戦国異伝供書
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第四十話 上田領有その一
第四十話 上田領有
幸村は上田城に入った、そうしてすぐに自身の家でもあったその城の中を観て回って共にいる信之に言った。
「久方ぶりに戻りましたが」
「どうじゃ」
「全く変わっていませんな」
懐かしい顔で言うのだった。
「よいことです」
「そうか、変わっておわぬか」
「そういえば武田家に入ってまだ日が浅いです」
「そうじゃ、それではな」
「変わっていることもですな」
「ないわ」
信之は幸村に笑って答えた。
「これ位の歳月ではな」
「左様ですな」
「そういうことじゃ、ただな」
「ただとは」
「いや、お主は変わったな」
幸村はというのだ。
「先程も言ったがな」
「よくなったと」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「さらによい顔になった、その顔を見ればな」
「変わったとですか」
「言える、それもいい感じにな」
「それは何よりです」
「お主のその変わり様を見れば」
顔に出ているそれをというのだ。
「武田殿、そして甲斐もどうかわかるわ」
「甲斐は確かに貧しい国ですが」
幸村もこのことは否定しなかった。
「山に囲まれ田も少なく」
「米は食えずな」
「ほうとうを食っていますが」
「それでもじゃな」
「はい、その政は見事で」
晴信のそれはというのだ。
「日に日にです」
「よくなっておるか」
「まさに、堤も整えられて様々なものが植えられて」
「それで売られてか」
「豊かになってきております」
貧しいその甲斐がというのだ。
「よい国です」
「そうであるか」
「そしてお館様は」
晴信のことも話した。
「実に見事な方で」
「そうして政をされてか」
「戦にも強く」
「随分兵法をご存知と聞くが」
「孫子を常に読まれ」
そうしてというのだ。
「風林火山の文字をです」
「旗に書かれておられるとのことじゃな」
「そしてその様にです」
旗に書いてある様にというのだ。
「戦われています」
「戦上手でもあられるか」
「そして家臣の方々もです」
「優れた方が多くか」
「しかも一つにまとまっています」
そうした状況だというのだ。
「まさに寸分の隙もない」
「それが今の武田家であるか」
「左様です」
まさにというのだ。
「ですから必ずです」
「甲斐に終わらずか」
「さらに雄飛されます」
「信濃の全てを手に入れられるか」
「そうなるかと、そしてこの上田も」
「武田家のつくべきか」
「それがしは見極めてきました」
命じられた通りにというのだ。
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