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レーヴァティン

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第百五話 大坂からその十一

「頭が多いとたい」
「その分動きが乱れやすい」
「それとよ、興福寺が総大将でも」
「その総大将の思い通りに動くか」
 軍勢がとだ、英雄は看破した。
「そこだな」
「攻めるとすればたい」
「そういうことだな」
「それならたい」
「攻め方は決まった」
「敵の乱れを衝くたい」
「乱れていないならな」
 その場合についてもだ、英雄は述べた。
「乱れさせてだ」
「そうしてたいな」
「攻める」
 こう言ってだ、英雄は軍勢をそのまあ東に進ませてだった。
 興福寺側の一万の軍勢と対峙した、兵の数は互角だったが。
 敵の具足も槍もその質や長さはまちまちで鉄砲も少なかった。しかも。
 僧兵がいれば侍もいてそれぞれが雑然としていた、動きもまちまちであった。
 その敵を見てだ、英雄は一言で言い切った。
「正面から攻める」
「そしてたいな」
「そうだ」
 香織にすぐに返した。
「雑然と来る敵を鉄砲と槍で退けてだ」
「戸惑わせたところを」
「横から騎馬隊を突っ込ませる」
 そうするというのだ。
「敵の弱い部分からなそうするたいな」
「騎馬隊はだ」
 英雄は智を見て彼に告げた。
「頼む」
「承知したでござる」
 智は英雄の言葉にすぐに答えた。
「では」
「今からだ」
「動く用意をしておくでござる」
「そしてあれも使う」
 英雄はさらに言った。
「国崩しもな」
「大砲でござるな」
「城や砦を攻めるのに使うが」
「本来は」
「しかしだ」
 その国崩し、大砲をというのだ。
「兵と兵の戦でも使う」
「そうして」
「勝つ、一撃をな」
「敵の軍勢に打ち込むでござるな」
「最初にな、それでかなり違う」
「その通りでござるな」
「ではいいな」
「戦うでござるよ」 
「この戦勝つ」
 必ずとだ、英雄はこうも言った。
「そして勝ってだ」
「そのうえで」
「興福寺を降してな」
「そこからさらにでござるな」
「大和を手に入れる、興福寺以外にも多くの国人がいるが」 
 そうした国である、しかしというのだ。
「それでもだ」
「興福寺を降せば」
 この国の最大勢力のこの国をというのだ。
「かなり違うでござるからな」
「大和でも豊かな奈良や天理、郡山、そして橿原までな」
 奈良盆地のこうした地域がというのだ、田畑が肥えておりしかも多くの街々が栄えているこの地域がというのだ。
「手に入れる」
「そうするでござるな」
「それでは」
「今から戦だ」
 こう言ってだった、そのうえで。
 英雄は興福寺を中心とした大和の諸勢力一万との戦に入った、兵の数は互角だったが彼は必勝を確信していた。


第百五話   完


                2019・3・8 
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