人徳?いいえモフ徳です。
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四十五匹目
僕とくーちゃんはレイ先生にやんわりと注意された。
ドルス教官? うん…顔真っ青だった。
そして二コマ目。
フライハイトの建国史の授業だった。
頭が痛くなった。
この国は1500年以上前に初代国王が起こした国なんだそうだ。
初代国王は近隣諸国を支配し圧政を敷いていた帝国を打倒。
フライハイト初代国王となったそうだ。
そしてその男の隣には、常に金髪で九つの尾を持つ狐が居たそうだ。
故に、フライハイト王国の国旗は青空に吠える九尾の狐なのだそうだ。
うん…要するにお婆様だ。
ようやくわかった。
ボーデン達が、時折シュリッセルの名をフライハイトより上に置く理由が。
なんせ、直系だ。
それもたった四人。
血は薄まっていない。
「ぬいちゃん知らなかったの?」
「お婆様一回もそんなこと教えてくれなかった」
「恥ずかしかったのではないか? ほら、若気の至りって言うだろう?」
「だとしたらこの国はお婆様の若気の至りの結果なんだけど?」
あと、環状大陸フローティアの正式な概略図。
造物主でもあるフローティア様は几帳面なお方だったらしい。
フローティアは何重もの大きさの違うリング状の大陸で出来ている。
中央には、水が溢れる五十万メートル級の山(というかもはや柱?)がある。
その火山のような山の火口部分(溢れるのは水だが)にはフローティア様の居城があるとされているが真偽は不明。
その中央島の周りに八重の環状大陸が並ぶ。
内側から順に第一大陸、第二大陸となる。
そして全ての大陸は中心へ向かうほど一段毎に少しずつ高くなり、第八大陸と第一大陸の高低差は2000メートルにもなるとか。
各大陸は舵輪のような水路が三十度毎に横切っている。
その水路に乗れば外洋まで出られるが、外洋の果ては奈落になっているらしい。
フライハイト王国は第一~第八大陸のマイナス30度からプラス30度くらいを納めていて、現状フローティアで一番大きな国だそうだ。
ちなみに第一から第八全てを領地に納めてるのもフライハイトだけらしい。
「せんせー、ここって第何大陸なんですかー?」
と誰かが聞いた。
「ここは第二大陸中心付近ですよ。第一大陸は聖域として立ち入りが禁止されてますから」
第一大陸フライハイト領には神殿があるらしい。
年始にお母様とお婆様はそこに行っていたとか。
「なお、第一大陸に入れるのは円環の祝福を持った神官や巫女だけです」
「シラヌイ持ってたわよね?」
なんで言っちゃうかなぁ?
教室がざわつく。
「モッテナイヨ。ボクシンカンジャナイモン」
「「「「「「「「………」」」」」」」」
周囲の視線が痛い…。
レイ先生がなんとかまとめてくれたあと、お昼休みになった。
終わる時間は結構アバウト。
タイムスケジュール的には大学に近いのかもしれない。
「おひるどうするのぬいちゃん?」
「学食行ってみようか。今日食べてみてそのクオリティ次第で明日から学食にするか弁当にするか決めよう」
ノートや羽ペン、インクをアイテムボックスに入れて席を立つ。
周囲がざわつく。
「「?」」
「狐君、姫様、普通はアイテムボックスなんて覚えてないぞ、私達の年では」
「「そういえば…」」
なんかもう使えて当たり前みたいな感じだしシャクティとメリーちゃんも使ってるから忘れていた。
「ぬいちゃん、我儘姫、自重」
「クアッドエレメンツバースト撃てる人が何言ってるのよ」
「あれでも自重した。その気になれば風刃じゃなくて雷撃できる」
「やればよかったじゃない。私に遠慮なんてしなくていいのよ?」
「そうもいかない。周りはあなたを見ている」
「面倒ねぇ…。どうせお祖父様の跡を御父様が継いでも私の王位継承権なんてそうそう上がらないわよ。
リオネ御姉様の子供辺りが継ぐと思うわ」
「リオネ様って結婚の予定とか有るの?」
「さぁ? 聞いたことないけど。フライハイト家は長命だから私には王位は廻ってこないわよ」
あっけらかんとくーちゃんが言った。
「そんな意識の低さでよくもまぁ王族が勤まりますね」
と外野のマーガレットが口を挟む。
「くーちゃん」
ハンドサインで指示を仰ぐ。
「落ち着きなさいシラヌイ。気にしてないわ」
と、くーちゃんは言うけど、もし次にマーガレットがくーちゃんや王家を侮辱すれば次はあんなのでは済まさない。
「マーガレット。私はなりたくて王族になったのではない。
勤まる? 違うぞ、勤めねばならんのだ。
こんな立場、捨てれる物なら捨ててしまいたいがな」
くーちゃんがハンドサインで臣下に指示を出した。
黙ってついてこい、だそうだ。
くーちゃんを先導するようにシャクティが先に教室を出る。
僕は最後だ。
教室から出る間際、マーガレットが呟いた。
くーちゃんを侮辱する言葉をだ。
「懲りないなぁ、君も」
氷の手裏剣を作り、マーガレットの目の前を通らせる。
「僕からすれば、君達の国なんてエルフの属国にすぎないよ」
動けないマーガレットに一言言って教室を出る。
「シラヌイ、私は聞こえてなかったから別に放っておいてもよかったのよ?」
「そうもいかないでしょくーちゃん」
「あんなの気にするだけ無駄よ。何か言われる度に反応してたらキリがないわよ?」
「わかったよ…」
次からは気付かれないようにしよう。
具体的には帰り道に猫に襲わせよう。
街の野良猫の一部を配下に加えている。
「ほら、早く学食行くわよ」
「あ、うん」
猫と学食で猫カフェが思い浮かんだ。
今度お婆様か国王様に言ってみようかな…。
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