戦国異伝供書
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第三十九話 信濃守護その三
「佐久の者達も諦めるわ」
「南北から攻められると」
「勝てぬからな、そしてわしとしてはな」
「佐久の者達はですな」
「歯向かわず従うならな」
それならばというのだ。
「文句は言わぬわ」
「あの者達の処遇も」
「土地はそのままじゃ」
彼等が何鳥も大事にしているそれはというのだ。
「当家に入ってもらうにしてもな」
「それでもですな」
「そのままじゃ」
「さすれば」
「そのことを佐久の者達にも話してな」
そうしてというのだ。
「あの地を完全に我等のものとするぞ」
「承知しました」
「では源次郎よ」
晴信は今度は幸村に直接声をかけた。
「お主には今すぐにじゃ」
「上田にですな」
「行ってもらう、そしてじゃ」
「祖父殿、父上にもお話して」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「当家に入ってもらう、そもそもお主が当家に来たのは」
「もう、ですか」
「ははは、最初から気付いておったわ」
最初からだとだ、晴信は幸村に笑って話した。
「そのことはな」
「そうでしたか」
「わしの器を見ておったな」
「はい」
実はとだ、幸村は晴信に答えた。
「祖父殿のご命で」
「そうであったな」
「そしてお館様の器は」
それはというと。
「それがしは確信しました」
「何とじゃ」
「はい、天下の器とです」
その様にというのだ。
「この天下を治めるべき」
「そうした者とか」
「確信しました、そのことをです」
「真田家にも話すか」
「そのうえで、です」
「当家にか」
「真田家は加わるべきとです」
「話してくれるか」
「必ず」
「そうか、では頼むぞ」
「さすれば」
「さて、これで上田と佐久が手に入ればな」
そうなればとだ、さらに話した晴信だった。
「木曽にも話をしておるしな」
「そして、ですな」
「木曽も加える」
武田家にというのだ。
「そして小笠原家じゃ」
「あの家をですね」
「攻めるが」
「あの家ですが」
山本が晴信に険しい顔で応えた。
「これまでとは違いです」
「大きな戦になることもな」
「そしてじゃ」
そのうえでというのだ。
「戦って勝つこともじゃ」
「考えていかねばなりませんな」
「信濃の南はあの家をどうにかせねば完全に手に入らぬ」
「しかもです」
山本はさらに述べた。
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