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閉じられた水門

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第三章

「いいですか、兵は国の財産です」
「そや、育てて飯も装備も給料も渡してな」
「有事に活躍してもらう」
「まさに宝や」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「無駄に傷付けるなぞです」
「絶対にあってはならんからな」
「ここは眠るか動けなくなってもらい」 
 その様になってもらってというのだ。
「一人たりともです」
「犠牲者を出したらあかんな」
「そうです、私もです」
 巴は自分自身もと言うのだった。
「そのことは守って」
「この砦を奪い返してな」
「水門を開けましょう」
「開封の為にもな」
 呉は巴の言葉に頷いた、そうしてだった。
 二人は扉を開けた、兵達が常に出入りしている為か門の扉に鍵はかけられておらずその中に楽に入ることが出来た。砦の中にも多くの兵達がいたが。
 呉も巴も自分達に迫って来る兵達に攻撃を加えることは一切なかった、全て眠らせるなる動きを止めるなりしてだった。彼等を無力化していった。
 そのうえで砦の中を探しているとだった。
 やがてやけに人相の卑しい、悪いのではなくそうである背中の曲がったフランケンにしては小柄な男が砦の塔のところにいるのが見えた、着ている服は白い書生の服だ。
 その書生の服を見てだった、呉は言った。
「官吏の試験を受けようっていう学生か」
「そ、それがどうした」
 男は呉の問いに開き直った様な声で返した。
「俺は術だって使えるんだぞ」
「それで兵達を操ってるか」
「そうだ、俺はこの砦を牛耳ってだ」
 水門であるそこをというのだ。
「そしてだ」
「そして?」
「開封の奴等、この世界の奴等に俺の力を見せつけてやるんだ」
「何やこいつ」
 男の言葉を聞いてだった。呉は思わず眉を顰めさせた。そのうえで巴に顔を向けて彼に尋ねた。
「一体」
「おそらくですが」
 考える顔になってだ、巴は呉に答えた。
「この男は学生、大学に通っているか」
「それか、か」
「既に卒業していますが」
「官吏の試験と関係あるのはな」
「書生の服からもわかりますね」
「大体な」
「官吏になるか学者になるか」
 呉はさらに言った。 
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