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駄目親父としっかり娘の珍道中

作者:sibugaki
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第88話 見合い写真ってのは大体宛にならない

 
前書き
今88話ですけど、総合すると今回で100話になりました!!
100話になった記念すべき話がこれで良いのか疑問ですが、まぁ良いよね。 

 
 昔々、体が小さくて泣き虫な子が居ました。
 男として育てられたその子は気の小ささと背の低さから度々同年代の少年たちからの虐めを受け、その度に一人泣く日々を送っていた。

 そんな泣き虫な子にも友達が居た。泣き虫な子とは対照的に笑顔で気も強くそれでいて腕っぷしも強いまるでゴリラみたいな少女だった。

 少女は泣き虫な子が虐められている場面に必ずと言っていい程現れてはいじめっ子たちを返り討ちにしてその子を救ってあげていた。

 だが、救われ続けていた子が泣き止む事はなかった。悔しかったのかも知れない。辛かったのかも知れない。
 何もできない自分とは対照的に友達となった少女はとても強い。

 そんな悩みを打ち明けた時、隣に座っていた少女はこう言ってくれた。

「背が小さいなら、その分心の大きな侍になれば良い」

 その言葉を胸に、さっきまで泣きじゃくって流れ落ちていた涙を強引に拭い取ると、その子は立ち上がった。

 そして、少女にこう約束をしたーーー

「もし、僕が強い侍になったら・・・その時は、僕のーーー」




     ***




「はぁ・・・」

 開始一番から新八は深い溜息を吐いていた。いや、別に彼が溜息を吐くなんて然程珍しくない。
 どうせまたくだらない内容で溜息を吐いているのだろう。

 例えば、彼が追っ掛けているアイドルのチケット買い忘れたとか、彼が追っ掛けてるアイドルの出演している番組予約し忘れたとか、彼が追っ掛けてるアイドルのーーー

「嫌、何上の地の文。悪意しか感じないんだけど! 僕だって悩み事の一つや二つありますよ!」

 等と、地の文にまでツッコミを入れてしまうツッコミの鏡だった。
 今日も彼のツッコミは健在であって一安心である。

「どうしたましたか新八さん。トンカチで指を叩いて爪が割れて指が抉れて化膿して切除しなければならない状況になってしまっての溜息だったんですか?」

「ちょっと! 何そのグロい発送。なのはちゃん怖すぎるからね! それに、別にトンカチで叩いたからって其処まで酷くならないから。精々内出血するだけで済むから」

「何だ、そうだったんですか。改造手術(外科手術)が出来ると期待していたんですが」

 あれ、今聞いてはいけないフレーズがあったような気がするんだが。
 聞きたかったんだけど、ちょっぴり怖くなったので新八はそれ以上深く詮索しないようにした。

 怖かったしね。

「んだよ新八。モブ眼鏡の癖に一端に悩みがあるってか? 主人公の俺差し置いて前々回登場しやがってよぉ」

「いや、それ出しますか銀さん」

「ったりめぇだろうが! 何で主人公の俺が暫く登場出来なくて、モブキャラであるてめぇがシレっと登場してんだよ! おかしいじゃねぇか! もっと主人公の俺を立たせろってんだよ! これじゃ主人公の名前でタイトル出してるのにその主人公が空気になってるどこぞのアニメみたいになっちまうじゃねぇかよチクショー!」

「メタい上に危ない発言やめろぉ! そんな事して運営とかに睨まれたらどうすんだよお前はぁ!」

「大丈夫ですよ新八さん。いざとなったら路線変更して新シリーズスタートすれば良いだけです。その時は私が主役となって医療サスペンスとかやりたいですね。未知の殺人ウィルスに感染した患者と病院内で起こる密室殺人。それらを解決する為に病院内に取り残された主人公たちが僅かな手掛かりで犯人を特定し、病院内からの脱出を目指すホラーミステリーとかどうでしょうか?」

「うん、まずこれ書いてる作者さんがミステリー書けないからそれはダメだね。ってかなのはちゃんがホラーミステリーとかミステイクじゃないの? 君推理とか出来るの?」

 新八の心配を他所に、なのはは何時の間に掛けていたのか丸眼鏡をクイっと持ち上げる仕草をしながらドヤ顔をしていた。

「ご心配なく。既に【名探偵コ〇ン】や【金〇一少年の事件簿】は読破済みです。ついでに【バイオ〇ザード】や【デッド〇ペース】とかも既にプレイ・・・したかったのですが年齢制限に引っ掛かってしまいプレイ出来ませんでした。無念!」

「あれ? なのはちゃんってこんなに難しい事べらべら喋るキャラだったっけ? もっと単純な思考を持ってた気がするんだけど」

「何言ってるアルか。女は何時までも足踏みなんてしてないネ。今日出会った女は明日出会ったらヤンキーになってる位女ってのは変わりやすいアルよ。それ位察せられないからお前は何時まで経っても新八なんだよ」

「頑張って下さいね新八さん。そうすれば今度は【新七】さんになれるかも知れませんよ」

「一生なれるかああーーー!!」

 と、こんな感じで万事屋の四人は何時も通りのやりとりをしていた。

 ただ違うとすれば、今現在四人が居るのは普段の万事屋ではなく、とあるお屋敷の屋根の上だったりする。

「ったくよぉ、何でこんな面倒な仕事請け負ったんだよ。天下のジャンプ主人公である銀さんが屋根の修理なんて、こんなの他のジャンプ漫画の主人公絶対やんないよ。他のとこだったらもっと凄い事やってるよ。神様のとこで修行したり、仙人のところで修行したり、新必殺技を会得する為に厳しい特訓をしてたりとかさぁ・・・ま、面倒だから俺は絶対やんないけどさ」

「だったら何でそんな事言ったんだよあんたは?」

「いやだってさぁ。折角こうして【リリカルなのは】とコラボしてるってのに未だに俺魔法とか使えてないじゃん。空飛んでないじゃん。かめ〇め波とか霊〇とか螺〇丸とか〇解とか全然出来る気配ないじゃん。もっとさぁ、他んとこの銀さんみたいにジャンジャンバリバリ魔法とか使いたいんだよ。無双したいんだよ! 楽して戦いたいんだよ!」

「あんたよくそれでジャンプ主人公やってこれましたね」

 薄汚れた大人の汚い願望を聞き、新八の生ごみを見るような視線を銀時は全く気にもせず面倒くさそうに作業を行っていた。

「それでしたらお父様。ぜひ私に任せてください! 私に掛れば忽ちーーー」

「だからって肉体改造はお断りだからな」

「でしたら細胞レベルのナノマシンを使って短時間で改造を済ませるのでどうですか? まだ試作段階ですが成功すれば何処かの仮面を被ったバイク乗りほどの戦闘力を得られますよ」

「だから改造は無しっつってんだろうが!」

「か、改造はダメなんですか? ・・・でしたら、私がこの間試作したパワーローダー小型版で無双すると言うのは?」

「お前、俺にエイリアンクイーンの駆除でもさせようってのか?」

 相変わらず空気を読まないなのは(シュテル)の暴走に銀時も流石に辟易していた。

「なのは、後で私にもそのパワーローダー遊ばせるネ。一度で良いからエイ〇アン2に出て来たパワーローダー動かしたかったアルよ」

 どうやら例のパワーローダーとやらに神楽は興味津々のご様子だそうだ。

「あ、あの・・・皆さん、僕の溜息について訪ねてくれませんか?」

「すみませんでした新八さん。何でしたっけ? 改造手術の話でしたか? 今でしたら戦闘員コースの他に怪人コース、更には幹部級怪人コースも選べる超お得な期間ですよ」

「あんたは今すぐショ〇カーかデス〇ロンにでも行って来い! そんでもって改造手術しまくってどっかの元帥に裏切られて左腕溶かされて自身を改造手術して口だけ出てる仮面のバイク乗りにでもなってろぉ!」

 何時になく苛立っているみたいな雰囲気を出している我らが新八。

 まぁ、彼の悩みはこの際どうでも良いので割愛させていただく事にする。

 年頃の少年<ガキンチョ>の悩みなんぞに時間を割いている暇などないのだから。




     ***




「はぁ・・・」

「おぅいどうした近藤。こんなめでてぇ日に溜息なんざぁつきやがってぇよぉ」

 此処にも溜息を吐く人が居た。

 彼こそはゴリラ・・・ではなく真選組局長を務めている近藤である。

 で、その近藤は今普段着ている制服姿ではなく、ご立派な紋付と袴をビシッと着こなしていた。

「だってよぉとっつぁん」

「しゃんとしやがれよぉ。おめぇこれから将来共にするかも知れねぇ女と会うんだろうがぁよぉ」

「そ、そうなんだけどさぁ・・・その相手がさぁ・・・」

 口ごもり、近藤は懐から一枚の写真を取り出した。其処に映っていたのはこれまた大層毛深い顔をした剃りの深い女性、と言うかゴリラが映っていた。

「こりゃないだろ。いや、確かに俺原作でも二次の方でもゴリラ扱いされてるけどさぁ・・・ゴリラと見合いってないんじゃないのぉ?」

「ばぁか、そりゃあれだよ。写真撮る時に緊張しちまって剃りが深くなっちまったんだよ」

「嫌、その程度で済む剃りの深さじゃないんだけど。剃りって言うか全体まんべんなく毛深いんだけど」

「おめぇだってケツ毛ボーボーって言ってたじゃねぇかぁ。あれと同じことだろうよ」

「いや、絶対違うとおもうぞ」

 そう、近藤は今日見合いに来ていた。

 これから一生を共にする伴侶となる女性の元へと上司でもある松平と共にこうして紋付と袴で完全武装してやってきた次第なのである。

「良いか近藤。今回会う相手は前にお前らが世話になった奴ら・・・何ていったっけなぁ。かん・・・かん・・・監察局? 浣腸局?」

「とっつぁん、それを言うなら【管理局】な」

「そうそうそれそれぇ。その管理局の偉いえらぁいお方の娘さんなんだそうだってよぉ。何でも管理局提督の娘さんだってんだからお前ぇ、逆玉じゃねぇかよ羨ましいねぇ色男さんよぉ」

「は、はぁ・・・」

 歯切れの悪い返事をしつつ、再度近藤は例の写真を見る。其処に映っていたのは紛れもなくゴリラだった。

(前にアースラ隊の皆とあった時には誰も彼もが美形揃いだった筈なんだけどなぁ。やっぱ中にはいるのか? こんなゴリラみたいな局員とか・・・もしかして、管理局の上層部は皆ゴリラ顔だったりするのか? ってことは、時空管理局はゴリラが管理運営してるのか!? それじゃ時空管理局じゃなくて、【ゴリラ管理局】になっちまうじゃねぇかぁ!)

 等と、一人で最悪の光景を想像して青ざめてしまっている近藤を無視しながら、松平は先を進む。

「良いか近藤。今回の見合いはいわば政略結婚みてぇなもんだ。相手は提督の娘。その娘とお前がくっついて、あわよくばガキでも拵えちまえばぁこっちのもんよ。奴らの技術をそっくりそのまま俺達も使わせてもらえるってぇ寸法だぁよ」

「は、はぁ・・・」

「だからあれだ近藤。気に入ったらチューだけとか下らんこたぁ言わねぇ。思い切って〇〇〇しちまえ」

「ちょっとぉぉぉ! 何いきなりそんな発言しちゃうのぉ! これ見合いだよねぇ! 別に式でも何でもない筈なのになんで其処までいっちゃうのぉ!?」

「おめぇあれだよ。男と女が一つ屋根の下で暮らすってこたぁよぉ。すなわち〇〇〇するってぇこったろうがよぉ。それによぉ、そうすりゃ向こうの管理局と俺達幕府との間にうまぁい具合に|バイブ<・・・>が出来るじゃねぇかよ」

「それを言うなら|パイプ<・・・>ね! 濁点が違うだけですっげぇ卑猥な言葉に聞こえてきそうだから!」

「まとにかくだ。くれぐれも粗相のねぇようにな。上手く立ち回って娘さんに気に入って貰えてガキでも拵えりゃこっちのもんよ。全てはお前の〇〇玉に掛ってんだからしっかりしとけよ」

 危ない話も織り交ぜつつ、二人は見合い相手の待つ部屋の入口までたどり着いた。
 
 緊張の余り近藤の首筋に冷や汗が溜まりだして紋付に染み出して不快な気持ち悪さに繋がっていくが、今はそんな事気にしていられる状況ではない。

「警察庁長官 松平片栗粉。並びに真選組局長 近藤勲。只今参上仕り候!」

 松平がこれまたドスの利いた声で名乗り、ゆっくりと障子を開く。

 中に入っていく松平に続いて近藤も部屋に入り、其処で改めて見合い相手を目の当たりにした。

 青い瞳に薄茶色のロングな髪を着物に掛らないように束ねているが、何よりも目が行ったのは両の耳だった。

 何処となく猫を思わせる耳をしている。

 まぁ、そんな耳など天人でごったがいしている江戸でなら然程珍しくもないのだが、それが向こうの世界の住人となれば話は別になってくる。

 普段着物など着ない筈なのに見事に着こなし、更に佇まいからも彼女の上品さが伺えて来た。

 そんな彼女もまた部屋へと入って来た近藤を見て思わず驚愕の顔をしている。

 無理もないだろう。何しろ見合い相手が三十路前のおっさんなのだから。

 だが、彼女の驚いた理由は別にあった。



 近藤がやってくる数刻前の事ーーー



「はぁ・・・」

 新八、近藤に続き、彼女もまた盛大な溜息を吐いていた。

「どうしたんだ、アリア。折角の晴れ舞台なのに溜息なんか出して」

「う、うん・・・まぁ、晴れ舞台なのは晴れ舞台だから嬉しいと言えば・・・嬉しいんだよね、うん」

 アリアと呼ばれた女性は隣に座る白髪の老人に言われ、何処かぎこちない返事を返していた。

「しかし良かったな。お前もうすぐ年齢ギリギリとか言ってたじゃないか。良い所にお前好みの男性が居たじゃないか」

「私好み・・・の・・・ねぇ・・・」

 父と思わしき男性にそう言われて、アリアは渡された見合い写真を今一度見た。

 其処に移っていたのは全身毛深いまるでゴリラみたいな男性が映っていた。

 ・・・って言うか、ゴリラそのものだった。

(お父さん、これ何かの嫌がらせなのぉ! 私の好みがゴリラってないから! 絶対ありえないから! まず種族的に有り得ないから! 確かに同じ哺乳類かも知れないけど私元は猫だよ! 猫を媒体としているんだよ! 其処は普通雄猫とかを呼ぶんじゃないの!? 何でゴリラ? しかも何でゴリラが流暢にスーツなんて着こなしてるのぉ? 動物園でウホウホ言ってなさいよあんたたちはぁ!)

 等と、内心パニックに陥っていた。

 滝のように流れ落ちる冷や汗。がくがくと振動パック宜しく震えだす彼女の体。

「どうした? もうすぐ来る相手を前にして緊張しているのか? お前にとっても初めての見合いだからなぁ。私も年甲斐にもなく緊張してしまっているよ」

(あんたは何に緊張しているんだぁ! 愛娘をゴリラの玩具にする緊張でもしてんのかぁこの白髭ぇぇ! その白髭真っ黒に塗り潰して樽に押し込んでリアル黒〇げ危機一髪やらせたろうかぁ!!)

 最早正常な判断を彼女に求めるのは酷だと言えた。
 それほどまでに彼女はパニック状態にあったのだ。

【警察庁長官 松平片栗粉。並びに真選組局長 近藤勲。只今参上仕り候!】

 そんな時、障子の向こうから野太い男の声が響いた。そして、開かれる障子。

 開始一番に現れたのは白髪で咥えたばこにどっかの危ない人とかが掛けてそうなグラサンを掛けた危なそうな雰囲気をもったおっさんだった。

 え? まさかこのおっさんが見合い相手とか?

 等と、緊張した面持ちで見ていると、その後にやってきたのは先のおっさんほどではないがおっさんに片足突っ込んだ位の男性が入って来た。

 髪のセッティングなど碌にしていないと言わんばかりに無造作に切り揃えられた髪に顎髭を蓄えた何処か間の抜けた顔をした男だった。

 そんな男と自分の視線が交差する。

 すると、互いに時が止まった感覚を覚える。が、別に一目惚れとかそんなんじゃない。

((しゃ、写真と全然違うじゃねぇかぁぁぁーーーー!!!))

 と、見事に二人の心の声はシンクロしていたのであったそうな。 
 

 
後書き
なのは原作でも人気のキャラが遂に登場ww
これからのゴリラとの絡みに期待が膨らむ・・・かな?

後、最近になってシュテルの性格が若干違ってたってのを知って少々方向性を変えてみたりしてみました。多分、もっと面倒くさい性格になると思いますがまぁ、それも良いよね? 
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