ある晴れた日に
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354部分:白銀の月その十九
白銀の月その十九
「他には佐々木主浩さんだって」
「じゃあ両方いけるってことだな」
またしても皆が言えないことを言う野本だった。
「北乃ってよ」
「だから私はそんな趣味ないけれど」
「じゃあ中森と一緒の観覧車には乗るなよ」
「絶対にだぞ」
「そんなの聞く筈ないじゃない」
しかし男組の言葉はあっさりと聞き流す明日夢だった。
「凛と一緒じゃないと」
「そうそう」
しかもそれに凛も同調するのだった。
「そんなの。折角遊園地に来たのに」
「絶対に凛と一緒にいるわよ」
「いいんじゃない?それじゃあ」
ここでこんなことを皆に告げたのは竹山だった。
「もうさ。それならそれで」
「いいのかよ」
「だってさ。観覧車に乗るのは二人とは限らないし」
このことを皆に話すのだった。
「だったらさ。それでいいんじゃない」
「ああ、そういえばそうね」
「確かにな」
皆竹山のその言葉を聞いて納得した顔になるのだった。
「それならそれで」
「いいわよね」
「だからだよ。適当に皆で観覧車に乗ろう」
彼の提案は続く。
「それでね」
「そうだね。まずはとにかく観覧車に行こう」
加山が彼の提案に賛同して皆に述べた。
「それで適当に乗ればいいよ」
「じゃあ。早速ね」
千佳がここで皆を少し急かしてきた。
「行きましょう、観覧車に」
「まあ何かやばい雰囲気は残ってるけれどな」
「とりあえず何とかなるわね」
皆とりあえず明日夢と凛のことは置くことにしたのだった。
何はともあれ観覧車に向かう。そうして。そこから二人を見ようとするのだった。
皆は二人から適度に離れていた。ばれないように、そして見えるように。距離には気を使っているつもりだった。しかし当の二人からは丸わかりであった。
「また来てるな」
「そうね」
正道と未晴はその後ろをちらりと見て言い合う。
「何かずっとついて来るな」
「予想はしていたけれどね」
ここで未晴は少し笑った。
「もうずっとついて来るっていうのはね」
「そうだよな。まあ気にせずに乗るよな」
「ええ」
そしてこのことももう決めているのだった。
「乗りましょう、それでまた二人で」
「下の景色でも見るか」
「それだけじゃなくて」
だがここで。未晴の言葉が少し変わってきた。今度変わったのは言葉だった。
「他のこともね」
「他のこと?」
「まずは観覧車に乗ってね」
しかし今はそれについて言おうとはしなかった。
「それからだけれど」
「ああ、それからなんだな」
「ええ、それから」
今はこう言うだけだった。
「それから言うわ」
「そうか。じゃあまず乗るか」
「そうしましょう」
また正道に勧める未晴だった。
「すぐにね」
「とりあえずな」
また口を開く正道だった。
「乗ってゆっくりと下を眺めるか」
「その時皆はね」
後ろにいる彼等のことも忘れてはいなかった。
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