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ある晴れた日に

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356部分:天使の様なその一


天使の様なその一

                  その日から 
 観覧車に乗った二人は。まず下の喧騒を見ることになった。
 見ればあの面々があれやこれやと叫んでいた。乗り場で騒ぐ彼等を見て未晴はここでも苦笑いになってそのうえで言葉を出すのだった。
「何か相変わらずね」
「あれで尾行しているんだな」
「そうなのよね。本人達はそのつもりだけれど」
「あんなに目立つ尾行はないな」
 正道も下を見ている。そうしてそのうえで言った。
「あんなのはな」
「そうよね。まあわかりやすくていいけれど」
「少なくともいつも通りだな」
「そうね。本当にいつも通りね」
 苦笑いのまま言う未晴だった。
「皆本当に」
「あんなので観覧車に乗って大丈夫なのか」
 そして正道はこんなことも言った。
「どうなのだろうな。揺れて事故とかにならないか?」
「それは大丈夫だと思うけれど」
 とはいっても今一つ不安な感じの未晴の言葉だった。
「流石に。それは」
「もっともそうなったら係の人が止めるか」
 正道はこうも思うのだった。
「それはな」
「そう思うわ。ところで音橋君」
 今度は彼に声をかけてきたのだった。その顔を見てから。
「今日はまだ時間あるかしら」
「時間か」
「そう。時間よ」
 こう彼に問うのだった。
「時間だけれど。あるかしら」
「これからのことだな」
「ええ。遊園地が終わってから」
 静かな微笑みと共にまた彼に対して問う。
「どうかしら。今日は」
「それであるって言ったらどうするんだ?」
「少し行きたい所があるの」
 ここで少し目を伏せてきた。
「少しね」
「少し?」
「そうなの。少しね」
 未晴はまた言った。
「行きたいところあるけれど。どうかしら」
「ああ、いいぜ」
 正道は未晴の真意が読めず怪訝な目になっていたがその中で彼に対して答えた。真剣な顔でそして未晴が何を考えているのか読もうとはしていた。
 その目で。また彼女に言ってきた。
「それで何処なんだ?一体」
「二人で行くところ」
 未晴の返答はこれだけだった。
「二人で。それだけよ」
「わかった。二人だな」
「それでいいのね」
「さっき答えたよな。それでいい」
 また答えた正道だった。彼の返答は変わらなかった。その変わらない声でまた答えるのだった。
「それでな」
「有り難う」
 何故かここで礼を述べる未晴だった。
「じゃあ。遊園地の後でね」
「問題はあの連中に見つからないかどうかだがな」
 また下を見ることになった。彼等がいるその下をだ。
「あの連中にな」
「流石にね。皆に見つかったらね」
 苦笑いではなくなっていた。困った顔になっている。そうしてその困った顔での言葉は本当に心からのものであることがわかるものだった。
「まずいから」
「まずいような場所なんだな」
「少しね」
 言おうとはしないが心の動揺はわかった。
「どうしても見つかったら駄目だから」
「その時は何とかして撒くか」
「協力してくれたらかなり有り難いわ」
 御願いになっていた。正道んその目をじっと見ての言葉だった。
「今度ばかりはね」
「何かわからないが本当に見つかったらまずい場所に行くんだな」
「別にあれよ。悪いことする場所じゃないから」
「悪いことをするような場所じゃないのか」
「一応はね」
 しかしここでまた目を伏せる未晴だった。
 
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