九江の下水道
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第一章
九江の下水道
蒲来虎と白公平は今は蒲の神託で中国江西省九江に来ていた、この街は鄱陽湖の出入り口と言っていい場所にあるが。
この湖をサイクロプス族の単眼で観つつ穂は白に言った。
「この湖は奇麗でええ湖やが」
「それでもやな」
「広いやろ」
中国最大の湖としてこの世界でも知られている。
「そやからな」
「それでやな」
「そや、賊もおるしな」
「モンスターもやな」
「おるからな」
「困った場所でもあるな」
「この世界やと底にや」
湖のそこにというのだ。
「湖の主っていうかな」
「邪なのもやな」
「おるって言われてる」
こう白に話した。
「これがな」
「そやな、ほな自分の神託もやな」
白は狼人の目を鋭くさせて穂に言った、元々鋭い光を放つ目が余計にそうなっていて剣呑にさえ見える。
「この湖絡みで」
「それでな」
「その邪なもんを倒す」
「そうかも知れんな」
「そうか、ほなな」
「その時はな」
是非にと話してだった、蒲は白と共に九江に入った。すると街に怪しい噂が流布していた。
「街のモンがか」
「はい、急になんですよ」
面の屋台の魔族の親父が客として話を聞く蒲に話した、勿論彼の隣には白もいてそれで一緒に麺を食べている。
「いなくなるんですよ」
「朝起きたらか」
「そんな噂が流れていまして」
「あれか?やばい街でな」
蒲は麺をすすりつつ親父に言った。
「それで下水道辺りからな」
「モンスターが出て来て、ですか」
「一呑みとかな」
「そりゃこの街にも下水道ありますよ」
親父は蒲に答えた、銃声連合の政として街や村に上下水道を整えていっているのだ。これも政である。
「それでもですよ」
「下水道にはか」
「時々役所の人も入って」
「点検とかしてるな」
「ですから」
それでというのだ。
「あっしはいるとは思わないですがね」
「そうやな、しかしな」
「しかし?」
「何もなくてな」
蒲は今度は麺の汁を飲んでから言った、鶏ガラのいいダシが出ている。
「そんな話が出るか」
「朝起きたらいなくなっていたとか」
「そういう話がな」
それこそというのだ。
「あるか、まあやばい組織とかな」
「人攫いの」
「それかも知れんが」
その可能性もあるというのだ。
「とにかくな」
「この噂はですか」
「何かあるな」
このことは間違いないとだ、蒲は断言した。
「やっぱりな」
「そやな、ほなこのことについては」
白は蒲に言葉の中に神託のことをにおわせつつ言った。
「調べてみるか」
「そうするか」
蒲も言葉の中にあるものを察して白に応えた。
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