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ある晴れた日に

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237部分:オレンジは花の香りその二十


オレンジは花の香りその二十

「別によ。うちだって強いしよ」
「強いとかそういうのじゃねえんだよ」
 しかし野本はさらに言う。
「夜道に一人じゃ危ないだろうが。違うか?」
「おめえと一緒にいる方がやべえよ」
 両手首を腰の横にそれぞれ着けて腰を前に折って顔を前に向けて野本に言ってきた。
「何するかわからねえからな」
「こんなに酔っててかよ」
 しかし野本も言い返す。
「何かできると思ってるのかよ」
「まあそれは無理だな」
 春華も彼の泥酔具合を見てそれはわかった。
「今のあんた歩くことすらままならねえからな」
「それで何かできるわけねえだろ」
 彼はまた言う。
「それは安心しろよ、安心」
「そうだよな。けれどそれでも千佳っちよ」
 珍しく千佳に顔を向ける春華だった。さりげなくその仇名も作っている。
「こんなへべれけの虎連れてボディーガードになるのかよ」
「なるの」
 しかし千佳はこう彼女に返すのだった。
「ほら。洗濯物で男ものの下着一緒に干していたらそれで泥棒とかいなくなるじゃない」
「ああ、そうらしいよな」
 春華もその花死は聞いていたらしい。目を少し見開いて応える。
「うちの家男親父しかいねえけれどそういえば下着泥棒とかねえな」
「だからよ。酔っていても男の子と一緒なら」
「それで効果あるってか」
「そういうこと。だからよ」
 これが千佳の考えだった。
「悪いけれど女の子を帰り道で送ってね」
「ああ、わかったよ」
「それじゃあな」
 男組は千佳の言葉に素直に頷く。何故か彼女の言葉に対しては素直な彼等だった。こうして皆一緒に帰ることになった。正道は未晴と一緒だった。
「何かまた一緒ね」
「そうだな」
 正道は未晴の言葉に頷いていた。今は二人だ。二人で周りに灯りが見える夜の街を歩いている。まだ雨は降っていてそれぞれ傘を差しながら歩いている。その雨が夜の灯りを滲みたものにさせていた。その滲みた夜の世界を二人並んで歩いているのであった。
「縁があるのかしら。やっぱり」
「今回もたまたまだったがな」
「そうね。今度もね」
 未晴は正道のその言葉に小さく頷いた。
「たまたまね。じゃんけんしたらこうなるなんて」
「それで一緒になったけれどな」
「何か。それでも」
 ここで未晴は言うのだった。
「音橋君落ち着いてるわね」
「騒ぐこともないだろ?」
 未晴のその言葉に応えて述べたのだった。
「特にな」
「それはそうね」
 未晴も彼のその言葉に頷く。
「別に。悪いことじゃないし」
「委員長の考えは正しいさ」
 正道は千佳の考えはいいとしたのだった。
「これでいいんだよ」
「男の子が女の子送るってことね」
「さもないと本当に危ないからな」
 だからだというのだった。
「最近冗談抜きで色々な話があるからな」
「そうよね。公園で猫が殺されたり女の子がさらわれそうになったり行方不明になったり」
「物騒なんてものじゃねえ」
 彼は顔を顰めさせて言葉を出した。
「変な奴等がうろうろしてるな」
「何人もいるのかしら」
 未晴はこのことには少し懐疑的に首を捻るのだった。
「ひょっとして」
「そうじゃないのか?」
「そんなおかしい人が何人もいるかしら」
 だが未晴はまた言った。
 
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