済公
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第二章
「全て」
「そうは思えませぬ」
王は禅師に素直に述べた。
「一体禅師はどういった方なのか」
「只の破戒僧です」
「そうは思えませぬが」
ここでだ、王は自分が占術それも人相見に長けていることを使って禅師の顔を見た。そうして今度は飛び上がらんばかりに驚いた。
「何と、貴方様は」
「おっと、そこからはです」
禅師は驚く王ににこりと笑って言った。
「言わないで下され」
「そうしないとですか」
「そうしてくれれば有り難いので」
だからだというのだ。
「お願いします」
「それでは」
「はい、それでは拙僧はこれで」
「ですな。もう真夜中です」
王は朝早くから禅師に色々聞いた、そうこうしているうちにもうそんな時間になってしまっていたのだ。
「それでは」
「今宵はこれで」
「帰って」
「また機会があれば」
「お話しましょう」
こう話してだ、そしてだった。
二人は一旦別れた、そうして王は自身の屋敷で休んだがこの日から三日後生徒達に学問を教えた後でだった。
ある若い生徒にだ、こんなことを話された。
「街の東の廃寺ですが」
「あの寺は入ってはならぬ場所」
王は生徒にすぐに答えた。
「これまで言っている通り」
「はい、しかしその廃寺がです」
生徒はその廃寺についてさらに話した。
「何もなくなったとか」
「何もか」
「はい、寺の建物も何もかもが」
それこそというのだ。
「なくなったとか」
「建物も何もか」
「完全に更地になりこれまで立ち込めていた妖気も」
それもというのだ。
「なくなったとか」
「それはまた面妖な」
王は生徒の言葉を聞いて怪訝な顔になった、それで件の廃寺に行くと実際に何もなくなっていた。だが。
ふと門があったところにあるものを観た、それは禅師が持っていた団扇だった。あまりにもぼろぼろになっているので見間違え様がなかった。
それでその団扇を持ってだった、そうしてそれを拾って禅師の寺まで行くと。
禅師が庭にいてそこで狐達と話していた、狐達は人間の言葉を話していたので王はすぐに彼等が妖狐だとわかった。
それで禅師が彼等との話を終えて別れたところで禅師のところに行って団扇を渡すと笑顔でお礼を言われた。
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