ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第134話:Grakies
ハンターベースに帰還したルインは少し険しい表情を浮かべていた。
「どうした?ルイン?」
当然それを見たエックスもルインの表情が険しいことに気付いて尋ねる。
「エックス、どうやら今回の事件の黒幕はシグマで間違い無さそうだよ」
「やはりそうか」
「そう言えばテネブラエの奴もシグマのことを否定しなかったもんな。」
「でも何で人間だったのにシグマなんかに従ってるんだろ?シグマは人類の敵でしょ?」
しかしイグニスやテネブラエが人間なら恐らくウェントスとグラキエスも元人間の可能性が高い。
なのに何故人類の敵であり、最大のイレギュラーであるシグマに従っているのか。
「イグニスとテネブラエは死にかけた時に助けられたらしいから恩義とかのために戦ってるのかもね。残りの2人はさっぱり分かんないけどさ」
溜め息を吐きながらルインはルナと共に次のエリアに向かう。
次に向かった先は懐かしい…かつてイレギュラーハンターの元特A級ハンターのオクトパルドに占拠され、ルインがオクトパルドを破壊して奪還した海である。
「それにしても…」
「ん?」
LXアーマーに換装したルインの呟きに反応したルナは振り向いた。
因みにルナは水中型レプリロイドのウオフライに変身して進んでいる。
「この海も昔と比べて随分汚れちゃったね…」
以前、オクトパルドと戦うために向かった時は、まだシティ・アーベル等の大都市が健在だったため、大規模な海水浄化が行われていた。
そのために大陸棚においてはかなりの透明度を誇っていたこの海だが、今では近くでなければ視認が不可能な程に汚れている。
かつては多くの生物で賑わったこの海も、過去の幾度にも渡る大戦の影響を受け、最早見る影もない死の海と化してしまった。
完全にではないが、そう言っても差し支えはない状態で太古の昔から体を進化させずに生きてきた海のギャング、サメ類でさえも今や希少動物と成り下がり、その頭数が毎年減り続けている。
一応解決策としては水中用レプリロイドの特殊エネルギー源であるマイヤールビーを砕いて海に散布する…と言う方法があるが、マイヤールビーに代わるエネルギーが無いために保留となっている。
「…………」
「…気持ちは分かるけど、感傷に浸ってる暇はないぜルイン?」
「うん…」
2人は海の更に奥まで向かう。
立ちはだかるメカニロイドを破壊しながら進むと、そこにはかつてのコロニー破片落下事件による残骸が浮かんでいた。
その上には青いアーマーを身に纏う少年が佇んでおり、ルナは変身を解除して少年を睨み据えた。
「よう、グラキエス。また会ったな」
「へえ、嬉しいねえ。僕の名前、覚えてくれてたんだ。」
「あんなド派手な登場して、乗っていた戦艦をぶち壊されれば嫌でも覚えるさ」
睨みながら皮肉を言うとグラキエスは不快に思うどころか愉快そうに笑った。
「だろうね。そして君が本物のルイン…僕達のオリジナルの人だね?」
「そのようだね…」
グラキエスの視線が自分達四天王のオリジナルと言えるルインへ移る。
「まさか、僕達と同じ人間素体型が2人も来てくれるなんて思わなかったよ。しかも僕達のオリジナルであるルインにもね」
「……多分君も元々人間だったんだろうけど…どうして君はシグマなんかに力を貸すの?理由を聞かせてもらいたいな?」
今まで世界を破滅に導こうとしたシグマに従おうとするグラキエス達がとても正気の沙汰とは思えない。
尋ねられたグラキエスは笑みを深めながらシグマに従う理由の説明を考えた。
「ふふ…うーん、そうだねえ。まあ、正直個人的に言わせてもらえば、僕はあの人にイグニスやテネブラエ程に好印象を抱いちゃいないさ。それでも死にかけの僕を回収してレプリロイドにしてくれたことにはあの人に感謝してるけどさ…」
「なら、どうして?イグニスやテネブラエのように何か理由があるの?」
「理由ね…話すよりも見てもらった方が早いかもね。」
そう言うと同時にグラキエスは海に飛び込むと、ルインとルナを振り返る。
「おいでよ。君達に見せたい物があるんだ」
ルインとルナも海に飛び込んで、水中に飛び込んでグラキエスを追い掛けると、そこは比較的浅いがここに来るまでの途中の水よりも水が濁っている場所。
「君達に見せたいのはこの汚い海の底さ。僕が人間の頃はまだシティ・アーベルのような都市が健在だったから大規模な海水浄化が行われていたけど、戦いが始まって、終わったら終わったで海水浄化を後回しにして人間達は自分達のことばかり、分かるかい?結局人間達は自分のことしか考えないんだ。海は広大だけど、無限じゃない… それを分かっていないお馬鹿さんが人間には多すぎる。僕はね海が好きなんだよ。だから海を滅茶苦茶にしておきながら地上が駄目になりそうだからって月に逃げようとする人間に愛想が尽きたのさ。僕は人間でなくなったことに心底歓喜したね。レプリロイドなら水中での活動に何の不自由もない。」
「へえ…偉そう事言っても、やってる事はイレギュラーと同じじゃないかよ」
吐き捨てるように言うルナにグラキエスはきょとんとしたが、次の瞬間に吹き出した。
「僕がイレギュラー?はは、面白いことを言うんだね君はさ。僕達人間素体型は元が人間だからね。普通のレプリロイドとは違ってイレギュラー化はしないよ。僕達は自分の意志で人類に反旗を翻したんだ。まあ、これが君達の言う人間的に都合の悪いイレギュラーなんだろうけどさ…とにかく僕は身勝手で薄汚い人間からレプリロイドに進化したんだ。さあ、そろそろ楽しい会話はおしまいにして戦いを始めようか!!」
ハルバードを構えるグラキエスに対してルインはXアーマーに換装してバスターを、ルナはバレットを構える。
「当たれ!!リフレクトレーザー!!」
バレットから放たれたリフレクトレーザーがグラキエスに迫るが彼はウォータージェットによる機動力でそれを容易くかわす。
「ダブルチャージショット!!」
ダブルチャージショットを時間差で繰り出すが、1発目と2発目もかわされてしまう。
ルインとルナはショットを連射するが、グラキエスは回避しつつハルバードを構えた。
「無駄だよ!そんな遅い攻撃は水中特化の僕には当たらない…僕達のオリジナルの君なら知ってるでしょ!喰らえ、アイススティッカー!!」
前方に氷塊を出し、それをハルバードで砕く。
複数の氷の刃が2人に襲い掛かるが、ルナはコネクションレーザーで砕き、ルインは今度はFXアーマーに換装してナックルバスターを構えた。
「エディットバスター!!」
「うわっ!!?」
避けようとしても追いかけるように弾道を変えるショットにグラキエスは咄嗟にハルバードで受け止める。
「イグニスとの模擬戦でも感じたけど、やっぱり厄介だねそれは…」
弾道を変えるエディットバスターはルインの意思で弾道が変化するために回避しにくいのだ。
「トランスオン!!ウオフライ!!」
攻撃のチャンスと見たルナはウオフライに変身すると薙刀を構えて突っ込む。
「おっと甘いよ」
薙刀の突きをグラキエスは身体を捻ってかわし、逆にハルバードによる斬撃をルナの背中に見舞う。
「痛っ!!?」
攻撃をまともに受けたルナは表情を苦痛で歪める。
「遅いなあ…もしかしてそれで最高速度?コピーとは言えレッドアラートの水中戦担当も大したことないね」
嘲笑するグラキエスだが、決してウオフライのスピードが遅いのではない。
グラキエスの水中での移動スピードがウオフライと比べてもあまりにも速過ぎるのだ。
「スラッシュハルバード!!そおら、行っけえー!!」
グラキエスは再び距離を取りながら2人に向けて巨大な氷の刃を放ってくる。
2人は跳躍してかわすと即座にルインがダッシュで距離を詰める。
「メガトンクラッシュ!!」
かつて使用していたアーマーを元にした存在なら弱点は把握しているため、FXアーマーのチャージ攻撃でグラキエスを狙う。
「やば…っ!!」
弱点の炎が放たれ、慌てて回避行動を取る。
水中であるにも関わらず問題なく発射される火炎弾が掠り、まともに喰らったらと思うと戦慄が走る。
「うらあ!!」
薙刀を振り下ろすが、グラキエスはハルバードで弾くと底の方に向かう。
「メイルストロム!!」
イソギンチャクのようなメカニロイドを数体召喚し、氷塊をを作った後、渦を発生させて巻き込もうとし、同時に氷塊が中心に巻き込まれるように降って来る。
「当たれ!!エディットバスター!!」
ナックルバスターのショットを連射してイソギンチャク型メカニロイドを1体破壊する。
「やるね!!でも…背後ががら空きだよオリジナルさん!!」
「なっ!?あうっ!!」
グラキエスはハルバードによる斬撃を背後からルインに喰らわせる。
「ルイン、大丈夫か!!?」
倒れたルインに駆け寄るルナだが、ルインは痛みに顔を顰めながらも起き上がる。
「だ、大丈夫だよ…」
グラキエス「流石だね、咄嗟に体を捻って致命傷を避けるなんてさ。だけど残念だったね、正直この水中では君は僕の相手にはなれないよ。僕にとってこの水中はいわばホームグラウンドなんだからね。水中では満足に動けない君と満足に動かせる僕…水中での機動力では僕が有利だよ。それとも僕の基となったアーマーで挑んでくるかい?」
例えルインがLXアーマーになっても勝てる自信があるのか、グラキエスは余裕に満ちた表情だ。
「どうかな?炎が弱点ならこいつはどうだ?トランスオン!!イグニス!!」
ルナの身体がコピー能力の光に包まれ、それが消えた時には四天王の1人であるイグニスに姿を変えていた。
「っ!!イグニスだって!!?」
弱点属性を持つイグニスに変身したルナにグラキエスは今までの余裕綽々の表情を引き攣らせた。
「メガトンクラッシュボム!!」
ナックルバスターから発射された爆弾はイグニスへのコピーに呆気を取られたグラキエスは爆弾の直撃を受けてしまう。
「うあ…っ!!この…アイススティッカー!!」
怒りに任せて氷塊を繰り出すが、今度はイグニスからテネブラエに変身し、曼陀羅手裏剣で氷刃を防ぐ。
「テネブラエもやられたのか…こりゃあ流石の僕も本気出さないとやばいかもね…」
「水中でもある程度早く動けるのも利点だよな。この姿は」
クナイを投擲しながらグラキエスとの距離を保ちながら隙を伺う。
ルナがコピーしたテネブラエは分身、シャドウダッシュが出来ず、曼陀羅手裏剣が自分の周囲にしか動けないバリアのような物に劣化している。
それでも…。
「こういう攻撃を防いでくれるから便利だよな。曼陀羅手裏剣追加っと」
攻撃を防いだことで枚数が減った曼陀羅手裏剣を追加する。
「君のコピー能力はオリジナルより大分劣化するようだね。オリジナルと同じ能力だったらと思うとヒヤヒヤするよ。流石の僕もテネブラエには勝てるかどうかは分からないからね」
巨大な氷の刃を発射し、ルナが投擲したクナイを弾き飛ばし、グラキエスはハルバードをルナに振るおうとするが、ルインがOXアーマーに換装して、グラキエスとの間合いを詰める。
OXアーマーは水中でも普段通りに動けるために、水中での機動力はLXアーマーの次に高い。
「私を忘れちゃ駄目だよ…喰らえ、龍炎刃!!」
アルティメットセイバーに炎を纏わせ、跳躍斬りを喰らわせるとグラキエスを吹き飛ばし、ルナの隣に立つ。
「ルイン!!」
「ありがと、ルナが彼の気を引き付けてくれたおかげで彼に一撃を入れられたよ。」
「っ…やってくれたねえ……」
顔は笑ってはいるが目は笑っておらず、グラキエスの深紅の瞳には憤怒の色が見える。
「攻撃してみなよ。まあ、君にそんな勇気があるか分からないけれどね」
「何だって…?オリジナルだからって偉そうに言ってくれるじゃないか!!」
怒りに任せて突進してくるグラキエスに対してルインは不敵に微笑んだ。
セイバーを構え、グラキエスがハルバードを振り下ろす瞬間に…。
「オーバードライブ!!アースクラッシュ!!」
オーバードライブの発動と同時にアースクラッシュのエネルギーを拳に纏わせるとそれによる強烈なカウンターを喰らわせる。
「うっ!!」
カウンターのアースクラッシュをまともに受けたグラキエスは底に叩きつけられる。
「これでとどめだ!!ダブルメガトンクラッシュを喰らいな!!」
ナックルバスターによる打撃がグラキエスを捉え、強烈な一撃をまともに受けたグラキエスは膝をつく。
「くっ…残念だよ。君達なら僕の言うことを分かってくれると思ったのに…僕は諦めないよ…あの男を利用してでも、この世界を変えてみせる!!」
そう言い残すと、グラキエスはこの場を離脱した。
グラキエスのDNAスキャンも完了し、ルインとルナもハンターベースに帰還する。
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