Fate プリズマクロエ お兄ちゃん強奪計画
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40植物、菌類との契約
みゆちゃんのゆめのなか
美游はどこかの夢の中を彷徨っていた。
自分が通っていた異世界の小学校のような場所、それが朔月の家になったり、衛宮の家になったり、どこかで何かが繋がっている場所。
空間も距離も曖昧で、観測されるまで何も確定しない場所。
その庭の中でイリヤが花壇を整備して、病気になった草や葉を摘んだり、庭木を剪定したりしていた。
「私も手伝うわ」
「ええ、変色してるのは全部病気よ、摘んで」
結局学校の花壇は傷んでしまい、全面に病気が行き渡ったので、イリヤも美游も諦めると、イリヤは工事用のスコップを取り出して土を掘り返し、鉄板の上に置いて下から火を付けて土を焼き始めた。
土のグラウンドのように、一草一木も生えてこない土を作る。
「ここもダメだったわね、全部枯れちゃった。草も花もダメだけど、土も虫も病気だったのね。全部焼いてからやり直さないと」
「肥料とか、薬を撒いてもダメなの?」
「ええ、虫とかミミズとか、土壌菌から全部駄目なのよ、一回焼いてしまわないと」
他の花壇でもアメリカ花壇とロシア花壇、中国花壇の間で火が回って、他の同盟国にも火が飛んで都市の全てが核の炎で焼かれ、インド花壇とパキスタン花壇が確証破壊、朝鮮半島花壇もクリミヤ半島花壇も火の海、イスラエル花壇もアラブ諸国花壇も核攻撃で消える阿鼻叫喚の地獄が展開されていたが、イリヤはため息をついて首をすくめて笑っていた。
「またダメね」
イリヤはここまでの地獄を見て笑ったりしない。
「貴方、クロエね?」
庭師になった悪魔で鬼で魔物で化物は、イリヤの中にいた別人格なのだと思い至った。
「気が付いた? アーチャーでもないし守護者ですらなくなったから、体はイリヤと同じなんだけどね。心は封印された元のイリヤでクロエの頃のまま」
目覚めているときには失われる記憶だが、睡眠時、寝起きの間の混乱時にはまた思い出せる記憶。
「もしかして、私が住んでいた世界、あそこもダメだったの?」
どこかから供給される養分、日光、それらを故意に絶たれた世界。
「シート掛けて日が当たらないようにして全部枯らして凍らせて、肥料も止めて水撒きも止めて、土も焼いてからやり直すつもりだったんだけど、みんなここに集まっちゃったからね。もう一回別の世界に出てくれる? そうしたら焼いてやり直すわ」
ここは三次元の時間の観念が通用しない場所なので、今行っている作業は過去の出来事でもある。
美游が生まれた世界も穢れ尽くしてしまい、廃棄処分を受ける途中だったが、聖杯だか神風でシートを吹き飛ばして、雨でも降らせて隣の花壇から肥料を引っ張って来れたらしい。
「見て、あそこから種が落ちて来たり、鳥の糞と一緒に落とされるの」
美游から見ても、この地獄で苦しまされて、罪に見合った罰を受けるために堕とされてくる罪人の数々が見えた。
イリヤがいた世界では、その罪が許された者や罪が軽い魂が集められ、穢れた者は他の花壇に移され、トラックオチで死んだ転生者のように扱われていたが、異世界ファンタジー世界もfate世界も、植物から感染して土が腐って病気が蔓延して見る見る穢れて汚れて行く。
「人類って幸せにしちゃいけない生き物だったのよ、正しい心なんか元々持ち合わせていないし、騙し合って殺し合って憎しみ合うために作られた地獄の囚人。だから正義の執行とかすると全部死んじゃうんだ」
「え?」
相互理解のための能力を全て封印され、発達障害、認知障害、記憶障害、利己的な遺伝子、あらゆる要素で自分の利益になることだけを何故か他人の幸せに繋がる行為だと思い込まされて他人に強要する人類。
バベルの塔の故事のように、お互いの言葉や思いを一切理解できず、意味不明の理論で他人を従わせる。
夫だけが幸せになって妻は奴隷、妻だけが幸せになって夫はATMで下僕だから汚物でも食わせておいて他人の子を托卵。
嫁という存在は、母親の大切なボクちゃんを盗んだ泥棒猫だから、どんな事をしてもイビリ倒して苦しめなければならない。
上司の幸せや店長の評価に直結する行為が正義で真実だと言い張り、店員やバイトがどれだけ苦しむ指示でも、それが幸せなんだと思い込めるほどの発達障害で自分の願望だけを垂れ流す。
高い知能や高学歴を持っていてもサイコパス価値観や認知障害で無理矢理自分勝手な妄想理論を展開してしまう頭が壊れている人類。
ブラック企業の経営者や上司、役人、政治家、銀行員、サディスト。利己的な遺伝子の命令や本能に従って、地獄の住人を管理して他人を苦しめた者こそが、天の支配者から幸運と富と健康を授かれる場所、地球と言う名の地獄で監獄。
「酷い……」
美游も自分が生まれ落ちた世界、住んでいた世界こそが地獄で煉獄なのだと気付かされた。
愛だの恋だの3年で消え失せる脳内の毒で騙されて人生で最低の間違った選択をして、この世で最も憎むべき相手と結婚して、一生を罵り合いと騙し合いと蔑みだけで上げ足を取り合う。
「ええ、ここが、この世界こそが素晴らしい地獄よ」
両手を広げて病んだ笑顔でこの世界を紹介するクロエの背後に、悲惨な地獄世界が何個も広がっていた。
もし同じ世界の住人に手を差し伸べ、救いを求める者を助けたりすると、それは犯してはならない罪であり、貧困と苦痛と不運と疾病とを複雑に掛け合わせた惨めな人生が与えられる。
「エインズワースの初代当主とか、アンジェリカがやろうとしてた実験、あれが正解だったのかもしれないわね。人類を相互理解までできる、養分も不要な別の生き物に変換置換する作業…… でも、それはこの地獄では決して行ってはいけない犯罪だから、アンジェリカもお父さんの体も殺されて、二度と実験ができないようにされたのよ」
美游はクロエの指摘通り、試しに健康で美しい花をへし折って、ゴミ捨て場に放り込んでみた。
「ああ、この程度でも幸せになれるのね」
この世の仕組みと真理を知って絶望した美游は、愉悦部のようにして幸せになる手段と、他人を踏みにじって地獄の看守に出世する手段も知らされた。
「もし目が覚めてからも、ここでのことを覚えていたら、他人に優しくするのを止めなさい。誰かの相談に乗ったら、笑顔で最悪の選択を勧めてあげなさい。浮気の相談なら「真実の愛」を選ぶように言って密告もして地獄に叩き落してやって。変な宗教とか占い師から絶対に離れないように言って、引き離そうとしている家族は悪魔なんだと教えてあげるのよ」
「ええ」
美游は自分がいた世界や、別の花壇に入って踏みにじり、一周歩き回ってやって健康な花を全部ダメにしてやった。
「あら、そんなことしちゃダメでしょ、美游」
クスクスと笑い、花壇の死体を片づけながらゲラゲラ笑い始めたクロエ。
「この世界には救済は無いのね?」
「いいえ、宇宙にでも出て、人間の体を捨ててロボットにでもなったら、次の地獄が、今より少しマシな地獄が待ってるわ」
古い大脳皮質と言う、ホヤのような物が連結して脊髄動物になり、その頃からの呪いや苦しみを全て脳幹に受け継いでいる生命。
その上に新しい大脳皮質と言う、自分の名前や存在を認識できる中途半端な壊れた知能と抑制を与えられ、発達障害により自己すら正常に認識できないサイコパスや無能が多数を占める人類社会。
現代日本や欧米では、そんな障害の塊で単純労働しかできない99%のマヌケが生活すら立ち行かない政策が行われ、結婚できないようにされて断種させられている。
それでも愛だの恋だの抜かす、わずかな美形でスタイルもマシな者だけが選別され、汚らしいブサイクな物は淘汰されていく。
それはある意味、チベット人やウイグル人、ユダヤ人のように天に祈りが通じてこの地獄から民族浄化され、煉獄には残らないでも良いと言う救済かも知れない。
この世界はゼロ次元の凍結したコキュートスよりはましな場所で、点が移動して閉じた場所1次元の次、線が移動して閉じた場所2次元、さらに次の面が移動して閉じた場所3次元だと認識できた。
閉じた平面の上に張り付いて、Z軸の移動は重力に制限され、第4の軸、時間移動は禁止されていて、ただ未来方向に向かって転げ落ちて行く場所。
純粋な3次元空間、XYZ方向に移動制限がなく、時間移動が可能になると、時間軸移動に制限がある4次元空間の地獄に移転できる世界。
そこではレガシーを振り切って、640キロバイトのバラックであるdosの制限を抱えたまま、高層ビルのような32メガバイトのメモリ空間を利用していたwin95、98の様な制約から逃れられる。
それでも4次元空間の単細胞生物のような最下層からの進化が必要になり、5次元空間に到達するまでに様々な制約と呪いを受ける地獄。
究極の11次元や23次元の神の座に到達するまで、数億年数兆年の地獄での生活を強要される。
アンリマユと言う存在が正しく、奇跡を起こして願望器を正常に作動させた悪魔の装置、ルビー、サファイヤという装置はこの世に存在してはならない。
あれこそが鬼で悪魔の所業で、聖杯と言う願望器も地獄世界で使われてはならない破滅装置。
もしここでの出来事を覚えていれば、あの魔道具2個を破壊して、制作者である魔法学校の師範も暗殺しなければならない。
「でもね、天の使いの鳥だとか、飢えた鬼である動物を救うのは禁じられていないわ。施餓鬼恵、飢えた鬼に施しを恵むのは、この地獄での勘定を終える手段でもあるのよ」
花壇や畑で獲れた穀物を、飛び回っている天の鳥に与えるクロエ。
地獄の住人が苦しんで苦しんで生み出した果実や穀類。
それはこの地獄での勘定、仏教用語の支払いを終える手段で、対価として数えられる。
その延長なのか、現世で飢えた鬼に施しをするのは許されていて、飢えた人間を救うのは犯罪行為。
切嗣が行ってきた正義も、英霊エミヤが行ってきた正義も、近視眼的な刈り取りでしかなく、天の摂理には適っていない。
神の摂理ではなく、何らかの力を得た存在が間違った救済をしようとしているだけ。この地獄世界では自傷自滅自殺にも近い行い。
どれだけ苦しい思いをしようとも、償いのうちには勘定されない。
クロエが願った正義でさえ、偽善で悪行で間違った行為。
その現象で聖杯となった今では、間引きと剪定を行う誤った行いで苦行を強いられ、この場所ですら破滅を与える行為が幸せに直結する。
「ああ、植物との契約にも気を付けて、あいつらはこの場所で増えて、地面を自分の仲間で埋め尽くすために人間を利用しているわ。私達とは違う罪人だけど、昆虫と同じで増えて刈り取られても種だけ残せて来年増えれば良い奴らよ」
「植物、契約?」
「穀物とか野菜は、冬になる前に自分達の残骸を食べても良いけど、種だけは来年増えるために寄生してる人間に残してもらって、人間の排泄物とか死体や水を運ばせて雑草からも守って貰う契約があるのよ。人間に寄生して好きなように動かして、お互いを殺せる権利まで持ってる」
「人間って、植物に寄生されてるの?」
美游も特に驚きもせず、あの世の現象から人類が知ってはならない話を聞いた。
「細菌とかウィルス、あれも人間に寄生して生殺与奪の権利を持ってるのよ。ほら、抗ウィルス剤を飲むと異常行動をして、高い所から飛び降りて寄生主を死なせようとして、次の寄生主に肉を食われて移動する。子宮頸がんワクチンとかも、寄生主を身動きできないようにしてレイプされやすい状態にしたり、マウスの実験では出てこない別の寄生種がいるの、それは****で、******だから……」
「今なんて言ったの」
人類が知ってはならない情報が多すぎたので、セーフティーが掛かって美游の耳や意識に介入し始めた。
美游の奇妙な夢もそこで強制終了させられた。
異世界、衛宮家
「何て言ったの、クロエッ?」
目が覚めて行くと、クロエの記憶を消されていた美游も、夢の中の出来事を忘れさせられた。
あの世での出来事は忘れたが、美游は以前のような表情もない、人形のように振る舞い始めた。
後書き
広井王子さんの発言で、「夜中の12時までに企画書なんか書くなよ」と言うのがありましたが、SSも12時前に書くとつまらない内容になるようです。
寝起きの寝ぼけた状態の方が文章が安定するので朝に書いてましたが、夜中にイカれた話を書いて、朝に文章を整えるようにしようと思います、
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