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ある晴れた日に

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229部分:オレンジは花の香りその十二


オレンジは花の香りその十二

「で、今夜はケーキとサンドイッチのパーティー」
「それね」
「けれどそれだけだと寂しくないか?」
 正道はまたふと言うのだった。
「何かな。それだけじゃな」
「寂しいか?」
「酒もあるのにか?」
「何かもう一つ欲しいな」
 首を捻り何かを探すような顔になっての言葉だった。
「ちょっとな」
「っていうかあんた贅沢じゃない?」
「なあ」
 凛と野茂がそんな彼に突っ込みを入れる。
「ケーキとサンドイッチとお酒があれば」
「まだ何かいるか?」
「デザートっていうか甘いのが欲しいな」
 こう言うのである。
「甘いのがな」
「じゃあケーキは何なの?」
「あんたまだ食べるの?」
「ケーキ百個以上は普通にあるけれど」
 速攻で奈々瀬や茜、当の明日夢にも突っ込まれる。
「二百はあるかしら。ケーキ」
「だからよ。甘酸っぱいっていうかな」
 しかし正道はそれでも言うのだった。女組の容赦のない突っ込みに対しても実に強靭であると言えた。
「そういうのが欲しいんだけれどよ」
「ヨーグルト。あるわよ」
 恵美がその彼にぽつりとした調子で述べた。
「甘酸っぱいのなら」
「ああ、あるのかよ」
「サンドイッチはともかくケーキは栄養が偏り易いけれど」
 そのことも踏まえている恵美だった。その青い制服に相応しいと言えるクールさと知的なものがそこにかいまであるが見られていた。
「それならいいでしょ」
「ああ、悪いな。それじゃあ」
 これでまずはヨーグルトが出されることが決まったのだった。
「頼むな。それな」
「わかったわ」
「あとね」
 今度は未晴が話に入って来た。
「甘酸っぱいものならね」
「何かあるの?」
「オレンジがあるけれど」
 未晴は自分に問うてきた千佳に告げる。
「それならどう?」
「あっ、オレンジ?」
「いいじゃない」
「っていうか最高?」
 彼女がオレンジと言うと周りの五人が早速明るい声をあげる。
「ビタミンもあるしね」
「何かお酒に入れてもその後で食べてもいいしね」
「決まりね」
 少なくともこの五人の間ではこれで決まりであった。
「やっぱり未晴ってこういうことに気付いてくれるからね」
「頼りになるわよね」
「そうそう。やっぱり未晴がいないと駄目だよ」
 五人で言い合うのだった。言い合いながら未晴の周りに寄り添ってもきた。
「じゃあ御願いね。オレンジ」
「楽しみにしてるから」
「ええ。わかったわ」
 未晴もまたその五人の言葉に応えていつものにこりとした笑みを浮かべてみせた。
「それじゃあね。今夜ね」
「未晴っていつも気が利くから」
「最高なのよね」
「まあ確かにいつも滅茶苦茶気がついてくれるよな」
「そうだな」
 坪本も坂上も周りの五人に対してはともかく未晴には素直に賞賛の言葉を出せた。
「今回もそうだしな」
「何ていうか完全にクラスのあれだな」
「あれって?」
 未晴本人が彼等の今の言葉に対して問いを入れた。
「あれって何なの?」
「おかんか?」
 野本がふと言った。
 
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