氷の塔
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第二章
「もう六十階になるとな」
「とんでもない寒さやな」
「そうなるさかいな」
「難儀な話やな」
「この大寒波の中でな」
普通の寒波ではなかった、既に。
「それはないわ」
「そうしたお話やな」
「今回な。けれどな」
エミリーはあまり表情は変わらない、これはアサシンという職業故だ。
「私の勘では」
「これがやな」
「神託や。しかもこの塔モンスターが出る」
「そら間違いないやろ」
「神託やな」
「私もそう思うわ」
エリカもこう述べた。
「やっぱりな」
「そやな、ほなな」
「これからやな」
「この依頼受けるわ」
エミリーは決断を下した、そしてだった。
エリカと共にギルドの事務所の役人に依頼を受けると答えた、そして早速依頼主のボアーン女神に仕えるドルイドのところに行った。
ドルイドはボアーンの神殿にいた、若い小人のドルイドだった。背は二十センチ位の金髪の女だった。
女は二人に一礼してから名乗った。
「はじめまして、マリア=スチュアートと申します」
「依頼を見たけど」
「はい、今からです」
「早速やな」
「光の塔の六十階、最上階まで行って」
ドルイドはエミリーに答えて話した。
「そしてです」
「儀式を行うんやな」
「十年に一度の」
「あの塔やないとあかんねんな」
「このペンシルバニアでは。あの塔の最上階が一番ボアーン女神の力が集まるので」
それ故にというのだ。
「是非です」
「あの塔に登るか」
「今の時期ね。ただ」
「今この街は大寒波や」
「百年に一度だそうですね」
「私でも寒いわ」
エリカはドルイドに困った顔で述べた。
「私アラスカ生まれやけど」
「アラスカでもですか」
「ここまではな」
流石にというのだ。
「寒ないから」
「そうですか」
「そやからな」
それでというのだ。
「この寒さは堪えるわ」
「私もです。ですが」
それでもとだ、ドルイドは二人に毅然として言った、右手を拳にして言うその態度には決意があった。見れば紫の目に人形の様に整った顔立ちが実に可愛らしい。
「それでもです」
「儀式はやね」
「必ずです」
またエミリーに話した。
「やり遂げます」
「塔の最上階まで登って」
「六十階まで、では」
「今からやな」
「塔に向かいましょう」
ドルイドから言ってだった、そうして。
エミリーとエリカは彼女に引きずられる形で神殿にいる他のドルイドや神官達と別れてだった。塔に向かった。
塔は一階から寒くしかもだった。
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