ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第148話:Central White
ドクラーゲンを撃破してハンターベースに帰投したルインとアクセルは傷付いてはいたが、笑顔を浮かべて帰って来てくれた。
パレットはドクラーゲンのデータを受け取ると、エイリアとアイリスの力を借りてイレギュラーのパターンの解析を終えた。
「で、出来ました…」
「何が?」
疲れた表情を浮かべるパレットに差し入れのE缶を差し出すと疑問符を浮かべた。
「これまでアクセル達が倒してきたイレギュラーのデータから、イレギュラーのパターンを解析することが出来たの。アクセルも知ってると思うけど、新世代型レプリロイドにウィルスが効かないのはコピーチップの働きでDNAデータの配列を変えることが出来るからなのは知ってるよね?」
「勿論、と言うか僕とルナのデータ調べてたんだ…役に立った?」
自分達のナビゲートで大変であったろうに、それでもそれと並行して新世代型のレプリロイドのイレギュラー化の原因を調べていたのだ。
正直、しばらくはパレットに足を向けて眠れないだろうとアクセルは感じた。
「うん、でも主に調べたのはアクセルのデータなの…ルナも新世代型だけど元人間だから…」
最も近い存在であるアクセルのデータを基にして調べていたらしい。
「それで?何が分かったと言うんだ?」
このままでは話が進まないと判断したゼロはパレットに話の続きを促した。
「あ、ごめんなさい。アクセルのコピーチップのデータを基にして、新世代型レプリロイドのコピーチップを調べたら気になる共通点が見つかったんです」
キーを叩いて、新世代型のレプリロイド達の気になる共通点をモニターに映し出した。
モニターに映ったそれを見た誰もが表情を険しくし、愕然とさせた。
「これは…シグマ!?」
「はい、コピーチップのパターンがシグマのDNAデータに似ていたんです。これが何なのかは分かりませんけど…気になりますね…」
パレットの言葉に全員が同意するように頷いた。
そしてエックスは複雑そうな表情でモニターに映るシグマを見つめる。
「シグマ…やはり、奴なのか…VAVAが現れた時からそんな感じはしていたんだけど…」
「VAVA本人は自分がやりたいようにやってるだけのようだけどね。あの様子を見る限りは…アクセルにも目をつけてたし」
「あいつがか…大変だなアクセル」
苦々しそうに呟くゼロにアクセルは頬を掻きながら口を開いた。
「あいつってそんなにヤバいの?」
「何をしてくるのか分からない分、シグマより厄介だ。個人としては出来ればあまり戦いたくはないな…」
シグマは基本的に姿は最後まで現さないが、VAVAは何時、どこで現れるか分からないために正直やりにくいのだ。
「とにかく、何れにしても軌道エレベーターを狙って管理官ルミネを連れ去ったり…大掛かりな陰謀があるのは間違いないわね。パレット、引き続き調べてくれる?私達も時間の合間を見て調べてみるから」
「分かりました」
それでエックスはあることを思い出してエイリアに尋ねてみる。
「ところで、軌道エレベーターの事故の時、新世代型レプリロイドがシグマボディをコピーするところを見たんだ…これは、イレギュラー化と何か関係が?」
エックスの問いに答えたのはアイリスであった。
「そうね…シグマボディをコピーしたからと言って危険なわけではないと思うの。シグマボディそのものは戦ったことのあるエックスやゼロ達が知っている通り…頑丈で優れた設計のボディだわ…」
「そう、じゃあ…引き続きデータを集めるしかないようだね」
ルインがそう言うと任務が続行され、アクセルはコピーチップの調子を見てもらうためにメンテナンスルームに向かうのであった。
しかし、一方のある場所で悲劇が起きようとしていることなど誰も気付けなかった。
「嫌アアアアアッ!!!」
月のシグマパレスの一室では紅い光が何度も起きては消え、起きては消えを繰り返し、ルナの苦痛による悲鳴が響き渡る。
「ふむ…意外に保つものだな。元人間だけあり、しぶとさだけは大したものだ…だが、もう限界のようだがな」
「ア…アアアア…」
彼女の顔は涙でぐちゃぐちゃで体は痙攣を起こし、目は焦点が合っておらず、口から漏れる声には大きく、耳障りなノイズが混じっており、明らかに今のルナは異常な状態であった。
あれから何度も何度も休む間もなくDNAデータを無理やり解析され、莫大な量の解析にルナの心は絶え間なく続く苦痛によって完全に折れていた。
「さて、これで最後と行こうではないか」
「ヒッ…嫌ダ…嫌ダヨ…モウ…嫌ダア…」
目の前に突き出されたDNAデータを見てルナの表情は恐怖に歪んだ。
これ以上は、自分が壊れると本能で察した。
「お前に拒否権はない」
ガクガクと震えて泣きじゃくる彼女の頭を鷲掴んで持ち上げるシグマ。
「ウワアアアアア!!嫌ダ!!嫌ダ嫌ダ嫌ダ嫌ダアアアアアッ!!助ケテ!!誰カ助ケテヨオオオオッ!!!」
「無駄だ。叫んだところで誰も助けには来れん。エックスもゼロも…そしてアクセルと言う小僧もな」
ノイズ混じりの声で必死に助けを求めるルナの姿にシグマは嘲笑を浮かべるとDNAデータを押し付けて、とどめとばかりに解析させた。
「ウ…ア、アアアア…助ケテ…アクセ、ル…タ…スケ、テ……」
白目を剥いて、全身から力が抜けてダラリと沈黙してしまったルナを床に放り投げるとシグマは通信を繋いだ。
「私だ、この小娘の修理をしろ。そうだ、小娘のボディだけだ。エックス達のために素晴らしい贈り物を用意しなければならないからな」
「ア、アア…ア…ア…」
「ククク…ハァーッハッハッハッハ!!」
それだけ言うと口からノイズ混じりの声を出しながら倒れているルナを見てシグマは大笑しながら部屋を後にした。
そして一方、ハンターベースでは。
「っ!!」
「アクセル?」
冷や汗をかいてメンテナンスベッドから飛び起きたアクセルにゲイトは不思議そうに見つめた。
「ルナ…」
胸に手を当てながら、アクセルはルナの身に何かあったのかと不安そうに空を見上げるのであった。
そして一方、環境試験センターに向かったエックスとエイリアはそれぞれにチューンアップされているライドチェイサー・バリウスに跨がり、クレバスを飛び越える。
「エイリア、初めてのライドチェイサーの操縦だけど大丈夫か?」
隣で走るエイリアを心配そうに見つめるエックスにエイリアは苦笑する。
エイリアが搭乗しているバリウスはエックス専用バリウスをデチューンした物だが、それでも一般ハンターが扱っている物よりも遥かに高性能なのだ。
性能はエックスに合わせてチャージショットが放てるようになっているのがこのエックスとエイリア専用のバリウスの特徴だ。
「大丈夫よエックス。ライドチェイサー操縦の訓練もしっかりとしているわ」
「そうか…でも無理はしないでくれよ…行くぞ!!」
今回の出撃ではエックスは強化アーマーを装着していた。
ニュートラルアーマーはイカロスアーマーとヘルメスアーマーのパーツを自由に装着することが出来る。
今のエックスのニュートラルアーマーはバスターの性能を極限まで高めた装備と言っても過言ではない。
ヘルメスアーマーのヘッドパーツHとフットパーツH。
イカロスアーマーのボディパーツIとアームパーツI。
これにより、高い防御力と機動力を持ちつつ、本来なら時間のかかるチャージショットを殆ど間を置かずに発射することが出来るのだ。
『環境試験センターのシステムがダウンしてます!急がないと世界中の気象にどんな影響が出るか分かりません。エックスさん、エイリア先輩。クレバスに気を付けながら急いで進んで下さいね!!』
パレットの言葉に頷きながら、途中の海洋生物型巨大戦艦であるレイヴマンターをチャージショットとショット連射で破壊する。
そして背後や前方から迫るエックス達の乗るバリウスをデチューンし、攻撃力を省いて量産性を重視したライドチェイサー・ケルピーをエックスとエイリアが交互にチャージショットとショット連射し、後方から迫るケルピーには横移動してのブレーキで回避して潜り抜けた。
『またあの大きな戦艦が来ます!!前回とは違って今度は沢山のイレギュラーが乗ってます!!戦艦とイレギュラーを分担してやっつけちゃって下さい!!』
再びレイヴマンターが現れ、ケルピーに乗ったガードロイドにマインQが降りてこちらに迫ってくる。
「エックス!!ケルピーとマインQは私に任せて!!」
「頼む!喰らえ!!」
パレットの指示通りに分担して攻撃する。
エイリアがケルピーとマインQを担当してくれているために非常に戦いやすい。
とどめのチャージショットが炸裂し、レイヴマンターは全体から煙を噴き出して大空で爆散した。
吹雪の向こうに凄まじいエネルギー反応を感知したエックスとエイリアは壁にバリウスをぶつけ、堅固な壁を破壊した。
「デチューンしたバリウスとは言え壊しちゃったわ…ダグラスからのお説教確定ね」
エイリアの言葉にエックスは思わず苦笑した。
壁を破壊したその奥には真っ白な雪原が広がっていた。
「………いるんだろう?」
降り立ちながらそう言うと、雪原から敵が飛び出した。
見せ付けるように巨体を晒した“永久凍土の番人”、アイスノー・イエティンガー。
「お前がこの環境試験センターの管理者…アイスノー・イエティンガーで間違いないな?」
エックスが尋ねながらエイリアと共にイエティンガーにバスターを向けた。
隣の彼女の腕が僅かに震えているのは寒さだけせいではないだろう。
「(なんてプレッシャーなの…!!)」
同じ新世代型でありながらトリロビッチとは全く違う。
静かでありながら全身に全てを凍てつかせる冷気と共に凄まじい闘気を纏ってこちらを睨み据え、良く響く威厳ある声を発した。
「然り。我々の、あの方の理想を邪魔しないでもらおう」
「あなた達は…シグマは何を企んでいるの?もしかしてシグマがあなた達を狂わせたの?」
エイリアがイエティンガーに問うが、望む答えは返ってこない。
「……話したところでお前達旧世代のレプリロイドには理解出来まい。あのお方は最早、お前達旧世代には想像もつかない存在だ。失せろ、イレギュラーハンター!!」
「そうはいかない!ここのシステムを復旧しなければ世界の環境に大きな影響が出る!!」
「イエティンガー…あなたはイレギュラーだわ」
「やはり旧世代か…我が主の理想を阻むのならば、例えハンターではない女でも…滅殺するのみ!!」
エックスは目つきを鋭くする。
これ程までに強烈な威圧感を感じたのは久しぶりだ。
トリロビッチもまた高性能な戦闘型の新世代型レプリロイドではあったが、他者を見下すところがあって隙だらけであったためにアーマーさえ外してしまえば後は攻撃していくだけではあったが、イエティンガーはそんなトリロビッチのような相手ではないことは明白である。
「悪いが、俺も退くわけにはいかないんだ。俺達にも譲れないものがあるからな!喰らえ、レーザーチャージショット!!」
イエティンガーに向けてアームパーツIのフルチャージであるレーザーチャージショットが放たれた。
銃口から放たれた極太のレーザーの煌めきが冷気に触れ、冴え冴えとした光を映した。
「甘い…!!アイスガトリング!!」
イエティンガーは跳躍し、宙に浮くことでレーザーチャージショットをかわす。
そして、エックスとエイリアに向けて矢のような氷塊を撃ち出した。
「クリスタルウォール!!」
即座にトリロビッチの特殊武器で水晶壁を出現させ、氷塊を防御するエックス。
「その武器は…なるほど、トリロビッチを倒したか…流石は旧世代とは言えレプリロイドの始祖か。だが、これはどうだ?」
イエティンガーが消えた……のではなく雪の中に潜り、雪原の中を巨体に似合わぬ高速で走った。
舞い上がる粉雪がエックスとエイリアに迫る。
「エックス!!」
「ダッシュでかわすんだ!!」
エックスの指示に従ってエイリアもダッシュでイエティンガーの突進をかわす。
「氷龍昇!!」
エックスはかわした直後に背後からイエティンガーのジャンピングアッパーを見た。
とても重く、鋭い一撃。
「(パワーもスピードも凄まじいな…)」
イエティンガー程の巨体が繰り出すアッパーの一撃は胸がすくほどに壮観であった。
「(あんなのをまともに受けたら強化アーマーのあるエックスはともかく私じゃ、一撃でまともに動けなくなるわ)」
あれをまともに喰らえば強化アーマーの恩恵があるエックスはともかく強化アーマーがない自分は命はないと感じられた。
イエティンガーのアッパーの際に舞い上がった細かい雪が空中に散る。
「(エックスはともかく、あの娘も思っていたよりも素早い)」
攻撃をかわされたイエティンガーも思っていたよりも素早いエイリアに感嘆した。
回避したエイリアは即座にイエティンガーの分析をし、弱点を割り出した。
「あなたの弱点は…これよ!!サンダーダンサー!!」
「ぬわあああ!!?」
ドクラーゲンの特殊武器であるサンダーダンサーの電撃を受けてイエティンガーは苦痛に叫ぶ。
水は電気を通し、つまり感電してしまう。
低温下での運用を前提にして造られた新世代型レプリロイドであるイエティンガーは、最新型の超伝導部品が使われており、大電流が回路に流れやすい状態であった。
「っ…だが、このままでは終わらんぞ…行くぞ!!スノーアイゼン!!」
このままではやられると判断したイエティンガーは戦略を変え、短期決戦に持ち込むためにエネルギーを解放した。
そして自身のスペシャルアタックであるスノーアイゼンを発動し、上空から大量の絶対零度の雪の結晶を降らせる。
「シャドウランナー!!」
「サンダーダンサー!!」
このままでは攻撃を雪の結晶を受けてしまうと判断したエックスはチャージシャドウランナーで、エイリアはサンダーダンサーで破壊する。
しかしイエティンガーはその隙を突いて今度は氷を纏い、2人に向かって突進してきた。
「「なっ!?」」
「スノーアイゼンは囮だ…ドリフトダイヤモンド!!」
左、右。
一撃目はかわせたが、すれ違いざまに掠った冷気が、エックスの体を凍りつかせ、エイリアの足を凍らせて2人の自由と機動力を奪う。
「氷龍昇!!」
「ああっ!!」
そしてイエティンガーの強烈なアッパーの一撃を受けたエイリアが大きく仰け反る。
「エイリア!!?」
それを見たエックスが思わず叫んでしまう。
しかし、イエティンガーは構わずにエイリアに追撃を加えるために狙いを定めた。
「とどめだ…アイスガトリング!!」
「くっ…!!」
このままではやられると判断したエイリアは自らの足にショットを放つ。
出力は最小限に抑えたが、フットパーツが熱でひしゃげて、彼女に絶え間ない苦痛を与える。
即座に足の痛覚をシャットアウトするとエイリアは滑り込むように氷塊を回避した。
「オペレーターであるにも関わらず大したものだ…」
「オペレーターだからって…見くびらないで欲しいわ…」
表情を歪め、息を荒くしながらもエイリアは毅然としてイエティンガーを睨む。
「何故そこまでして戦う?お前はハンターではないはずだ。バスター以外の装備からして元々非戦闘型のオペレーターであるはず。それなのにお前は何故、我々と戦おうとする?」
平和主義である彼は、出来ることなら余計な犠牲を生みたくはなかった。
特に目の前のエイリアは元々非戦闘型のオペレーターであるために、出来るなら殺したくはない。
自分が倒すべき敵は、蒼の英雄と紅の破壊神と朱の舞姫、黒の死神と呼ばれているハンター達である。
「…確かに…私はエックス達みたいに生まれついての戦闘型じゃない…ただの一介のオペレーターだわ。でも私はエックス達の戦いをずっと見守って来たわ、だから逃げることだけは絶対にしない」
きっぱりと言い切る。
敵や死に対する恐怖など微塵もなかった。
そんなエイリアの姿を見てイエティンガーは例え何があっても彼女は退かぬと悟る。
「ならば、次の一撃で楽にしてやるとしよう」
雪が舞い上がる。
その凄まじさは、敵の居場所を分からなくし、地上ですらの感知も不可能となった。
加えてエイリアは片足の機動力を失っており、片足のみで逃げることは出来ない。
イエティンガーの一撃をまともに喰らい、命を果たす以外に術はない。
「……エイリア……!!」
彼女は目を閉じ、覚悟を決めたような顔をする。
死への恐怖も、負けることへの悔しさも存在しないとても静かで穏やかな表情。
千切れるような冷気の中で、祈りを捧げるように俯く彼女の表情は、芸術的にさえ思えた。
イエティンガーは雪の中にいるために彼女の姿が見える訳ではないが、優れた戦士の五感が彼女の発する空気を感じさせた。
歴戦の戦士でさえもああも潔くは出来ないと、イエティンガーは密かにエイリアに対して感服する。
同時に全力で挑むことこそが彼女に対する最大の礼儀だとイエティンガーに決意させた。
「今、楽にしてやろう…」
「エイリア!!うおおおおおっ!!」
氷龍昇を繰り出す瞬間、エックスが全身を捕らえる氷を砕いてイエティンガーとエイリアの間に入ると火花が散り、金属同士がぶつかり合う音も聞こえた。
エックスはエイリアの代わりにイエティンガーの拳をまともに喰らったのだ。
しかしイエティンガーはあることに気付いた、エックスのアーマーの色が赤のパーツで統一されていることに。
「この距離なら逃げられない!!ギガクラッシュ!!」
全てのパーツをIパーツで統一してイカロスアーマーに変化させるとイカロスアーマーの必殺技である全エネルギーを解放し、全身から凄まじいエネルギー波を放出するギガクラッシュをイエティンガーに直撃させた。
攻撃直後と言うこともあり、防御すら取れなかったイエティンガーは直撃を受けてエネルギー波に飲み込まれてしまう。
「我が攻撃が…敗北を招いたか……!!」
絶え間なく襲い掛かる衝撃に全身からショートする音が聞こえたかと思うと、直後に爆発した。
イエティンガーの巨体が爆風を放って四散し、炎に覆われた残骸が吹き飛んでいく。
雪原に落ちた屍が無残に、巨人の跡形も残さずにばら撒かれた。
「エイリア、大丈夫か?」
痛みに顔を顰めながらもダメージで動けないエイリアに歩み寄るエックス。
「え、ええ…ダメージはあるけど少し休めば動けるようになるわ…カウンターでサンダーダンサーを当ててやろうとしたんだけどね」
「全く君は…」
見た目に寄らず豪胆なエイリアにエックスは苦笑しながらもイエティンガーのDNAデータの回収を忘れずに行った。
「…それにしても何故新世代型のレプリロイドはシグマに従うんだ?」
雪が降る空を見上げながらエックスが呟いた途端、上空から凄まじい威圧感を感じた。
「…これは…VAVAか…!!?」
即座にイカロスアーマーからバスター重視装備のニュートラルアーマーに換装するとエイリアを庇うように立ちながらVAVAにバスターを構えるエックス。
「よう、エックス。あの坊やに続いてお前もナイト気取りか?」
暗い黄緑のアーマーを纏い、キャノン砲を担いだ戦士。
彼は空に浮かびながら、エックスとエイリアを見下ろしている。
「妙なところで会うな…お前とは……ルナはどこにいる?答えてもらおうか…」
何時でも即座にレーザーチャージショットが放てるようにバスターのチャージをしながらエックスはVAVAに立ち向かう。
VAVAはそんなエックスをバイザーの下で笑みを浮かべながら言う。
「まあ、そう急ぐな…。直に会わせてやる。今、丁度目覚める頃だろう」
「あなたの目的は何なの……あなたを倒したエックス達への復讐…?それともただ単に強い相手と戦いたいだけなの…?もし、そうだと言うのなら血に飢えた殺戮者と変わらないわ」
エイリアの言葉にVAVAは笑みを深めた。
「殺戮者か…そうだな。血と硝煙を求め、現世という無限地獄をさ迷う鬼に違いないな。だが、それでいい。俺はそれでいい。それが“俺”なのだからな」
それだけ言うとVAVAは空へと消えた。
「待て!!逃げるなVAVA!!」
エックスが叫んだ時には既にVAVAは消えており、残されたエックスとエイリアは複雑な表情を浮かべて空を仰ぐしかなかった。
地上から遥か遠い月にあるシグマパレスの一室で、ルナが簡易なメンテナンスベッドに拘束されたまま眠っていた。
そしてゆっくりと目を開くと、瞳の色は今までと違い、まるで血を思わせ、狂気を感じさせるような紅に代わっていた。
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