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戦国異伝供書

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第四十話 上田領有その三

「特にその政を見てな」
「思われますか」
「そして優れた者なら出の低い者も重く用いられる」
「高坂殿も」
「あの御仁は元は百姓であるな」
「そうでしたが」
 その彼もというのだ。
「今ではです」
「名家高坂家を継がれてな」
「重く用いられております」
「大層整った顔立ちの方だというが」
「はい、そのお顔たるや」
 高坂の顔立ちについてもだ、幸村は答えた。
「擦れ違うと誰もが思わず振り返る」
「そこまでの方じゃな」
「甲斐一の美童と言われ」
「元服されてもか」
「そのお顔立ちは見事なものです」
 即ち非常に整っているというのだ。
「実に」
「そうであるな、そしてお主の様な甲斐以外から出た者もな」
「重く用いられています」
「では」
「はい、当家もです」
 真田家もとだ、幸村は答えた。
「無論」
「優れているとか」
「お館様は思われれば」
 それでというのだ。
「重く用いられます」
「そうなるな」
「そしてです」
 幸村はさらに話した。
「その所領もです」
「上田もか」
「真田家のものとしてです」
「認めて下さるか」
「左様です」
「そのこともな」
 信之にしてみてもというのだ。
「わしもじゃ」
「既にですか」
「そうであろうと思っておったが」
「では」
「さっきも言ったがな」
 まさにというのだ。
「武田家に入ってじゃ」
「そのうえで」
「生きることがな」
「真田の取るべき道ですな」
「そう思う、しかしな」
 それでもとだ、信之はここで難しい顔になりそのうえで弟に述べた。
「わしがそう思っていてもな」
「父上、叔父上に」
「何といってもじゃ」
「主であられる祖父殿ですな」
「そうした、どう言われるか」
 その彼等がというのだ。
「特に祖父殿がな」
「それがしが間違っていると思われれば」
「お主の言葉に頷かぬ」
 そうなってしまうというのだ。
「お主にとっては残念なことであるがな」
「そうなりますな」
「うむ、その時お主はどうする」
「何度でもです」
 一度で首を縦に振ってもらわずともだ、幸村は兄に強い声で答えた。
「お話して」
「そうしてか」
「頷いてもらいます」
「そうか、そう考えておるか」
「それがしは確信しています」
 まさにというのだ。
「お館様の下に加われば」
「当家は安泰でか」
「そしてです」
「栄えるな」
「そして天下もです」
 ひいてはというのだ。 
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