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ある晴れた日に

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330部分:その日からその二十六


その日からその二十六

「それでね」
「よし。じゃあ今度はな」
「今度は?」
「おたくの為に作ってる曲な」
 音楽の話をそのまま続けるのだった。
「また作るけれどな」
「その曲を最後までね」
「作るぜ。それでいいよな」
 また未晴に顔を向けて問うのであった。やはりその顔は左手の鏡に映っている。右側にはその後ろが映ってそれもまた合わせ鏡になっている左側にも映っている。鏡はお互いをよく映し合っている。
「最後までな」
「御願いするわ。それじゃあ」
「ああ、そうさせてもらうな」
 笑顔で未晴に返す。その時だった。
「あっ」
「いよいよね」
「ああ、いよいよだな」
 ここで顔を見合わせて笑みを浮かべる二人だった。
「出口だ」
「何かやっとみたいですぐみたいで」
「俺はすぐだったな」
 正道はこう感じているのだった。
「何かな。本当にな」
「そうなの。すぐだったの」
「気付いたらもうここに来たって感じだな」
 実際そう受け取っている正道だった。
「何でかな」
「こうして話をしながらだったからかしら」
「けれどおたくはそうは感じなかったんだよな」
「どちらもよ」
 これが未晴が受けた感覚だった。
「すぐだったみたいに思えるし長かったみたいにも思えるし」
「どっちなのかは自分でもわからないっていうのか」
「少しね。そう感じるわ」
 未晴の感じたものは変わらないのだった。
「そうね」
「何でそう感じるんだろうな」
「それは人それぞれかしら」
 未晴自身にもその理由はわかりかねた。それでついつい首を捻ってもしまった。
「やっぱり。同じ経験をしても受け取ることってそれぞれ違うから」
「だからか。違うのか」
「そうじゃないかしら」
 やはり答えは出なかった。もっと言えば出せなかった。
「それはね」
「そういうものか。じゃあとにかくな」
 ここまで話してまた言う正道だった。
「出口だな。後はお化け屋敷だよな」
「そうね。けれど外に出たら」
「またあいつ等いるな」
「絶対にね」
 今度は困ったような苦笑いを浮かべるのだった。
「もう待ってるわよ」
「自分達は気付いてないと思ってるんだろうな」
「一応気付いてると思うわ」
 未晴は流石にそこまではないと見抜いていた。そこまで馬鹿ではないと流石に思っていたし実際にその通りだった。幾ら何でもそこまでではないのだ。
「けれどね」
「それでも続けるのか」
「絶対続けるわ」
 しかし未晴はこのことも確信しているのだった。
「絶対にね」
「見抜かれていても続けるっていうのは何なんだ?」
 正道は首を捻るしかなかった。
「やっぱり馬鹿じゃないのか?」
「いいのよ、そういうのが面白いんじゃない」
 しかし未晴はくすりと笑ってこう述べた。
「それをあえて受けてやっていくのがね」
「そういうものか?」
「気にすることないから」
 ここでは未晴の方が剛毅と言えた。少なくとも平然としていた。
 
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