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ある晴れた日に

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361部分:天使の様なその六


天使の様なその六

「それじゃあ。そうしましょう」
「ああ、それでな」
 これで彼等が観覧車の中でやることは決まった。二人でじっくりと外を見る。今度は静かになってそのうえで景色を見るのだった。
 しかし別の観覧車は違った。彼等は相変わらず。あれこれと騒ぎながら上の方を見ていた。見える筈がないがそれでも見ているのだった。
「なあ、見えるか」
「見えねえな」
「窓開けるか?」
 野茂と坂上、それに坪本が彼等のいる観覧車の中であれこれと騒いでいた。
 実際に坪本が観覧車の窓を開けようとする。しかしそれはできなかった。
「ちっ、開かねえぜ」
「開かないのか?」
「ああ、全然な」
 こう他の二人にも忌々しげに答える。
「何でだよ、開かないのはよ」
「あれじゃねえのか?」
 まだ開けようとする彼に対して野茂が言う。
「安全の為によ。密閉式になってるんだろ」
「ちっ、何だよそれって」
「面白くねえな、おい」
 坪本だけでなく坂上も忌々しそうに声をあげた。
「それ位いいじゃねえかよ」
「なあ」
「だから遊園地としてはそういうわけにはいかねえんだろ」
 野茂はその二人に対して言った。
「安全の為にはな」
「安全の為にかよ」
「それは駄目っていうのかよ」
「ああ、そうなんだろうな」
 また二人に対して述べる坪本だった。
「それはな」
「面白くねえな。折角顔を出してみようと思ったのによ」
「それができねえなんてよ」
「まあ諦めろ」
 そしてまた言う坪本だった。
「ここはな」
「ちっ、仕方ねえか」
「そうするか」
 二人はここでやっと大人しくなった。そうして憮然とした顔で座りそのうえでそれぞれ携帯を出してそのうえでメールを送りはじめた。しかしそうしようとしたところで気付いたのだった。
「おおっと、竹山」
「そういえばいたんだな」
 ここで自分達と同じ観覧車に竹山がいることに気付いたのだった。見れば彼は静かに席に座っていた。そうして動くことがなかったのだ。
「何で御前そんなに静かなんだ?」
「二人がずっと一緒にいるってのによ」
「騒いでも仕方ないじゃない」
 しかし竹山はこう三人に答えるだけだった。
「見えることは見えるかも知れないけれどさ。外に出ることはできないでしょ」
「まあ確かに」
「その通りだけれどな」
 流石に外に出ることは無理だった。移動中の観覧車から。
「じゃあやっぱりよ。ここはよ」
「静かに見てるしかないってことか」
「そういうことか」
 出される結論はこれしかなかった。
「何だよ、つまらねえな」
「見ても中々見えねえしよ」
「中なんて全然な」
 見えないのだった。ただ上を見上げて二人が乗っているその観覧車を見るだけしかできない彼等なのだった。結局それだけだった。
「乗ったの失敗か?」
「かもな」
「ちっ、何てこった」
 三人はこう言い合って歯噛みする。しかしであった。
「それもいいじゃない」
「いいって?」
「どういうことだよ」
 丈山がその彼等に対して言ってきたのだった。穏やかな言葉で。
 
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