ある晴れた日に
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256部分:その吹く風その十三
その吹く風その十三
「逃げられないんだからな」
「それだったらね」
「逃げられないから覚悟しなさい」
江夏先生の言葉は相変わらずだった。
「とりあえずお酒の匂いはさせない」
「勉強もちゃんとして」
田淵先生も続く。
「わかったわね」
「月並みだけれど夏休みでも気を抜かないことね」
「何か小学生への言葉みたいだよな」
「まんまよね」
皆二人の先生の言葉に今度はそうしたふうに思いだした。
「俺達そんなにあれか?」
「酷いのかしら」
「取り柄はいじめとか喧嘩をしない」
「それはいいことだけれど」
先生達もそれは認めた。少なくともそれはかなりいいことである。
「けれど。普段の生活がそんなのだからよ」
「何かあったらすぐに実力テストの用意しておくから」
「げっ、実力テストって」
「最悪」
皆テストと聞いてその顔をさらに苦くさせた。
「それをしたくなかったらちゃんとしなさい」
「難しいことは何も言わないわよ」
「うち等ってそんなに日頃の行い悪かったんだな」
春華は腕を組んで呟いた。今の先生達の言葉を受けて。
「真面目にやってたつもりだけれどな」
「そうだよな。煙草なんて絶対にやらねえし」
春華に続いて坂上が言った。
「ヤクもよ」
「そんなのやったら駄目に決まってるでしょ」
田淵先生は煙草に薬と聞いてその口を一気に尖らせた。
「煙草は見つけたら即刻丸坊主よ」
「うわ・・・・・・」
「それはきつい」
「それが嫌だったら停学よ」
丸坊主はともかくこれは妥当であった。
「最近丸坊主については結構厳しいけれど」
「っていうかこの学校丸坊主いなくね?」
「そういえばそうよね」
佐々と奈々瀬が言い合う。
「加山もスポーツ刈りだしな」
「野球部も普通の髪型だし」
「だからそういうことはしないようにしているのよ」
江夏先生はその辺りを強調して言った。
「今時坊主頭もね。強制するものじゃないから」
「あれって結構楽らしいけれどな」
「洗うの凄い楽よね」
今度は坪本と静華が話していた。
「俺したことねえけれどな」
「私も。女の人で坊主って流石にいないし」
「薬は退学よ」
二人の先生の言葉が完全に一つになっていた。
「これは容赦しないわよ」
「そのまま少年院よ」
「まあそれは流石に」
「言い逃れできないわね」
桐生も凛もそれはよくわかっていた。
「どうしてもね。そればかりは」
「お酒あるのに何でやるのかわからないけれど」
「早寝早起きよ」
江夏先生はまた小学生に対するようなことを彼等に告げた。
「いいわね、その辺り」
「わかりました」
咲が遂に折れたように答えた。
「じゃあラジオ体操に出てアニメの再放送観て」
「そうしなさい」
先生はその生活を送れと言うのだった。
「仮面ライダーでも観てね」
「仮面ライダー!?それじゃあ」
意外なことに今声をあげたのは咲だった。
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