戦国異伝供書
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第三十八話 意識する相手その四
「それは許せません」
「では」
「その時は越後守護代ですが」
甲斐守護の晴信より格は落ちるがというのだ。
「降します」
「そうされてですね」
「あの御仁を正します、ですが」
ここでだ、景虎は晴信についてこうも言った。
「あの御仁は心が正されますとその時は」
「どうなると」
「これ以上はないまでに素晴らしい方となります」
「そうした資質の方ですか」
「ですから是非共です」
「武田殿を正したいですか」
「天下の為に。そして尾張のです」
今度はこの国の話をするのだった。
「織田吉法師殿にも」
「いや、あの御仁は」
今の名を聞いてだ、本庄が驚いて言ってきた。
「私も聞いていますが」
「天下の大うつけですね」
「そう聞いています」
「わたくしもです、ですがよく見ますと」
「違いますか」
「困難な戦に次々と勝たれ政も見事で」
それでというのだ。
「瞬く間に勢いを拡げています」
「それを観るとですか」
「あの方は大うつけどころか」
「素晴らしき資質の方ですか」
「はい」
そうだというのだ。
「あの御仁も。ですから」
「天下の為にですか」
「武田殿と共にです」
「必要ですか」
「そう考えています。我等三人で」
「乱れた天下を正されたいのですか」
「そう考えています」
こう本庄に言うのだった。
「わたくしは」
「そうなのですか」
「はい、そして都で」
そこでというのだ。
「公方様を立てて」
「天下の戦乱を終わらせて」
「泰平の世にです」
それにというのだ。
「戻したいです」
「そうですか」
「左様です」
「ですか。それでは」
「織田殿もです」
その彼もというのだ。
「これからも調べ」
「そしてですか」
「やがて幕府を支える柱の一人になってもらいます、近いうちにです」
彼がどうなるかもだ、景虎は話した。
「あの方は雄飛されます」
「尾張からですか」
「あの国を完全に掌握し」
「そこからですか」
「周りの国々も手中に収め」
そしてというのだ。
「大きな勢力を築かれるでしょう」
「尾張は六十万石です」
本庄はその尾張のことから話した。
「そして周りの国々もです」
「伊勢や美濃もですね」
「近江もそこに入りますね」
「豊かな国ばかりですので」
その為にというのだ。
「織田殿は恐るべき勢力を持たれます」
「そうなのですね」
「その時誰も大うつけとはです」
今の様にというのだ。
「言われる方はいないです」
「そうなるのですか」
「ただ。武田殿も幕府に従われませんが」
「織田殿もですか」
「覇気が強過ぎる感じがします」
「覇気がですか」
「まるでご自身が天下を手中に収めんとする」
景虎はそう感じていた、遠く越後から。
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