンパる近藤を見て後ろに居たアリアまでもがテンパりだす始末だった。
「い、勲さぁん! 大丈夫なんですかぁ!?」
「だだだ、大丈夫大丈夫ですよぉぉぉ!この程度なんてことないですよぉぉぉ!」
大丈夫アピールをしている近藤だが、顔は真っ青になって冷や汗ダラダラ流している。とても大丈夫には見えない。
その間にもゴリラカップルは今にも近藤に殴りかかろうとすらしていた。
最早これまでか。そう思った矢先、突如頭上から落下してきた何かがゴリラカップルの脳天を直撃し地に伏せさせてしまった。
「え?」
「あ、すいませぇん。瓦落としちゃったんですけどぉ、大丈夫ですかぁ?」
「えぇ!?」
聞き慣れた声。その声を聴いた途端、近藤の中で危険信号のシグナルがひっきりなしになりまくっていた。
見たくない。声のした方を見たくない。だが、見なければならない。見ないといけない。
意を決し、先の声が聞き間違い、空耳、緊張から来た幻聴であってくれと願いつつ見上げた。
だが、彼の願いは天には届かなかった。
「あり? ゴリラじゃねぇか」
「ほんとだぁ。ゴリラが袴着てるネ」
「こんにちは。ゴリラ局長さん」
「よ・・・万事屋・・・」
其処に居たのは今此処で一番会いたくない存在、万事屋ご一行が其処に居た。
(な、何で此処に万事屋が・・・しまっ・・・うぎゃああああああああああああああああ!!!)
万事屋の姿を見た近藤の肛門はついに我慢の限界を超え、そして封印されていた扉は遂に音を立てて開いてしまったのであった。
つづく
後書き
結局新キャラの名前言えなかった。まぁ、ヒントが出たでしょうし分かる人は分かる筈・・・だよね?
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