ロックマンX~Vermilion Warrior~
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第130話:Teacher
前書き
2つのステージ終わらせます
ハンターベースにはゼロは既にバトルシップに向かい、エックスとルナは電波塔の比較的な安全な場所に転送するために待機していたのだが、アクセルとルインが帰ってきたのを見て表情を綻ばせた…のだが。
「……………………」
「………………………えっと…ルイン、アクセル…お帰り?」
「ウン…タダイマ」
殆ど無傷だが、背に深い影を背負っているルインにエックスとルナは絶句した。
「だから元気出しなってば、ほら!エックスもいるんだしさ!!」
「…アクセル、ルインに何があったんだ?」
取り敢えずエックスはアクセルに事情を聞くとアクセルは苦笑しながらエックスとルナはトンネルベースでの出来事を説明した。
「いやね、ルインってば数年間行方不明だったじゃない?だから事情を知らないガンガルン…トンネルベースのボスからお化けだの悪霊だの言われちゃってさ…それであの状態なんだ」
「「ああ、なるほど」」
思わず納得してしまったエックスとルナであった。
確かにルインがハンターとして復帰したのは今の世間にはあまり知られていないのでそう思われても仕方ないのかもしれない。
「えっと…ルイン……大丈夫か?」
「エックス、ちっちゃい子にお化けとか悪霊とか言われちゃった…凄くショックだよ…そりゃあね、うん…私は今まで行方不明だったしさ、いきなり現れたらびっくりされるのは分かってたよ。でもいきなりお化けとか悪霊扱いされるとは思わなかった…」
「えっと、あの…その…」
「ほら、元気出しなってば。E缶を飲んでリフレッシュしなよ。期間限定の蜂蜜レモン風味だってさ」
「うん……」
アクセルからE缶を受け取ると、ルインはその中身を啜り始めた。
「…………取り敢えず俺らも行くか」
「そ、そうだな」
「気を付けてねー。ルインはエイリアに預けとくからさー」
ルインのことはアクセルに任せてエックスとルナは電波塔に向かうのであった。
そして電波塔の比較的安全な場所に転送されたエックス達はエイリアからの通信に耳を傾ける。
『エックス、ルナ。聞こえる?電波塔の最上階に、強力なイレギュラー反応を感知したわ!他にもイレギュラー反応多数!!気をつけて!!』
「ああ、ありがとうエイリア」
エックスとルナは螺旋状の坂を見つめると、一気に駆け上がる。
「ん!?エックス、あれ!!」
ルナの指差す先には上まで筒抜けになっている塔の中央に巨大なヤドカリを思わせるメカニロイドがいた。
メカニロイドは2人に火炎弾やらミサイルやらを飛ばして来た。
「ルナ!!真上の敵は任せた!!」
「OK、任せな!!ホーミングショット…コネクションレーザー!!」
ダッシュを駆使してかわしながらエックスが前方のメカニロイド等をフルチャージショットで殲滅し、ルナは真上のバットンボーンをレーザーで撃墜する。
やがてバットンボーンも攻撃も飛んで来なくなり、エックスとルナは前進する。
「……行き止まりだな」
先行していたエックスが呟き、ルナが周囲を見渡し、頭に破片が落ちてきたので咄嗟に上を見上げると笑みを浮かべる。
「……そうでもないようだぜ?」
「え?」
「上を見な」
視線を天井に向けるルナに倣ってエックスも上を見上げる。
「…穴?」
行き止まりの壁の上に、標準型の人型レプリロイドなら簡単に通れそうなくらいに大きな穴がぽっかりと空いていた。
「あそこから登れそうだな。行こうぜエックス」
ルナは壁蹴りで軽やかに登っていき、エックスも壁蹴りでルナの後を追う。
「…何だここは?」
穴から出てきたエックスが、周りを見渡す。
円形の場所には上に続く道が見当たらず、どうしたものかと思っていると、エイリアからの通信が入った。
『聞こえるエックス、ルナ?さっきの大型メカニロイドの弱点が分かったわ。目が弱いみたい。他の部分は装甲が厚くて弾かれるわ。目を狙って!!』
「「了解!!」」
巨大な穴から顔を出したメカニロイドはエックスとルナの姿を捉えると、目の部分を引っ込めて回転を始めたのと同時に、大きな刃が飛び出る。
エックスとルナはしゃがんで回避するとタイミングを見計らって攻撃する。
「喰らえ、エクスプロージョン!!」
バスターの予備の武器チップにインストールされたガンガルンのDNAデータ…それで得た特殊武器でメカニロイドの目を狙ったが。
「エックス!?」
「うわっ!?」
使用者のエックスがエクスプロージョンの反動で勢い良く吹き飛ばされてしまう。
放たれたエネルギー弾は弾速は恐ろしく遅いが、それ故にメカニロイドの目を確実に削り、粉砕した。
弱点に強烈なエネルギー弾を喰らったメカニロイドは機能停止して落下していく。
その威力はエックスを受け止めたルナが感嘆するほど。
「凄え威力…」
「痛っ…すまないルナ…」
『エックス、大丈夫?』
案じるエイリアの声にエックスは安心させようとするが、腕に走る痛みに顔を顰めた。
「見せてみな」
そこらに散らばるメカニロイドのパーツを使ってエックスのバスターを診る。
バスターの内部を見たルナは顔を顰めた。
「酷えな、さっきのエクスプロージョンの反動のせいでバスターの回路がイカれかけてる。」
「直せそうか?」
「勿論だ。ただ、エクスプロージョンは使うな。微調整しないとバスターが使い物にならなくなっちまうからな。エックスだって昔のゼロみたいな腕になりてえわけじゃねえだろ?」
ルナの言葉にエックスが頷くとルナはテキパキとバスターの回路を携帯していた工具を使って修理していく。
何せエックスが最も使いこなせる武器は言うまでもなくこのバスターだ。
特殊武器の大半もバスターを使って放つので、バスターを失うのは絶対に避けたい。
ゼロの場合はZセイバーが大半の必殺技に使用されるのでバスターを失っても大した損失ではなかったが。
「よし、出来た。」
「ありがとうルナ」
腕にはまだ違和感があったが、気にするほどではないためにエックスはルナと共に電波塔の頂上を目指す。
どうやらメカニロイドのコアと先に進むための道がある真上にあったシャッターが連動していたらしく、再び壁蹴りで駆け登ると、再び駆ける。
途中で電磁バリアを展開しているバウンディングを発見した。
「あ、バウンディングだ。」
『バウンディングは静止している間は電磁バリアで攻撃を無力化するわ』
元レプリフォース…軍人であるためか、イレギュラーの能力解析に優れているアイリスが通信を寄越す。
それを聞いたエックスが動いた瞬間にスナイプミサイルを発射して破壊した。
「お見事」
「よし、先に進もう」
立ちはだかる敵を倒しながら遂に電波塔を乗っ取ったボスが現れた。
それは玉葱を模した恰幅の良い男である。
「デボニオン?」
そう、奥にいたのはルナのレッドアラートの顔見知りの1人のデボニオンであった。
しかし何時もは陽気な彼の様子がおかしい。
「デボニオン…確かレッドアラートの穏健派の1体だったな?大人しく…」
「エックス…と…ルナ…ダスな?」
エックスの言葉を遮り、彼は雷の渦を纏いながら苦しそうに立ち、顔面には脂汗が浮かんでいる。
「頼みがあるダス。アクセルと一緒に…オラ達を…レッドを止めて欲しいダス…」
「!?どういうことだ?」
「センセイの…改造を受けて…オラ達は…」
「センセイ…?センセイって奴がお前達にDNAデータによる強化を!?」
「何?ルナ、それはどういう…」
その言葉にエックスがルナに尋ねるが、事態は最悪の展開を迎える。
「止まれないダス…コントロール出来ないダス…お願いダス。自分でなくなる前に救ってほしいダスー!!」
デボニオンがエックスに襲い掛かる。
「くっ!!」
「エックス!詳しい話は後にする。今はデボニオンを倒そう!!」
「…分かった!!」
回転し、電磁竜巻を起こしながら迫ってくるデボニオンから必死に距離を取ってエックスとルナはフルチャージショットとリフレクトレーザーで攻撃するものの。
「弾かれた!?」
電磁竜巻の流れでエックス達の攻撃が弾かれてしまう。
「あの攻撃は攻防一体の技なのか」
「デボニオン自身のアーマーの防御力もあってかなり厄介だな。何とか竜巻に防がれずに確実にダメージを与えられる方法は………」
あれでは攻撃が届かない。
エクスプロージョンは使えないし、他にも通用しそうな攻撃は…。
「あった、エックス。ガイアシールドだ。あれなら電磁竜巻を無力化出来るはずだ」
「………やってみるか、ガイアシールド!!」
バスターを構えて超硬度岩石の盾を出現させる。
カウンター気味に繰り出されたそれは勢い良く迫っていたデボニオンを吹き飛ばし、そしてデボニオンの強固なアーマーに亀裂が入る。
「今だ!!」
ダメージを受けたことで電磁竜巻が消滅し、それを見たルナがショットを亀裂に目掛けて連射してデボニオンにダメージを与えていく。
しかし、デボニオンはゆっくり起き上がると再び電磁竜巻を纏って突進してくる。
その目には完全に理性が失われていた。
「ガハハハ…ガーハハハハハハハッ!!!」
「デボニオン…」
声にノイズが混じり始め、高笑いし始めるデボニオンは誰がどう見ても正気でないことは明白であった。
「……待ってな、今…楽にしてやるよ」
「ガイアシールド!!!」
チャージガイアシールドの巨大な岩石がデボニオンに激突し、再び吹き飛ばした。
今度は先程よりも勢い良く吹き飛ばされている。
デボニオンのアーマーが砕け散り、それを見たルナがデボニオンに向かって走っていく。
「トランス!!ストンコング!!」
ストンコングに変身すると超硬度岩石の剣を勢い良く振り下ろしてデボニオンを両断した。
「ガハハハハハハッ!!!!」
ノイズ混じりの声で笑いながらデボニオンは爆散した。
「デボニオン…」
「何とか倒せたか…」
エックスが呟いた直後、デボニオンのいた周囲に紅く輝く物が零れていた。
「これはまさか、DNAデータか?何故デボニオンからこんな大量に?」
レプリロイドの精製情報の塊であるのと同時にアクセルとルナがコピーする際に必要な物。
しかし本来レプリロイドが体内に持つDNAデータは1つのみ、これが何を意味するのか…。
「やっぱり…」
「やっぱり?ルナ、何か知っているのか?」
「……俺の予想だけどな。一応デボニオンの残骸を回収しよう。ゲイトに見てもらおう」
「…分かった。」
デボニオンの残骸を回収してハンターベースに帰還するエックス達。
いよいよエックス達がこの事件の元凶に近付いてきたようだ。
一方、バトルシップに転送されたゼロは新たな武器であるVハンガーで戦っていた。
「双燕舞!!」
手榴弾を投擲しようとしたランナーボムに光刃をブーメランのように飛ばして阻止する。
数少ない遠距離に対応出来る技の存在はこういう時に助かる。
『ゼロ!帰還してきたアクセルをそちらに向かわせるわ!!』
「アクセル?意外に早かったな」
「お待たせ!!」
アクセルもバトルシップに転送され、ここからが本番だ。
『このバトルシップにはランナーボムなどの遠距離攻撃に特化した敵が沢山いるから近距離特化のゼロだけでは苦戦しそうだからアクセルに来てもらったわ』
「すまんアイリス…バスターを失ってなければこんなもどかしい思いをしなくて済むんだがな」
「ゼロにもバスターがあったの?意外」
「昔はエックスのように使えたんだが………どんどんポンコツになっていって最終的に捨てた」
一応ルイン戦後にも修復したりもしたが、バスターの使い勝手が悪かったり、バスターを使うくらいならセイバーで斬った方が速いと言う結論に達したらしい。
『それでセイバーによる遠距離攻撃を会得したりと、Zセイバーの拡張性の高さを利用した可変能力搭載とか色々したのよね?Vハンガーもその1つよ』
「へえ」
「お喋りはここまでだ。行くぞ」
「OK!!」
メットールやランナーボム、メガトータル。
凄まじいまでの数の敵が、絨毯のような爆撃を仕掛けてくる。
「……いくらなんでも多すぎない?」
「無駄口を叩いている暇があったら1体でも多く倒せ」
アクセルの愚痴をゼロが一蹴する。
バレットや様々な銃器を扱えるアクセルに対してゼロは基本的に近接戦闘しか出来ないのでアクセル以上にこの絨毯爆撃の影響を受けているのだ。
顔を顰めるアクセルだが、ランナーボムを見て閃いた。
「そうだ!コピーショット!!」
訝しむゼロの前で、アクセルはコピーショットを放つ。
それは1体のランナーボムを破壊して落ちたDNAデータを回収し、コピー能力でランナーボムをコピーする。
「ランナーボムの能力なら、もっと楽に進めるよ!!」
アクセルの言うことは間違ってはいない。
今コピーしたレプリロイドは、広範囲の攻撃が可能で高い耐熱性と耐久性を持つのだから。
「飛影刃!!」
ランナーボムをコピーしたアクセルがゼロを庇いながら前進し、ゼロはセイバーを振るって鎌鼬を放つ。
追尾性能を鎌鼬はランナーボムに的確に命中した。
次の戦艦が見えてきたところで、今乗っている船が沈み始めていることに気付く。
「アクセル!飛び移るぞ!!」
「分かってるよ!!」
既にランナーボムから元の姿に戻っていたアクセルは、ゼロと共に次の船に飛び移った。
何度か次の船に飛び移ると、数体のドラゴン型メカニロイドに襲われる。
アクセルとゼロに向かって火炎弾を放ってくるが、ゼロはセイバーで打ち返し、アクセルはローリングで回避しながらガイアボムを発射する。
「もうちょっと近かったらホバーで近付いて新兵器をお見舞いしてあげられるのに」
「新兵器?」
「バズーカ型の武器のバーストランチャーだよ。射程が物凄く短いけど連射が利いて威力も凄いんだ。でもこれだけ離れてると当てられない」
ルナとパレット曰く近距離戦の武器だ。
バズーカとしては少しおかしいかもしれないが。
取り敢えずゼロは飛影刃、アクセルはガイアボムで攻撃を続けて次の船に。
「これで全てか…アクセル」
「うん、大物だね」
前方に見えるのは巨大メカニロイド。
形としては人型なのであろうが、体のあちこちに砲台を取りつけられ、その砲台がエネルギー弾を放ってきた。
「やばっ!!」
「双燕舞!!」
2人は散開して反撃を試みる。
貫通性能の高い双燕舞で攻撃するのを見たアクセルも急いで新たな武器を構えた。
「レイガン!!」
電気の光線が銃から発射された。
ボルトルネードの電気エネルギーが極限まで圧縮された光線はメカニロイドの装甲を容易く貫通した。
「(成る程、ファルコンアーマーのスピアチャージショットの原理を応用したのか)」
確かにレイガンの貫通力はこのような重装甲型にはガイアボムより効果的だろう。
ゼロとアクセルは回避と攻撃を繰り返してメカニロイドを破壊したが、この船もまた沈もうとしている。
「脱出しなければならないが…」
「ゼロ、あそこ!!」
アクセルが指差した方向には足場がある。
まるで謀ったかのようにあるそれは、罠かもしれないが、他にどうすることもできないのも確かであり、ゼロとアクセルはそこに飛び移った。
「ところでアクセル、お前のその武器は確かルナとパレットが造ったんだったな?」
「そうだよ?最初は喧嘩に巻き込まれて両肩が脱臼したりなんか散々な目に遭ったけどさ。2人が僕のために造ってくれたのは嬉しかったよ。」
「やはり喧嘩はしたか…だが……」
ゼロはアクセルが来るまでのルナとパレットの険悪ぶりを思い返す。
顔を合わせれば即座に口喧嘩で、まるで昔の自分とイーグリードを見ているようで少し気恥ずかしかったりもしたが、アクセルが来てからは互いに協力したことで実力を認め合い、今では良き友人となっている。
この戦いはアクセルによって起こった戦いだが、同時にアクセルはルインの帰還、そしてルナとパレットの仲の改善などの良いことも此方に運んでくれたようだ。
「な、何?」
じっと見つめられているアクセルは戸惑いながらもゼロに尋ねる。
「いや、お前が加わってくれたおかげで色々助かっている。この戦いでの働き次第で特A級の一発合格も夢ではないかもしれんぞ」
「え?本当?」
「ああ、俺とルイン、ルナが一発合格だったからな。それよりも相手は…」
「ルナはともかく、ゼロとルインと比べられてもね…多分、水の中だよ。最後のレッドアラートのメンバーはね」
「何?」
ゼロが聞き返した直後、大きな水飛沫が上がり、同時に海から何者かが飛び出してくる。
「あいつが最後のボス…ウオフライだよ」
半漁人型のレプリロイドのウオフライは2人の前に立つとアクセルを睨んだ。
「待ってたぜ裏切り者!!」
「やあ!卑怯者!!」
アクセルに対する皮肉な単語に、アクセルは不敵な笑みで同じく皮肉を込めて返す。
「ケッ、痛めつけてやるぜ!?前からてめえのことは気に入らなかったんだよ!!」
「ふふっ……気が合うね…僕もだよ」
このアクセルの態度が、ウオフライの神経を逆撫でする。
「生意気な奴めぇ~!ぶちのめしてやるっ!!」
「フッ、お前のバトルシップはもう使い物にならんぞ。無理せずに逃げた方がいいんじゃないか?」
ゼロはウオフライが海から飛び出してきたことで中戦に特化したレプリロイドだと判断し、少しでも有利な状況に持ち込もうと挑発を仕掛けるが、ウオフライはそこまで気が短くはなかった。
「へっ!ここまで来れたからって、いい気になるなよ?」
「?」
訝しむゼロ…2人の前で、ウオフライは勢い良く飛び上がる。
「馬ー鹿っ!ここまでは計算通りだって言ってんだよ!俺の絶対領域に、てめぇら自身がしちまったんだからなぁ!ひゃははっ!行くぜぇ!!」
そのままウオフライは海へ飛び込んだ。
360度見渡せる狭い足場で、自然に2人は背中合わせになる。
「ウオフライは薙刀を使った奇襲攻撃が得意なんだ…凄い卑怯者だけど実力は本物だよ。気をつけて」
「ふん、奇襲か。こう見えても元第0特殊部隊の隊長なんでな…」
「ひゃっはぁっはぁっ!!」
「ゼ…」
背後の海から飛び出してきたウオフライ。
アクセルが叫ぶ暇さえ与えられずにウオフライの薙刀はゼロに迫るが…。
「獄門剣!!」
まるで予知していたかのようにウオフライの薙刀を受け流して強烈なカウンター攻撃を浴びせた。
「ぐおっ!?」
カウンターを喰らったウオフライは無様にも地面に背中から倒れた。
「どうした?貴様に有利な絶対領域とやらで戦ってやっていると言うのにこの程度か?」
「チッ!!まぐれ当たりで良い気になるなよ!!」
「待て!!」
再び海に飛び込もうとしたウオフライにアクセルがショットを放つが当たらずにウオフライの潜水を許してしまう。
「構わん、次に出てくる場所は………そこか!波断撃!!」
ガンガルンのDNAデータをラーニングして得た必殺技で飛び出してきたウオフライに直撃させる。
「ぎゃああああ!!」
衝撃波をまともに喰らったウオフライは絶叫する。
「レッドアラートでは基本的な情報収集も出来んようだな?隠密を主とする第0特殊部隊の隊長であった俺に貴様程度の奇襲が通用すると思うか?」
ゼロは元が付くとは言え隠密等の行動を主とする第0特殊部隊の隊長であった。
前線に出ることが多くても体に染み付いた技術は無くなりはしない。
「凄い!ウオフライの奇襲が全然通用しないなんて!!」
「く、くそ!!ならアクセルを狙うだけだ!!」
ゼロが相手では分が悪いと判断したウオフライは薙刀で足場を両断するとゼロとアクセルを分断させる。
「しまった!!」
「流石、卑怯者…」
すぐにアクセルはバレットを握り締めてウオフライの奇襲に備える。
「何処だ…何処から…」
「無駄口叩くたぁ余裕だなぁ!!」
「!?」
アクセルの後ろから飛び出してきたウオフライの突然の背後からの攻撃に、対処しきれずに薙刀で背を斬られる。
「ひゃははは!!」
愉快そうに笑いながらウオフライは海に飛び込んだ。
「アクセル、大丈夫か!?」
叫んでアクセルの安否を確認するゼロ。
「だ、大丈夫だよこれくらい!!」
引き攣った笑みを浮かべながら何とか答えるアクセル。
「聞けアクセル!!奴はお前の背後を含めた死角を突いて攻撃してくる。そこに気を付ければ対応出来ない攻撃じゃない!!奴の攻撃を利用して特大の一撃を浴びせてやれ!!」
「特大の…そっか!!ありがとうゼロ!!」
ゼロのアドバイスにピンと来たアクセルはガイアボムのバズーカとは違うタイプのバズーカを取り出した。
アクセルはゼロのアドバイスを参考にして、自身の死角となりそうな場所に気を配ることで。
「くたばりやがれ~!!」
海から飛び出してきたウオフライに即座に対応することが出来た。
「くたばるのはそっちだよ卑怯者。バーストランチャーだ!!」
射程を限界まで限定したことで攻撃力は随一の皿のような形状のエネルギー波を砲口から発射する。
「うおああああ!!?」
「なるほど、バリアとしても扱えそうな武器だな。」
バーストランチャーのエネルギー波は発射後もしばらく残るので攻撃を防ぐバリア代わりにも使えそうだ。
しかしウオフライはまだ生きていた。
バーストランチャーの直撃をまともに喰らっても尚、生きていたのだ。
アクセルは一切手加減はしていない。
卑怯者ではあるが、やはりウオフライはただ者ではなかった。
「僕の勝ちだよ」
「は…生意気なガキだ」
倒れたウオフライは笑うが、アクセルは笑わない。
「教えて、何がみんなを変えたの?どうしてみんな変わっちゃったの?ルナはDNAデータで改造したんじゃないかっていうけど、そんなこと出来るのはレッドアラートにはいないはずだよ?」
その問いにウオフライは渇いた笑みを浮かべた。
「てめえも良く知るセンセイが俺達を改造しやがってね…てめえの持ってきたDNAデータを使えば、とんでもねえ力を手に入れることが出来る」
「そんなそんなことしなくても、みんな充分強いじゃない!!そんな必要どこにあるの?」
「戦ってDNAデータを手に入れるだけで強くなれるお前には分からねえよ……世の中、上には上がいるんだってことだよガキ。まあ、その結果がこの様だ」
見れば剥き出しになったウオフライの回路が燃えだしている。
「オーバーヒートか…」
空円舞でアクセルの傍に舞い降りたゼロがウオフライの回路を見ながら呟いた。
「借り物の力の代償って奴だ」
笑いながらウオフライが呟いたその時である。
『バトルシップ最終プロテクトが突破されました。これよりシップ内、全てのメカニロイドを起動させます。』
海に漂う残骸にはまだ機能が生きている物があったのか、アクセル達にこれから起こる最悪な事態を伝える。
「何だって!?」
「おい」
「へ…大方、センセイの仕業だろうさ。使えない奴は切り捨てる…そういうことだろうよ」
パトルシップのメカニロイドが暴走を始め、沈みかかった船からメカニロイドが這い出てきて、アクセル達に襲い掛かる。
「くっ…」
「チッ!数だけはいるな!!」
大量のメカニロイドをウオフライを庇いながら戦うのはいくらゼロとアクセルでも無理がある。
少しずつ少しずつ押されていく。
「アクセル…」
「喋っちゃ駄目だ!!何が何でも突き破ってみせる!!僕は絶対に諦めない!!」
「ガキが…一丁前に言うようになったな」
「いいから黙って…」
振り返ると倒れていたウオフライが立っていた。
燃え上がる胸部を押さえ、喘いでいる。
ウオフライは穏やかな表情でメカニロイドの大軍を見つめていた。
「確かに俺は卑怯者だがなあ…こんな汚え手ぇ使ってまでてめえを倒そうなんて思わねえよ。俺達を利用しやがったセンセイと違ってな」
ウオフライはメカニロイドの大軍に向かって走る。
「ウオフライ!!何を…」
「アクセル」
アクセルに向くウオフライの表情は不敵で、意地悪くて自信に溢れていた。
「卑怯者にも卑怯者なりの意地ってもんがあんだよ。男だからなあ!!」
そう叫んでウオフライはメカニロイドの大群に突っ込み、辺りが閃光に包まれた。
一瞬目が眩んで、何事かと思った直後にウオフライは自爆して全ての敵を巻き添えにしたのだ。
「ウオフライーーーーーッ!!!!」
炎を前にアクセルの絶叫が上がる。
「奴め…自爆して全てのメカニロイドを破壊したのか。奴の最後の意地か…」
「くそーーーーっ!!!!」
ゼロの呟きに地面を殴り付けるアクセル。
許せなかった。
レッドアラートを利用した悪しき者が、アクセルは炎が吹き荒れる中で、その光をジッと睨んでいた。
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